アリディア
「マシンブラスター、やっと手に入れたぜ!これで敵を狙い撃ちだ!」
手持ちは新武器を買っても残金の方がまだ多い程。時間はかなりかかってしまったが、リーダーは満足気だ。
「おねーさんはバーナー持ってていいよ。敵に囲まれたときに使えるんだろ?」
武器を貸してくれて嬉しいのだが、こうしっとりした地域では心なしか火が点きにくい。
「どうも」
それでもお礼は言っておく。ラチェットなりの、私への配慮なのだろうから。その気遣いが正直に嬉しいし。
「ラチェット、バーナーは今使いづらいと思うッス。この星は湿気が高く、おまけに敵の持つバーナーの方が少々リーチが長いッス」
ロボットに空気を分析する機能はあっても空気を読む機能はついていないのだろうか。まあでも、彼は思いやりは無くとも的確なアドバイスをしてくれることもある。
ちなみに今のアドバイス、ゲーム中には無い。勿論、余計な人間が一人増えているからだ。それに合わせて周りが変化することは必須。
つまり、目の前のキャラは予想だにしない行動にでることもあるのだ。それは良い方にも悪い方にも。いくら心配したって、変わるものは変わる。そう考え心構えるべきだろう。
「あのね、私がそんな腕力があるように見えますか?」
今、リーダーがここで掴まり移動を薦めてくることはすこぶる“悪い方”だ。ゲーム内では指をちょっと動かすだけだったが、今回は腕の力で体を支える必要があり、且つ横移動・昇降が求められる。壁には手の平と矢印のマーク達がここに掴まって!とでも言うように水平なパイプを指している。
「こんなの楽勝じゃん」
たしかに目の前の段差だけなら一人で登れる。でも進んで行けば、手を滑らせればかなりの高さから落ちる危険な箇所がある。ゲーム中のロンバックスなら死なないが、背負っているプロペラをまだ手足のようには使いこなせない人間ならどうだろうか。
「先を見なさい先を!あんな際どいの私は無理」
「うーん…じゃああそこはオイラの足に掴まってよ。連れて行くから」
「大丈夫なの?あんたより大分……」
「大分…?」
「……」
「大分…何スか?」
「……」
空気の読めない子供とロボットに加えて不要なプライドが参入し、“私は重いよ”が言えなかった。進むため、生きるためには邪魔な意地がまだしつこく残っている。
「ほら行くよ!」
ラチェットは先にぶら下がり、深く考えるなさっさと行こうと言わんばかりに両足と尻尾をばたつかせる。
「うん、頼んだ」
「危ないッスよ、ねえさん。仮にラチェットが足場を確保できる位置まで移動して、いつもの感覚で跳び登るとするッス。そのとき、ぶら下がっているねえさんの顔はどこッスか?」
ゲーム画面を思い出す。ぶら下がり状態からジャンプしたラチェットは丁度足場に着地。となると、それに掴まる人間の顔は
「壁じゃん」
「大丈夫さ、オイラが高くジャンプすればいいんだろ」
仲間二人に進む意志が感じられなかったので、とりあえずラチェットは元の地面に降りた。
「第一、あんた私をぶら下げながら足場までたどり着ける?ちょっと練習した方が…」
「それにラチェットが手を滑らせればねえさんも、勿論背負われているワタシも落ちるッス。一瞬でジ・エンドッス」
「あーもう、さっきっからごちゃごちゃうるさいな!ここまで来たんだから…って、聞いてる?」
最初はまだ死なない位置なので試しにぶら下がってみる。駄目で元々のつもりが、不思議と辛くない。
「…むしろ、楽ちん」
ラチェットさながらの様に、いや、それ以上かもしれない。自分の身長程の壁を片手だけでよじ登れてしまった。
「なんだ、一人で行けそうじゃんか」
気のせいではない。明らかに身体能力が上がっている。ケルバンでも感じていた。‘干渉’は、ある。
「この前のバック転といい、なかなか好調ッスね」
腕力だけではない。跳躍力や持久力もだ。
「ねえ、ちょっとそこ退いておいて」
登った段差から地面へ向かって前転ジャンプ、ホバリングライドで任意の位置に着地。ガラメカの使い方も知らない内に感覚で理解している。
まるでゲームでキャラを操作するように、自分の体を自由に動かせるようになっているのだ。
「よしっ行こう!」
誰一人救えなかった地球に居たときよりも。はぐれないのがやっとだった前の星に居たときよりも。
彼らと一緒に戦ったり様々な星で活動する内に、身体の何かが変わったのだろう。
「ねえさん、キレッキレッスね」
「おぉい、置いてくなよー!」
この調子なら、ついて行くことができる。
