おまけ

二人の英雄が銀河中で持てはやされている一方、地球ではブラーグによる侵略と同時期に棲み着いた雑魚敵が大量発生し、深刻な社会問題と化していた。

クッション大のカエルの駆除くらい人類の技術を以てすれば即座に解決しそうなものだが、地球人はそれ以前に人手不足問題に直面していた。

厄介なことに、人間を保存しているコンテナは外敵の反応をキャッチすると自動で開く仕組みをストップしてしまう。ほとんどの人間は丈夫で安全なコンテナの中で眠ったまま。運良く外に出られたとしても、状況を理解し武装するまでに襲われてしまい、活動可能な人数は減るばかりだ。

よって地球は、元の平和をまだ取り戻せていなかった。

「ヤ、ヤバいっ…」

数々の戦いをくぐり抜けてきた救世主も、外敵にぐるりと囲まれ身動きがとれないでいる。ガラメカの一つでもあれば一網打尽にできるのだが、あいにく仲間に全て返してしまっていた。今となっては、折れ曲がった鉄パイプくらいしか武器と呼べるものが無い。

「ラチェット、クランク…やっぱ戻ってきてっ…!」

カエルの大群がじりじりと距離を詰める。

孤軍奮闘もここまでかと諦めかけたその時、どこからか放たれたミラーボールが宙でピタッと止まり、急に大音量の音楽が流れ始めた。

「……は?」

不思議なことに、敵は一匹残らず踊りに夢中でこちらに見向きもしなくなった。

「な、何なの?助かったの?何この曲…」

奇妙な光景に混乱しただただ立ち尽くしていると、何者かが回し蹴りで雑魚敵を攻撃しながらこちらへ近付いて来る。

「……いや、曲じゃない、歌…!」

思い出した。巨大カエルが次々に破裂していく音は不快だが、今流れている音楽の歌詞も極めて不快だ。有機生命体として。

邪魔者を一掃した歌手が回転を止め目の前でポーズを決めたと同時に、音楽が鳴り止みミラーボールは消滅した。雑魚敵の体液をいとも簡単に弾いた白とピンクのボディが鈍く光る。

「ハァーイ、元気してるぅ~?“おねーさん”」

鼻につくこの声の主も、完璧に思い出した。
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