ベルディン

結論から言うと、主人公達から足場を奪う作戦は無意味であった。

「くそっ、ちょこまかと!なんなんだその機動力は!?」

クランクの体からはお馴染みの銀色の翼が生えているが、ラチェットはドレックの知るジェットブースターよりも数段素速く避けてみせた。また、短時間なら空中を自在に飛び回ることもできている。

「オタクの工房寄っといて正解だったぜ!ん?ヲタクだったっけ?」
「どっちも変わりないッス」


“何度も呼び寄せて悪いね、でもこれが最後のメンテナンスだよ~。お代はビッグバッドボス討伐、だニャン”


そう言ってアルはジェットブースターを極限までパワーアップしてくれた。

「それに、その金色のガラメカはっ…!」

ラチェットが今装備している武器ガラメカは黄金に輝くサンダークロウ。ゴールデンボルト無しでは手に入れられない強化武器だ。

「何故だ!?マップオートマチックはブラーグ・スリーに盗ませた筈!」
「ああ、でも問題無かったよ。な、クランク」
「全く、詰めが甘いッスね」

ドレックは小さなヒーローをなぎ払おうと腕を振るが簡単にかわされ、その間もホーミング機能を持つ電撃は巨大ロボットにダメージを与え続ける。

「く…貴様ら、いつの間にゴールデンボルトを集めた!?そんな時間は無かった筈だ!」

ラチェットとクランクはその後も惑星ベルディンの破壊を粘り強く阻止し続けた。

しかし同じことの繰り返しだけでは使えるガラメカの弾薬が減る一方だ。ロケットバズーカやバクダン等はとうに使い切ったが、ビッグバッドボスはまだピンピンしている。

「くっそーしぶとい!あと残ってるガラメカは?」
「今使ってるマシンブラスターの弾が残り半分でおしまいッスよ!ジラインやアクマンは余っているけど、こんな場所では使い物にならないッス!」
「パンチは届かないし、メルモビーム当て続けるのはキツイよな…」
「フハハハハハ!パワーアップしたのは貴様らだけではない!肝心の俺様を倒せなければ、ブースター強化もゴールデンウェポンも無意味だ!」
「ラチェットー!!」
「……む?」

どこからか、悪の親玉に水を差す女の声が届く。ドレックは高笑いしようと開いていた口を一旦閉じた。

「今の…おねーさん!?」
「あり得ない!奴がここまで来れる訳が…」
「そう!ヘリが無けりゃ来れる訳ないじゃーん!」

空を見上げると、彼女を置いてきた方角からヘリコプターの大群がやってきていた。重りの無い足手まといはその先頭の一機から身を乗り出し、元気に手を振っている。
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