アリディア

「うーん、じめっとしてる。さすが湿地」
「そんなに気になるもん?まーいいや、早く行こうぜ」
「……うーん」

前の星を発つ時には、あんなにせがんでいたのに。ラチェットはどうやら先ほどの“教えて”を忘れてしまったようだ。

気にはなるけれど、そんなに大きな悩みではないのだろう、私の秘密のこと。まあ、こっちも説明するの面倒だからいいか。

「ストップッスお二人さん」

同時に首が振り向く。

「前から気になっていたッスけど、惑星のマップは見ているッスか?」
「見てないけど」
「忘れてたね」

確認せずとも、私は記憶している。

なかなかボス戦クリアに至らない私は、よく関係のない星でボルト稼ぎをしたものだ。

「ちゃんと見ていないと迷子になるッスよ!」
「はいはいっと」

ラチェットの手首の小さい装置からホログラムが浮かび上がった。次世代テレビみたい。

考えてみると、地球の科学技術ってこのゲームに出てくる大体の惑星のそれに遅れをとっている。宇宙船無いし、襲ってくるロボいないし、バリア無いし、何よりホバーボード無いし。

確実に死人が出る競技だけれど、絶対面白いと思う。

「おねーさんも見てよ、どうせ一番に迷子になっちゃうだろ?」
「失礼な…あれ?」

違和感。

「どうしたの?おねーさん」
「いや…何でも」

あるはずの物が地図にない。

地図としては機能を果たしている。だが、これではどこに行けばイベントが発生するかわからない。“ハテナ”の場所、そんなに覚えていないのに。

あっちの方に行けば、たしかすぐイベントが発生したような……

「道が二手にわかれている。どっち行く?」

更に、ゲームのようにムービーが始まる訳ではない。気づかないで通り過ぎてしまわないように気をつけなければ。

「ちょっとおねーさん!一人でふらふらしないでって!」
「うう、ごめん。でもあっちの方に」
「だからって勝手な単独行動は禁止。オイラだってリーダーとして責任感じてるんだから」
「リーダー?あんたが?」

強いし、主人公だし。

「まあたしかに」
「その間は何だよ」
「ラチェットはチームのリーダーには向いていないけれど、この3人の中では一番適役ってことを、ねえさんは言いたいと思うッス」
「クランク、余計なこと言うなよ」
「そうよ、言わないでよバレちゃったじゃない」
「む…じゃあおねーさんはどんなヤツがリーダーにふさわしいって思ってるのさ?答えられないくせに」

そっぽ向きながら唇をとんがらせるなんて、露骨でまだまだ子供かな。

「そうだねぇ……」

キョロキョロして渋っていると、目線の先に見覚えのあるスレンダーな緑星人。

「やっぱリーダーって、有名になれる程のカリスマ性を持ち合わせている人がふさわしいんじゃない?ほらあそこの人みたいに」

本当はそんなこと微塵も思っていないが、これで話が進む。

「あれって……スキッド・ミックマークス!本物だ~!!」

速っ!あの子、四足走行する事もあるんだ。
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