ベルディン
隕石の雨はすぐに降り止んだ。汚染したら放置してまた新しい惑星を作れば良いと考えていたドレックのことだ、中身の造りが相当甘かったのだろう。
「そんなに遠くない筈…」
一緒に弾薬を投下していた協力者は全員無事だが、肝心の英雄はヘリに乗り遅れていた。
「居た!あそこ!」
捜索に時間はかからなかった。ラチェットは例の如く壊れかけのクランクに掴まり、そのクランクはレーザー発射場の骨組みに片手を掛け、なんとか落ちずにぶら下がっている。
「あのゲームでは、ロボットちゃんが地面スレスレでブースター噴射して無事だったんよぅ。きっとそうすれば助かるよぅ!」
「じゃあ、大丈夫だよね?」
「いや待て…ボウズ達はゲームとは勝手が違ェだろ」
クランクはこの最終対決の直前で、火力を上げるため大幅に改造していた。彼の内部構造は変わっている。
「クランク、早く…へへ、引っ張り上げてくれよ」
「先程の衝撃で、腕のメカニズムが死んだッス。あと、他にも色々と」
彼の壊れ方も、変わっている。
「ええ!?こんなとこから落ちたら、オイラ達の命も死んじゃうよ!」
「もっと近付けて!」
「これが限界よぅ!」
更には、先程ベルディンに被害をもたらした隕石の降り方も変わっていた。彼らを覆うように突き出した鉄骨や乱雑に折り重なった瓦礫が邪魔で、ヘリコプターで直接助けに行けない。
「それにヘリの風であのコ達が落ちちゃうよぅ!」
「つーかネーチャンは下がってろ!ボウズ達に近付いちゃイケネェ機械が付いてんだろ!?」
「でも…このままじゃ!」
せっかく勝ったのに。せっかく成し遂げたのに。こんなところで主人公を死なせてしまうなんて。
「絶対嫌!」
何もしない訳にはいかず飛び降りようとしたが、スキッドによって機内へと突き飛ばされた。更に、音を立ててドアを閉じられてしまう。
「行かせるかよ」
「さっきっから何なの!?お願いだから邪魔しないで!」
「いくらアンタの頼みでもこれは聞けねえよ。いや…アンタだから聞けねえ」
いつもの軽々しい口調はどこへやら。この様子ではいくら説得しても聞かなさそうだし、彼をねじ伏せる武器も持ち合わせていない。
「ラチェットとクランクを救いたかったら他の方法を探せ」
「他の…?」
今ここから自分に何ができるか?頭を巡らせる。
ヘリが降りられる場所まで一旦引いてから彼らを救出しに行くか。それとも、下に何かクッションになるものを用意するか。両方とも自分を参加させてはくれなさそうだし、そもそもそんなに時間は残されていない。
「ねえさんの携帯はどうなってるッスか?」
「ウンともスンとも言わない。こんなときにまた故障!?」
何故携帯がクランクを回復しないのか?あの二人を心配していて、助けたいという気持ちに反応する筈なのに。
「あんた達ー!なんとかするからもうちょい踏ん張っててよー!」
「…マズい」
ラチェットのズボンは激しい戦闘によって所々ほつれていた。
「マズいって、何がッスか?」
耐えきれなくなった糸が一本一本切れポケットの穴は徐々に開いていく。そしてある限度を超えた瞬間、何かがすり抜けた。
「!」
どんなに大事にしてきた物であっても、どんなにレアなアイテムであっても、命に換えることはできない。しかし、ラチェットは他人の貴重品を落とすまいと咄嗟に体勢を変えてしまった。
バランスを崩したことによってクランクの腕は二人を支えきれなくなり、彼はラチェットと共に携帯を追うように落ちていく。
「ラチェット!!クランク!!」
一人を除き、その場に居た者達は絶望により目を覆い顔を背ける。が、目蓋を通しても感じる不自然な眩しさからそっと目を開いた。
「…何なのよぅ…」
「…こりゃあ…」
そして息を呑んだ。
「青い……私の…」
