アリディア

数時間後。

「ワリと時間かかったな…ナニニヤニヤしてるんだ?」
「何でもないさ。それより早くご褒美ちょうだいよ!」

長時間待たせておいて急かすとは。いくらアイドルの彼でも、もし事情を知ったらキレるのではないか。

「ほらよっ」
「限定モデル!すっげー!!」

本物のホバーボート、初めて見た。まあ当たり前か。

「ああ!ところで~…さっきから思ってたんだが」
「ん?」
「そこのネーチャン、マジでゲキマブだな!」
「は、はあ!?」
「は、はぁ…どうも」

ナンパ野郎はわざわざマザーシップから降りてきた。

「キャラといい、ボイスといい、ガチでオレのタイプだ。おまけにパワフルときた、こりゃあ運命カンジちゃうゼ?」
「ねえさ~ん、宇宙中の男をどれだけ虜にしたら気が済むッスか~?」
「おいクランク黙れよ」
「もう、そんなつもり1ミリも無いし。ラチェットは何にキレてんの」
「1ミリ無いってことは1マイクロならあるんだね」
「……」

呆れた。いつぞやの不機嫌のターンを思い出す。どうすれば機嫌直るんだっけ?

「スキッドさん。遭難とお聞きしたッスが、飛行中ご一緒していたマネージャーはどちらへ?」

確かラチェットが不機嫌になった後、私がヘソを曲げたんだ。腹を立てていても、自分以上に怒っている人を見ればなだめる側に回りやすいんだろうな。やっぱりリーダーの意識があるのか、元々の性格か。

「さあ?爆発と同時に離れちまった。まあ、奴はイイよ」
「良くない!」
「おねーさん!?」

でもこれはもっと後から気づいたことで。

「たくさんお世話になったんでしょ!?生存確認くらいとっても良いんじゃないの?」

今は登場人物のこの非情なノリが私の頭に来た。

こいつに限らず、このゲームでは他人の死に関して軽すぎるところがどうも共感できない。今自分がこの世界に居合わせているから尚更。小さい雇われ研究員とか、危険な現場でリポートするおねえさんとか、数え出すとキリが無い。

かく言う自分も、一つ前の惑星でリーダーのお叱りを受けたことだし。
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