むしろ先導することができる。この子達の力になることができる。
手持ちは新武器を買っても残金の方がまだ多い程。時間はかなりかかってしまったが、リーダーは満足気だ。
「おねーさんはバーナー持ってていいよ。敵に囲まれたときに使えるんだろ?」
武器を貸してくれて嬉しいのだが、こうしっとりした地域では心なしか火が点きにくい。
「どうも」
それでもお礼は言っておく。ラチェットなりの、私への配慮なのだろうから。その気遣いが正直に嬉しいし。
「ラチェット、バーナーは今使いづらいと思うッス。この星は湿気が高く、おまけに敵の持つバーナーの方が少々リーチが長いッス」
ロボットに空気を分析する機能はあっても空気を読む機能はついていないのだろうか。まあでも、彼は思いやりは無くとも的確なアドバイスをしてくれることもある。
ちなみに今のアドバイス、ゲーム中には無い。勿論、余計な人間が一人増えているからだ。それに合わせて周りが変化することは必須。
つまり、目の前のキャラは予想だにしない行動にでることもあるのだ。それは良い方にも悪い方にも。いくら心配したって、変わるものは変わる。そう考え心構えるべきだろう。
「あのね、私がそんな腕力があるように見えますか?」
今、リーダーがここで掴まり移動を薦めてくることはすこぶる“悪い方”だ。ゲーム内では指をちょっと動かすだけだったが、今回は腕の力で体を支える必要があり、且つ横移動・昇降が求められる。壁には手の平と矢印のマーク達がここに掴まって!とでも言うように水平なパイプを指している。
「こんなの楽勝じゃん」
たしかに目の前の段差だけなら一人で登れる。でも進んで行けば、手を滑らせればかなりの高さから落ちる危険な箇所がある。ゲーム中のロンバックスなら死なないが、背負っているプロペラをまだ手足のようには使いこなせない人間ならどうだろうか。
「先を見なさい先を!あんな際どいの私は無理」
「うーん…じゃああそこはオイラの足に掴まってよ。連れて行くから」
「大丈夫なの?あんたより大分……」
「大分…?」
「……」
「大分…何スか?」
「……」
空気の読めない子供とロボットに加えて不要なプライドが参入し、“私は重いよ”が言えなかった。進むため、生きるためには邪魔な意地がまだしつこく残っている。
「ほら行くよ!」
ラチェットは先にぶら下がり、深く考えるなさっさと行こうと言わんばかりに両足と尻尾をばたつかせる。
「うん、頼んだ」
「危ないッスよ、ねえさん。仮にラチェットが足場を確保できる位置まで移動して、いつもの感覚で跳び登るとするッス。そのとき、ぶら下がっているねえさんの顔はどこッスか?」
ゲーム画面を思い出す。ぶら下がり状態からジャンプしたラチェットは丁度足場に着地。となると、それに掴まる人間の顔は
「壁じゃん」
「大丈夫さ、オイラが高くジャンプすればいいんだろ」
仲間二人に進む意志が感じられなかったので、とりあえずラチェットは元の地面に降りた。
「第一、あんた私をぶら下げながら足場までたどり着ける?ちょっと練習した方が…」
「それにラチェットが手を滑らせればねえさんも、勿論背負われているワタシも落ちるッス。一瞬でジ・エンドッス」
「あーもう、さっきっからごちゃごちゃうるさいな!ここまで来たんだから…って、聞いてる?」
最初はまだ死なない位置なので試しにぶら下がってみる。駄目で元々のつもりが、不思議と辛くない。
「…むしろ、楽ちん」
ラチェットさながらの様に、いや、それ以上かもしれない。自分の身長程の壁を片手だけでよじ登れてしまった。
「なんだ、一人で行けそうじゃんか」
気のせいではない。明らかに身体能力が上がっている。ケルバンでも感じていた。‘干渉’は、ある。
「この前のバック転といい、なかなか好調ッスね」
腕力だけではない。跳躍力や持久力もだ。
「ねえ、ちょっとそこ退いておいて」
登った段差から地面へ向かって前転ジャンプ、ホバリングライドで任意の位置に着地。ガラメカの使い方も知らない内に感覚で理解している。
まるでゲームでキャラを操作するように、自分の体を自由に動かせるようになっているのだ。
「よしっ行こう!」
誰一人救えなかった地球に居たときよりも。はぐれないのがやっとだった前の星に居たときよりも。
彼らと一緒に戦ったり様々な星で活動する内に、身体の何かが変わったのだろう。
「ねえさん、キレッキレッスね」
「おぉい、置いてくなよー!」
この調子なら、ついて行くことができる。
むしろ先導することができる。この子達の力になることができる。