ノバリス

「な、何事かね?」

突然ラチェットの体が光りだした。

「え?ラチェッ…ちょっすごい眩しい!」
「うひゃあ!」

まるで、この星で彼が使い切ったであろう‘ナノテック’色。

「眩しすぎ!」

一旦彼から離れる。だが強い光は離れない。

「光っているのは、ねえさんの腰ッス」

私が?

瞼を極限まで閉じ顔を下ろすと、自分の服のポケットが発光している。

「この光って…」

握り慣れたこの機械。

「私の…携帯からだ」

相棒の電源ボタンを押してみる。と同時に、ナノテックの何倍もの光がラチェットに注がれていった。

「うわっ更に眩しいッス」

光が止み、彼の開ききっていた口が閉じた。

「んー…頭痛い」

目はおぼろげなまま、閉じた口は開き、動いた。

「ラチェット!!」

覚醒した彼を抱きしめる。これでもかという程強く。人だろうと動物だろうとこんなにべたべたするの、好きじゃなかった筈なのに。

「苦しい…。おねーさん…無事で良かった…と、誰このおじさん」
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