アリディア

「ナンだおめぇら?」

近くで見るとなかなかスタイリッシュで割と、いや結構カッコ良い。

「へぇ~…この人があの」

ホバーボートレースの有名選手。地球で例えるならプロスポーツ選手といったところか。

「インフォボットで見たッスね」

ケガを負い弱気なこの人も、レース中なら栄えて見えるのだろうか。

ぼーっと突っ立っているうちにも彼とのやりとりは進む。

「サンドシャークがジャマでさぁ、ヤツらをゼンメツさせてくれれば、褒美にホバーボートあげちゃうゼ?」

ゲームと同じパターンで来たか。

「お困りの所悪いけれど、ワタシ達は先を急いでい」
「待ったクランク!…うーん、プロのホバーボートかあ…」

やっぱり悩んでいる。いや、悩んでいるのは素振りだけで、もう心に決めているのだろう。

「よし、ちょっと磨いて待っててくれないかな~?」

なかなか悪い顔をするようになったなこのボウズ。

「ね、いいでしょ?おねーさん」
「私にも乗せてくれるんならね」
「決まり!」

人助けにもなるし。それに、もしここで彼を助けなかったらホバーボートは無し。すなわちホログラマーが手に入らない。

それがきっかけでここが予測不可能な世界になってしまったら私が大いに困る。なるべくストーリーに乗っかっていきたいところだ。か弱い年頃の娘から予備知識も無くなってしまえば、もう一溜まりもないだろう。

「ねえラチェット」

知識。

そう、ここはただ早くクリアすれば良いイベントとは言えない。

「なぁに?」
「ボートだけじゃなくて、新しい武器も手に入れたいよね?」
「勿論さ」
「なら、雑魚を産み出す装置はすぐに破壊しちゃだめだからね」
「…そうか。わざと敵が増えるのを待って、一気に倒す!」
「ボルト大漁ッスね」
「そういうこと」

一匹と一人は泥の川を飛び越え、愛用の武器を構えた。

「オーケー!じゃあ、スキッドには特別に」
「磨くついでにメンテナンスする時間もあげましょうか」
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