ケルバン

「…どうして?」
「何が?」

工房に行列。

「ここ、どうして人気なの?」
「あったりまえじゃん、あれだけCMしていたんだぜ?」
「ヒーローがこの店に居たの、私何回も見たわ~」

“まさか、クォークが店に来たのは一度きりさ”

ロボ工房の主人はそう言っていたはず。

「自分も修理してもらいに来たであります」

ゲームの内容と違う。大繁盛だ。

よくよく思い出してみれば、ラチェット自身が‘でかケツ’という単語を口にするシーンは無い。正しくは‘うわ、でっけーケツ’

“うわ、でかケツ”

彼らの台詞が少しずつ違う。これは私による干渉が既に始まっているということか?

それとも、ゲームと一致しているのはフィールドと登場キャラクターだけで、ストーリーは関係無いのか?

「おねーさん?」
「なに」
「さっきからおかしいよ、ぼーっとしちゃって」
「そんなことないって、ほら、列詰めて」

気にしすぎだろうか。

しばらくして自分達の番が来た。お待たせしましたの労りの一言が無いのはこいつらしい。

「ようこそ~アルのロボこ…って、なななんだい君は!」

ふにふに。すべすべ。理科系の男にしては素敵なほっぺたをお持ちで。

「おねーさん…何やってるの」
「いや、前々から気になっていて」
「前々から?」
「あ、それは、あー…インフォボット観た時からッスね!」
「そうそう!」
「ふぅーん?」
「君達もCM観て来てくれたんだね、あれから忙しくなっちゃってさ~参っちゃうよ」

うんうん、満更でもないんだね。

「オタク」
「ヲタクを馬鹿にしないで」

たった今バカにしたヲタク無しにはこの先進めないんだから。
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