ベルディン

寝返った一部のブラーグ・スリーを恐れてか、敵兵はほとんど道中から姿を消し、途中までは難無く進むことができた。

「我々以外の、ビッグバッドボスの支配下にあるブラーグ達は皆ここに集結しているようだな」

噴火口地帯を通り過ぎ梯子を登った先では、ラチェットの家付近に居た何倍もの数のブラーグがうじゃうじゃと空を埋め尽くしている。

「いくらここの敵が増えたって同じさ。みんなこっち来て」

以前ガラクトロン社CEOから教わった通り横道に逸れると、先程のブラーグ達を違う角度から見渡せる足場に出た。下には壁に囲まれた空間があり、その中央に見覚えのある台が配置されている。

「ほら、やっぱりあった!ロボット巨大化マシーンだよ!」
「あれを使って中央突破ッス!」
「待て」

味方ブラーグのリーダー格が二人を制する。

「最早ビッグバッドボスは君達の行動パターンを知り尽くしている」
「じゃあ、アレが罠かもしれないってこと?」
「十分あり得る。先に我々が様子を…む?」

降り立たずに踏み留まっていると、どこからか出てきた二本足の雑魚敵が円盤の上に跳び乗った。

「げ!」
「マズいッス!」

まさかこの敵が巨大化するのかと思いきや、大爆発が起こり円盤ごと吹き飛んでしまった。無論、クランクがこの星に墜落した時よりも衝撃は大きい。地面がより深く、より広くえぐれている。

「……止めてくれてありがと」
「我々が木っ端微塵になるとこだったッスね」

いくばくかのボルトが懐へ吸い込まれる。ラチェット達は大人しく、絶望的な風景が見える場所まで戻った。

「やはりこのまま突っ切って行くしかない」
「でもそんなことしたら…!」

シンプルに真っ直ぐ突き進めば、何百と待機しているブラーグから集中砲火を受けるに決まっている。

「安心しろ、君達は応戦する必要は無い。我々が盾になる。体力も弾薬も、ビッグバッドボスとの闘いまで温存しておいてくれ」
「別の方法を考えようよ!ほらぁ~たとえば、囮をたくさん置くとか、変装するとか」
「そんなことをしている暇は無い!先程の爆発にブラーグ・スリー部隊が気を取られている今がチャンスだ!」

ロボット巨大化マシーンの罠のことを知らされていないのか、もしくは通達されたとしても覚えておく記憶力が無いのか、敵のブラーグ達は酷く動揺していた。しかも多くの兵が爆心地を確認しに持ち場を離れたため、進路はやや手薄になっている。

「……それに我々は、今まで沢山の生物や惑星を傷つけてきた。報いを受けるには、丁度良い」
「そんな…」
「行くッスよラチェット。彼らみんなのためにも、ビッグバッドボスを必ず倒すッス!」
「……ああ、わかった!」
「出撃ー!!」

合図と共に皆で走り出す。ラチェットとクランクを囲いながら突き進む味方達は効率良く敵を蹴散らしていくが、どう足掻こうとも多勢に無勢。話の通じるブラーグは一人、また一人と倒れていった。
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