地に叩きつけられた携帯はバラバラに砕け散った直後、誰も見たことの無い量のナノテックを一気に放出し、茶色い大地一帯をしばらくの間青白く染め上げていた。
「そんなに遠くない筈…」
一緒に弾薬を投下していた協力者は全員無事だが、肝心の英雄はヘリに乗り遅れていた。
「居た!あそこ!」
捜索に時間はかからなかった。ラチェットは例の如く壊れかけのクランクに掴まり、そのクランクはレーザー発射場の骨組みに片手を掛け、なんとか落ちずにぶら下がっている。
「あのゲームでは、ロボットちゃんが地面スレスレでブースター噴射して無事だったんよぅ。きっとそうすれば助かるよぅ!」
「じゃあ、大丈夫だよね?」
「いや待て…ボウズ達はゲームとは勝手が違ェだろ」
クランクはこの最終対決の直前で、火力を上げるため大幅に改造していた。彼の内部構造は変わっている。
「クランク、早く…へへ、引っ張り上げてくれよ」
「先程の衝撃で、腕のメカニズムが死んだッス。あと、他にも色々と」
彼の壊れ方も、変わっている。
「ええ!?こんなとこから落ちたら、オイラ達の命も死んじゃうよ!」
「もっと近付けて!」
「これが限界よぅ!」
更には、先程ベルディンに被害をもたらした隕石の降り方も変わっていた。彼らを覆うように突き出した鉄骨や乱雑に折り重なった瓦礫が邪魔で、ヘリコプターで直接助けに行けない。
「それにヘリの風であのコ達が落ちちゃうよぅ!」
「つーかネーチャンは下がってろ!ボウズ達に近付いちゃイケネェ機械が付いてんだろ!?」
「でも…このままじゃ!」
せっかく勝ったのに。せっかく成し遂げたのに。こんなところで主人公を死なせてしまうなんて。
「絶対嫌!」
何もしない訳にはいかず飛び降りようとしたが、スキッドによって機内へと突き飛ばされた。更に、音を立ててドアを閉じられてしまう。
「行かせるかよ」
「さっきっから何なの!?お願いだから邪魔しないで!」
「いくらアンタの頼みでもこれは聞けねえよ。いや…アンタだから聞けねえ」
いつもの軽々しい口調はどこへやら。この様子ではいくら説得しても聞かなさそうだし、彼をねじ伏せる武器も持ち合わせていない。
「ラチェットとクランクを救いたかったら他の方法を探せ」
「他の…?」
今ここから自分に何ができるか?頭を巡らせる。
ヘリが降りられる場所まで一旦引いてから彼らを救出しに行くか。それとも、下に何かクッションになるものを用意するか。両方とも自分を参加させてはくれなさそうだし、そもそもそんなに時間は残されていない。
「ねえさんの携帯はどうなってるッスか?」
「ウンともスンとも言わない。こんなときにまた故障!?」
何故携帯がクランクを回復しないのか?あの二人を心配していて、助けたいという気持ちに反応する筈なのに。
「あんた達ー!なんとかするからもうちょい踏ん張っててよー!」
「…マズい」
ラチェットのズボンは激しい戦闘によって所々ほつれていた。
「マズいって、何がッスか?」
耐えきれなくなった糸が一本一本切れポケットの穴は徐々に開いていく。そしてある限度を超えた瞬間、何かがすり抜けた。
「!」
どんなに大事にしてきた物であっても、どんなにレアなアイテムであっても、命に換えることはできない。しかし、ラチェットは他人の貴重品を落とすまいと咄嗟に体勢を変えてしまった。
バランスを崩したことによってクランクの腕は二人を支えきれなくなり、彼はラチェットと共に携帯を追うように落ちていく。
「ラチェット!!クランク!!」
一人を除き、その場に居た者達は絶望により目を覆い顔を背ける。が、目蓋を通しても感じる不自然な眩しさからそっと目を開いた。
「…何なのよぅ…」
「…こりゃあ…」
そして息を呑んだ。
「青い……私の…」
地に叩きつけられた携帯はバラバラに砕け散った直後、誰も見たことの無い量のナノテックを一気に放出し、茶色い大地一帯をしばらくの間青白く染め上げていた。