ベルディン
二人の姿が見えなくなった後も、寂しくなった広間に雑音が微かに届く。浮遊力を失ったものから順に、足場の円盤が大地の亀裂にぶつかりながら落下していく音だ。
「ラチェット…クランク…」
音がすると言うことは、まだ彼らが生きて、奮闘しているということ。まだ負けていないということだ。
「……」
仲間の帰りをひたすら待ち続けるというのは、不安が募ると同時に暇でもある。
「あぁもう!何か無いの…!?」
ここからでも自分にできることはないか、手掛かりになる情報を見逃していないか。一人残され時間を持て余していた人間は、ここに来る前、スペースシップBBの回転砲台から無理矢理連れ出された時のことを思い起こしていた。
「危険因子は、やはり処分する他無いな」
「そっ、そんな焦ることないじゃん!私ならまだ利用価値がある。あんたは重要なことを聞き出せていない」
「ほう。何かな?」
「ラチェットとクランクの、完璧な倒し方…知りたいでしょ?」
手を引くドレックは廊下の真ん中でピタッと立ち止まった。
「あんたはゲームプレイヤーからの視点でしか物事を見ていない。だからこのところミス続きなんじゃないの?」
「…何が言いたい?」
「どうせ気付いてるんでしょ。ただの脇役達が、ラチェットとクランクを助けているの。この世界の登場人物は、あんたと私達だけじゃないってこと」
「……」
「ま、よくよく考えてみればそうだよね。みんな自我を持った生き物だもの。私だってキャラによって好かれたり嫌われたり、助けられたり、今さっきは名も無きブラーグと取っ組み合いだってした」
主人公が操縦する戦闘機を回転砲台の中から眺めるなんて、ラチェット&クランクを順当にプレイしていれば起こり得ないイベントだ。
「あ、実際にはあのブラーグにも名前くらいあるか」
「時間稼ぎに付き合っている暇は無い。さっさと奴らの倒し方を教えろ」
残念ながらそんなものは存在しない。この世はゲーム通りに行かないのだから、完璧な倒し方なんて知っている訳がない。只のハッタリだ。
「一回ラチェットに会わせてくれないかな。ちょっとこの目で確認したいことがあって。そしたら教える。いや、教えることができる」
嘘だろうと何だろうと、味方が近くに居れば何とかなるかも。隙を見て逃げてやる。
「……」
そんな姑息な考えくらい、多くの兵を従える策略家はお見通しだった。
「良いだろう。但し、条件付きだ」
「何?チョーカー?かなり前衛的なデザインじゃん……ちょ!?やだ、離して!」
自分の首元で鈍く光る石に触れる。これさえ無ければ、今頃一緒に闘えていただろう。手助けできただろう。
騙すつもりが先手を打たれてしまった。しかしこの装置こそ、追い詰められたドレックのなけなしの作戦にも思えた。
「あの口振り……本当はあの子達の倒し方をまだ見つけられてない?そうだったら良いけど、もし違ったら…」
「おーいネーチャン!」
「?」
「ラチェット…クランク…」
音がすると言うことは、まだ彼らが生きて、奮闘しているということ。まだ負けていないということだ。
「……」
仲間の帰りをひたすら待ち続けるというのは、不安が募ると同時に暇でもある。
「あぁもう!何か無いの…!?」
ここからでも自分にできることはないか、手掛かりになる情報を見逃していないか。一人残され時間を持て余していた人間は、ここに来る前、スペースシップBBの回転砲台から無理矢理連れ出された時のことを思い起こしていた。
「危険因子は、やはり処分する他無いな」
「そっ、そんな焦ることないじゃん!私ならまだ利用価値がある。あんたは重要なことを聞き出せていない」
「ほう。何かな?」
「ラチェットとクランクの、完璧な倒し方…知りたいでしょ?」
手を引くドレックは廊下の真ん中でピタッと立ち止まった。
「あんたはゲームプレイヤーからの視点でしか物事を見ていない。だからこのところミス続きなんじゃないの?」
「…何が言いたい?」
「どうせ気付いてるんでしょ。ただの脇役達が、ラチェットとクランクを助けているの。この世界の登場人物は、あんたと私達だけじゃないってこと」
「……」
「ま、よくよく考えてみればそうだよね。みんな自我を持った生き物だもの。私だってキャラによって好かれたり嫌われたり、助けられたり、今さっきは名も無きブラーグと取っ組み合いだってした」
主人公が操縦する戦闘機を回転砲台の中から眺めるなんて、ラチェット&クランクを順当にプレイしていれば起こり得ないイベントだ。
「あ、実際にはあのブラーグにも名前くらいあるか」
「時間稼ぎに付き合っている暇は無い。さっさと奴らの倒し方を教えろ」
残念ながらそんなものは存在しない。この世はゲーム通りに行かないのだから、完璧な倒し方なんて知っている訳がない。只のハッタリだ。
「一回ラチェットに会わせてくれないかな。ちょっとこの目で確認したいことがあって。そしたら教える。いや、教えることができる」
嘘だろうと何だろうと、味方が近くに居れば何とかなるかも。隙を見て逃げてやる。
「……」
そんな姑息な考えくらい、多くの兵を従える策略家はお見通しだった。
「良いだろう。但し、条件付きだ」
「何?チョーカー?かなり前衛的なデザインじゃん……ちょ!?やだ、離して!」
自分の首元で鈍く光る石に触れる。これさえ無ければ、今頃一緒に闘えていただろう。手助けできただろう。
騙すつもりが先手を打たれてしまった。しかしこの装置こそ、追い詰められたドレックのなけなしの作戦にも思えた。
「あの口振り……本当はあの子達の倒し方をまだ見つけられてない?そうだったら良いけど、もし違ったら…」
「おーいネーチャン!」
「?」