ユードラ

「今度もオイラがやるからね!」
「どうぞ」

記念すべき第一回目の作動ができなかったことを余程根に持っているのか、リーダーは鍵穴へ差し込む前にスパイシリンダーをぎゅっと抱え込んだ。

「うおーっスッゲー!やっぱカッケーなコレ!」

ユードラにて二枚目の扉の前。ここまでなんとか崖から落ちずに来ることができた。ホバリングライドにスイングショットに上下する足場。その前には死ぬ程の痛みを味わっていたし、精神的にはもうヘトヘトだ。ラチェットがスパイシリンダーを楽しんでいる間、ちょっと休憩。

「どうしたの?」
「どうせワタシには何も見えないから降りるッス。ラチェットもそんなものを近くで見るより、こうやって周りに溢れている緑を見る方が目に優しいッスよ」
「そうそう」

水を差されれば誰だってイラつくだろう。

「すぐ終わるって」

その時の気分が良ければ良い程、後の機嫌は悪くなるものだ。かなり低いトーンの返事が返ってきた。

へそを曲げたラチェットを背にもう一度復習。たしかこの扉の先には、インフォボットで観た弱そうなデカいロボットが待ち受けている。

「何だ?貴様ら」

やっぱりゲームのようにはいかないみたい。

「な、何で…あんた……外に…!?」
「ジュース買いに行ってた」
「へ、へえ…こんな星だから自販機はさぞ遠かったでしょうに」
「ボスは非常に厳しい方だとよく耳にするッス。本当にお疲れさまッス」
「怪しい奴らめ。ここで始末してやる」

しかもかなり強気だ。時間稼ぎにもノってこない。まずい。戦闘になるなんて聞いていない。どう戦えば良いのか?

「心配ご無用ッスねえさん、ワタシがついてるッス。アチョ~~…」

いや、あんたの構えは敵の薄ら笑いを誘うだけだ。

この小さなロボには危険性が無いと判断したのか、急に私をつまみ上げて両腕ごと胴体を片手で掴まれた。

「ちょっと!離して!痛い!」
「何であんた外に?って言ったな。たしかにさっきまで俺はこの中に居た。さては貴様、スパイか?……む?」

反論は全く聞いていないようで、こいつは既にオムレンチを構えているラチェットに意識を注いでいる。

「……」

と、ゲームと同じようにデカブツは急に逃げていってくれた。インフォボットを落っことすのも忘れずに。

「スッゲー迫力」
「朝飯前ッス」

ラチェット、背中に隠したオムレンチが盛大に見えてるよ。

リーダーが一生懸命なクランクを褒めたたえた部分はゲームと一緒。

だが、あの部下は少し態度が違う。怖くて、というより、状況を冷静に判断した上で退避した感じがした。

「ケガ無い?」
「平気。ありがとう。クランクもね」
「やるときゃ、やるッス」
「さっきのロボット、結構侮れなかったね」
「そう?」
「楽勝だったッスよ」
「逃げた奴のことはどーでも良いじゃん。インフォボット再生するよ」
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