ベルディン

ラチェットとクランクは待ち構えているドレックを追って巨大な岩場へ辿り着いた。が、これから戦闘かと思いきやラスボスは何もせず、こちらを向いたまま逃げ出してしまう。

「先程と同じく、攻撃を仕掛けてこないッスね」
「せっかく爆弾やミサイル持ってんでしょ、使わないのー?」
「どうせ避けられるのならば撃つだけ無駄、当たったとしてもたちまち全回復されるのがオチだ。持っているのだろう?便利なチートアイテムを」
「やっぱりバレてるのか」

ラチェットのズボンのポケットからは、出番を待ちかまえる青白い光が今にも漏れ出しそうになっている。

「我々を倒せないとなると、てっきりレーザー発射場までの道を潰されるかと思ってたッス」

ドレックは仇が次のステージまでついて来ることを許している。しかも今度は円盤の足場を半壊すらさせずに。

「最初はそれも考えた。だが、この足場やスイングショット用のターゲットは、元々は作業員のために設置した物。そう簡単には壊せない。一つ一つ丹念に破壊している間に貴様らにやられるのがオチだ。だから……ラストステージをこうすることにした」

ドレックは操縦レバーを倒し、ロボットの右手に大きなエネルギー弾を溜め込む。それは主人公ではなく、発射場の床に向けて放たれた。肝心のレーザー砲はそのままだが、他は音を立てて崩れ去り、最早基本的な骨組みしか残っていない。

足場を必要としない巨大ロボットは早速発射ボタンに迫った。

「ラチェット、マズいッス!」
「わかってる!」

ラチェットが撃ち出した比較的強力なビデオミサイル弾から逃げるため、ドレックは一旦ボタンから距離を取った。

「さっきので発射ボタンも一緒にぶっ壊してくれりゃ良かったのに!」
「まあ何をしようと、あんな手間のかかる仕組みにした時点で奴の負けッス」
「フン。誤射防止のため、この面倒な装置は作らざるを得なかった。逆に言えば、これさえあれば後の足場はどうだって良い。重要なのは、貴様を発射停止ボタンに容易く近付けさせないことだ」

青白いエネルギー弾が今度はこちらに向けて発射された。ラチェットは間一髪でジャンプして避け、剥き出しのパイプになんとか着地する。

「俺様からの攻撃は、貴様の機動力では避けるのがやっとな超強力エネルギー弾に限定する。更に!足場だけでなく例のテレビゲームにあったレールも取り払った。こんな状況では、避け続けるだけで精一杯だろうな」

すっかり余裕の表情のドレックは相手へ哀れみの眼差しすら向けてくる。

「そして知っての通り、弾薬はガラクトロンに売ってもらえず不足している。すなわち!貴様らは死なずとも、確実に負けるのだ!ヌハハハハァ~!」

レーザー発射ボタンが遂に押されてしまい、辺りはやかましい警報に包まれる。直後、広場だった空間の中央ではカバーが開き、色違いの発射停止ボタンが出現した。クランク無しでは、まず辿り着けない位置にある。

絶望的な状況ではあるが、二人とも至極落ち着いてた。

「よし、まずは…」
「カウントダウンを止めるッス!」
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