ノバリス

「ねえさんは、ワタシ達に何か隠し事をしているッス」

背中合わせのロンバックスにしか聞こえない小声。

「はあ?おねーさんが?」
「ちょ…と、ラチェット!もう…無理」

身軽とは言えない仲間には聞こえない。下水の流れる音で遮られているのか、上下を繰り返す足場の機械音の方が大きいのか、はたまた聞き耳を立てるどころじゃないだけなのか。

「さっきのインフォボットの事と言い、ガラメカの事と言い…地球人にしては知りすぎているッス。持っていた‘お守り’も引っ掛かるッス」
「うーん…便利だから良いんじゃない?」
「もう、ジャンプ…できな」
「ねえさんが見落とされて地球に残っていたことも、不自然ッス」
「…どういう意味だい?」
「速いよ、ラチェ…ラチェット!」
「万が一…」
「先行ってるよ、おねーさん!」

特に敵は見当たらないので、一足先に薄暗い下水道から広間に出た。

「万が一、ねえさんがブラーグと手を組んでいたら…」
「そんなことある訳無いさ!一緒に戦ってくれるおねーさんを疑うのか?」
「用心する必要はあると思うッス」
「有り得ないさ」
「有り得ない、この、ハードな、コース」

ヘロヘロな容疑者がやっとこ追い着いた。
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