アリディア

ついて行くのは諦めた。

前方やや遠くの離れた足場の上に、黄緑色に光る球体が浮いている。あそこに行くには専用ガラメカを持っていないと、いくら強くなったって無理だ。こうなることはわかっていた筈なのに。体を動かすことや敵との戦いに夢中ですっかり忘れていた。

「ここはスイングショットだな」

右ヒョイ、左ヒョイ、はラチェット一人でしか進んで行けない。

「どうしたッスか?」

立ち止まる私の異変にクランクが気づき、ラチェットが振り向く。

「ねえ……やっぱり私は、船で待ってるよ…」

申し訳ない気持ちと悔しい気持ちでいっぱいの私に近づいて、ゆっくり話し始める。

「…おねーさん、前々から思ってたんだけどさ」
「……何?」
「高いところ苦手でしょー!!!」

急なハイテンション。

「違う。違うってば。たしかに死ぬ高さなら…ちょっ、笑うな、ダサいって何よ!だって、実際!スイングショットは!聞いてってば!一つしか無いん」

言い終わる前に、腰に意外と大きな手が回される。

「え?」
「じっとしててよ~!」
「ま、待ちなさい…っ」

ガチンッと遠くから音が聞こえた直後、もの凄い力で前へ引っ張られた。その勢いは、掴まれている腰が頭や腕を置いていってしまうかと思うくらい。

「よっと」
「あっ…あんたねぇ~、飛ぶなら飛ぶで一言くらい…」
「ホラホラ置いてくよー!」
「待ちなさい!」

最後まで聞かないラチェットを追いかける。

「お!ここもスイングショット使える!」
「待ちなさい!……いやっいやいや待ちなさ」

追いついたと同時にまた飛ばされる。

「ラチェ」
「あ!あそこにもある!」

着地したかと思うと、またガチッと硬い音。

「ラ」
「もういっちょ!」

次は足場に仕掛けられた爆弾に着地する直前に、また新しい風を切って進む。

「超スリリング!!」

きっと身体は追いつくのだろう。けれどそれを動かす意思がまだまだ鈍くさい。

「っ……危なかったじゃない!ナイス・ロープアクションだったけどさ」
「イェーイ!」

何がイェーイだ。でもハイタッチには応えておく。

「ぐずぐずしたり船でじっとしているより、こっちのがずっとおねーさんらしいよ。ほら立って!」

腰が抜けへたり込む彼女の頭をぽんぽん叩きながら、彼はかなり得意気だ。

「私らしく、ね。悪いけれど、私は個性より命を優先させる人間なんで」
「はいはい、それもおねーさんらしいや。ところで、まだまだ飛ぶ元気ある?」

頭上にはいくつもの黄緑色の球体と黄色のバー。ここを越えれば、知的なガラメカを入手できる。
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