ベルディン
剥き出しの地面に激突したと思われた二人は、揃って大の字の体勢で横たわっていた。
「助かったぁ!さっきの凄かったな!」
回復しきったラチェットはやや興奮気味に上体を起こした。
「あ、おねーさんの相棒は助からなかったけど」
今は亡き便利アイテムの残骸がそこら中に散らばっている。クランクも起き上がって辺りを見渡した。
「最後まで気まぐれな携帯だったッスね」
「持ち主に似たんじゃない?」
ラチェットは摘んでいた基板の欠片を適当に放り捨てた。
「しかし……ワタシの腕は死んだままッス」
ナノテックの海の中心でお互い命拾いしたが、クランクの腕だけは伸びきったままである。
「ねえさんの携帯でも修復不可能な故障なのか、或いは修復するよりも先に携帯が機能を失ったのか…」
「どうでも良いじゃんそんなこと」
ラチェットはクランクなりの検証を軽く流し、立ち上がってさっさと歩いていってしまった。
「そんなことって…」
クランクはそれ以上何も言わない。ラチェットを追わず、動かなくなった自分の片手を抱え背を向ける。
「……」
闘いが終わり、必要性を失ったロボットは一人寂しくこの場から立ち去ろうとした。
「クランクー!」
しかし識別番号ではない名前で呼ばれ、彼はすぐに振り向いた。
「もー、どっち行ってんだよ」
文句を垂れながらも、ラチェットは友の元へすんなり引き返してきた。
「腕だけじゃなくてコンパスも直さなきゃだな。ほら行くよ」
「……ウィッス!」
目立たない場所で地上に降り、主人公を遠巻きに眺める影が二つ。本人達は知ってか知らずか、エンディングと同じ流れになり一安心だ。
「ネーチャンの携帯、粉々になっちまったナァ」
「別に良いよ。二人が無事なら」
先程狭い足場に降りきれなかった協力者全員に囲まれてしまい、英雄は相棒の修理どころではなくなっている。
「さっきは悪かった」
「ホントだよ、邪魔ばっかして。それと……ありがとうね」
「あ?」
「ケルバンで携帯拾ってくれたの、スキッドだったでしょ。あれが無かったら、ラチェットもクランクも、勿論私も生きていなかった。だから、お礼」
ニカッと笑い両手を広げて構えた。
「止せって!地球人は生理的に受け付けねェんだよ!」
「はぁ?何ソレ!?前はそんなんじゃなかったじゃん!」
「まあ、話せば長ェんだが~…怒るなよ?いや、ゼッテー怒るよな…」
「何なの?ハッキリしないなー……ん?」
いつの間にこちらへ来たのか、海水パンツを履いた小さな研究員が袖をくいくい引っ張ってきている。
「ところでさ君、何で僕の失敗作ネギリエイダーNo.2をチョーカーにしてんの?ハッキリ言ってダサいよソレ」
「へ?」
「ポクタルでポイ捨てしたんだけど…そんなに気に入ってるならタダであげるよ。じゃあね」
「……」
「……」
大したことのない真相を聞かされた二人は、しばしの間立ち尽くしていた。
「……ラチェット!クランク!」
「ああ忘れてた。おねーさーん、ごめーん携帯がさぁ……いっ!?」
ロンバックスが近付くと爆発すると聞かされていた装置ごと、仲間が全速力で駆けてくる。
「おねーさんのバカ!死にたいのかよ!?」
「死なないって!コレ違うんだって!」
「来るなー!!」
「話聞いてー!!」
腕を壊したクランクを中心に、無意味な鬼ごっこが始まった。
「トンだ嘘つきよぅ」
一人置いてかれたスキッドの横に、彼のマネージャーが現れる。
「たしかに地球人はこの銀河中から嫌われてるけど、それはアンタみたいなブス専を除いてのハナシ。それと…あのロンバックスも、好みの感覚は地球人に近いのかもねぇ」
マネージャーの発言を証拠付けるかのように、ラチェットはその地球人に捕まり抱き付かれても、満更でもない様子だ。
「作戦を知らないボウズはともかく、俺のは演技だってば。二人で決めたろ?あのネーチャンにラチェット&クランクの味方でいてもらおうゼ、銀河中でチヤホヤしようゼって」
「CEOはそれで納得したけど、若いコを甘やかすなんて今でも反対よぅ!それに、出しゃばったりしたからミサイルなんかが降ってきたんよぅ!」
派手な世界で生きてきたホバーボードレース選手は当初暗躍というものが上手くできず、結局ゲーム通りにラチェット達に情けない姿を観られてしまった。
「過ぎたことはもうイイだろ。ビッグバッドボスは死んだんだし」
「ゴールデンボルト集めのアルバイトに支払う給料はこれからの問題よぅ!お陰でアタシの携帯が鳴りっぱなしよぅ!」
協力者代表が話し込んでいる内に、割と何も知らされていない三人の追いかけっこは終わっていた。
「あ、ねえねえ。あんた達ゴールデンボルトいつの間に全部揃えたの?」
金色に輝く武器を指して尋ねた。ラスボスに止めを刺したのはランチャーNo.8だが、他のガラメカも一役買っていたことに変わりない。
「“揃えた”?」
「惑星ごとに探すの大変だったでしょ?よく間に合ったね」
「あー、んーと…ああ!」
「…何?」
「おねーさんの知ってるゲームだとそうなの?」
「は?」
「我々がカレボⅢにてマップオートマチックをインストールした直後、該当ガラメカを全てアップグレードするために必要な分のゴールデンボルトが、近場にまとめて放置されていたッス」
「何そのチート!?」
