ケルバン

「うあっラチェッ…」
「おねーさっ危ない!」

案の定私はバランスを崩し、のばされたラチェットの腕を紙一重で掴んだ。

「もう!…援護、するだけじゃあ、なかった…の!?」
「遠心力に…負けた」
「今、引き上げるから」

身動きとれない宙ぶらりん。嫌な予感がした。そして当たった。

「あ!」

数年連れ添った通信機が、ポケットからすり落ちた。

「無理だよおねーさん、早く登って!」

最初の一瞬はスローモーションのように、そのあとはあっという間に見えなくなってしまった。

「うそ…私の…」
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