ベルディン

今まで戦闘に夢中だった三人は同時に声を上げた。

「何ぃ!?」
「ねえさん!?」
「おねーさん!なんで来ちゃったのさ!?てか、どうしたのそのヘリ!」
「ボウズー!!手伝ってやるゼー!」
「え?」

注目するヘリの反対側の窓からは見知った男が顔を出した。

「スキッド!」
「何だあいつらは!?一体何をするつもりだ!?」
「さあ、みんなやっちゃってー!」

百機近いヘリコプターはレーザー砲台の真上につくと、一斉にパラシュート付きの箱をばらまき始めた。

フワフワと降ってくるそれらの内一つにドレックが小さなミサイルを当てると、中からは様々な色や形をした何かが飛び出て奈落へ吸い込まれていった。それは正に、ラチェットとクランクが喉から手が出る程欲しかったもの。

「あれ……全部弾薬だ!」
「どれでも良いから拾うッスよ!」
「させるか!」

中央に“G”と印字された箱が次々と投下されていくが、ほとんどはドレックによって撃ち落とされラチェットの元に届かない。

それでも、弾薬箱のベールは着々と辺りの空を包んでいった。

「ちょちょちょ!あんまり揺らさないでよぅ!」
「そういうワケにはいかねぇYO!」
「貴方は~だんだん~負けたく~なる~」
「何してるんだいアンタ、さっさと運べ運べ!」

スキッドのマネージャー始め海洋惑星キャナルの住人達、フリーの身となった小さな研究員やスイングショットをくれたフィットネストレーナーまでもが駆けつけていた。

「新惑星計画阻止の任務、必ずや成功させろ!」
「それサイコーにイカシてるぜおっさん!」

惑星が丸々一個破壊されようとしている非常事態の最中、ならず者達のすぐ横で頭の固い軍隊長が若き英雄へ敬礼を行う。

「ご覧ください。彼らこそが、かのビッグボスドレック改めビッグバッドボスによる計画を阻止するため果敢に立ち向かう、ラチェット&クランクです!弾薬が、ガラクトロン社製品武器専用の弾薬が、近隣星人の乗る無数のヘリからヒーローへ向けて大量に投げ込まれています!」

更には、やや離れた位置からは小指を失った女型ロボットが銀河中へ真実を届け始めた。

皆がラチェットとクランクの味方としてこの場に集結している。怒り心頭のドレックは銃口を天へ向けた。

「小癪な!我々の邪魔をするなら、貴様らも、貴様らの故郷の星もタダじゃ済まんぞ!」
「タダどころか大赤字!おじさん達からの奢りだよ!」

いつもは画面越しで対応する店員達にも、今日はベルディンへ出張命令が出ていた。

その隣のヘリコプターではノバリスの村長が強気で杖を振り回す。

「タダじゃ済まんのはお主の方じゃ!小僧達~、その不届き者を倒したら宇宙船のことはチャラにしてやるぞい!」
「チャラになるのは貴様ら虫ケラ共の命だ!」

巨大ロボットが邪魔者達を撃ち墜とそうとしたが、一度弾が尽きたロケットバズーカやビデオミサイルによる爆風でドレックの視界は遮られた。

「みんなありがとー!てか、そんなに弾くれるんだったらボス倒すの直接手伝ってくんないー?」
「あんだって!?」
「図々しいガキだなオイ!」
「オレらは肝心の武器をブラーグに押収されてんだよ!」
「我が軍でも未だ人員・武器共に不足状態が続いている。贅沢を言うな!」
「楽しようとしてんじゃねーよ!」
「え~…」
「弾薬の雨に、ブーイングの嵐ッスね」

仲間達は遥か上空から罵声を浴びせながらも、手は止めずに加勢し続けてくれている。
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