「便利携帯持ってた本人がよく言うよ」
「助かったぁ!さっきの凄かったな!」
回復しきったラチェットはやや興奮気味に上体を起こした。
「あ、おねーさんの相棒は助からなかったけど」
今は亡き便利アイテムの残骸がそこら中に散らばっている。クランクも起き上がって辺りを見渡した。
「最後まで気まぐれな携帯だったッスね」
「持ち主に似たんじゃない?」
ラチェットは摘んでいた基板の欠片を適当に放り捨てた。
「しかし……ワタシの腕は死んだままッス」
ナノテックの海の中心でお互い命拾いしたが、クランクの腕だけは伸びきったままである。
「ねえさんの携帯でも修復不可能な故障なのか、或いは修復するよりも先に携帯が機能を失ったのか…」
「どうでも良いじゃんそんなこと」
ラチェットはクランクなりの検証を軽く流し、立ち上がってさっさと歩いていってしまった。
「そんなことって…」
クランクはそれ以上何も言わない。ラチェットを追わず、動かなくなった自分の片手を抱え背を向ける。
「……」
闘いが終わり、必要性を失ったロボットは一人寂しくこの場から立ち去ろうとした。
「クランクー!」
しかし識別番号ではない名前で呼ばれ、彼はすぐに振り向いた。
「もー、どっち行ってんだよ」
文句を垂れながらも、ラチェットは友の元へすんなり引き返してきた。
「腕だけじゃなくてコンパスも直さなきゃだな。ほら行くよ」
「……ウィッス!」
目立たない場所で地上に降り、主人公を遠巻きに眺める影が二つ。本人達は知ってか知らずか、エンディングと同じ流れになり一安心だ。
「ネーチャンの携帯、粉々になっちまったナァ」
「別に良いよ。二人が無事なら」
先程狭い足場に降りきれなかった協力者全員に囲まれてしまい、英雄は相棒の修理どころではなくなっている。
「さっきは悪かった」
「ホントだよ、邪魔ばっかして。それと……ありがとうね」
「あ?」
「ケルバンで携帯拾ってくれたの、スキッドだったでしょ。あれが無かったら、ラチェットもクランクも、勿論私も生きていなかった。だから、お礼」
ニカッと笑い両手を広げて構えた。
「止せって!地球人は生理的に受け付けねェんだよ!」
「はぁ?何ソレ!?前はそんなんじゃなかったじゃん!」
「まあ、話せば長ェんだが~…怒るなよ?いや、ゼッテー怒るよな…」
「何なの?ハッキリしないなー……ん?」
いつの間にこちらへ来たのか、海水パンツを履いた小さな研究員が袖をくいくい引っ張ってきている。
「ところでさ君、何で僕の失敗作ネギリエイダーNo.2をチョーカーにしてんの?ハッキリ言ってダサいよソレ」
「へ?」
「ポクタルでポイ捨てしたんだけど…そんなに気に入ってるならタダであげるよ。じゃあね」
「……」
「……」
大したことのない真相を聞かされた二人は、しばしの間立ち尽くしていた。
「……ラチェット!クランク!」
「ああ忘れてた。おねーさーん、ごめーん携帯がさぁ……いっ!?」
ロンバックスが近付くと爆発すると聞かされていた装置ごと、仲間が全速力で駆けてくる。
「おねーさんのバカ!死にたいのかよ!?」
「死なないって!コレ違うんだって!」
「来るなー!!」
「話聞いてー!!」
腕を壊したクランクを中心に、無意味な鬼ごっこが始まった。
「トンだ嘘つきよぅ」
一人置いてかれたスキッドの横に、彼のマネージャーが現れる。
「たしかに地球人はこの銀河中から嫌われてるけど、それはアンタみたいなブス専を除いてのハナシ。それと…あのロンバックスも、好みの感覚は地球人に近いのかもねぇ」
マネージャーの発言を証拠付けるかのように、ラチェットはその地球人に捕まり抱き付かれても、満更でもない様子だ。
「作戦を知らないボウズはともかく、俺のは演技だってば。二人で決めたろ?あのネーチャンにラチェット&クランクの味方でいてもらおうゼ、銀河中でチヤホヤしようゼって」
「CEOはそれで納得したけど、若いコを甘やかすなんて今でも反対よぅ!それに、出しゃばったりしたからミサイルなんかが降ってきたんよぅ!」
派手な世界で生きてきたホバーボードレース選手は当初暗躍というものが上手くできず、結局ゲーム通りにラチェット達に情けない姿を観られてしまった。
「過ぎたことはもうイイだろ。ビッグバッドボスは死んだんだし」
「ゴールデンボルト集めのアルバイトに支払う給料はこれからの問題よぅ!お陰でアタシの携帯が鳴りっぱなしよぅ!」
協力者代表が話し込んでいる内に、割と何も知らされていない三人の追いかけっこは終わっていた。
「あ、ねえねえ。あんた達ゴールデンボルトいつの間に全部揃えたの?」
金色に輝く武器を指して尋ねた。ラスボスに止めを刺したのはランチャーNo.8だが、他のガラメカも一役買っていたことに変わりない。
「“揃えた”?」
「惑星ごとに探すの大変だったでしょ?よく間に合ったね」
「あー、んーと…ああ!」
「…何?」
「おねーさんの知ってるゲームだとそうなの?」
「は?」
「我々がカレボⅢにてマップオートマチックをインストールした直後、該当ガラメカを全てアップグレードするために必要な分のゴールデンボルトが、近場にまとめて放置されていたッス」
「何そのチート!?」
「便利携帯持ってた本人がよく言うよ」