ベルディン軌道

二人は順調に地球人貨物船内を制圧していき、今乗っている船の行き止まり、管制室へと辿り着いた。黒を基調としたその部屋はやけに広々としていて、中央には別の船への転送装置が鎮座している。

ラチェットは部屋をざっと見回したが、クランクがモニターと睨めっこしながら操作しているコンピューター以外には、手掛かりになりそうなものは見当たらなかった。

「ムム?」
「何か分かったかい?」
「どうやら、ビッグバッドボスは捕らえた地球人全てを中央の旗艦周辺に集め、一括で管理しているようッス」
「じゃあ新惑星に運ばれる前?間に合ったってこと?」
「この記録によれば、まだ一人も手を出されていないッスよ」

犠牲者ゼロの事実に安堵しラチェットはため息をつく。また、地球人全員の安否を虱潰しにチェックする手間も省けた。

「良かった~、まだブラーグに誰も食べられてないのか。そう言えば、ここではブラーグを見かけないな」

この艦隊に潜入してからはロボットしか倒していない。今まで散々相手にしてきた空飛ぶブラーグ・スリーやその他のブラーグ兵、科学者ブラーグすら見当たらない。

「つまみ食い防止の為じゃないッスか?ロボットは人間を食べないッス」
「ん?ちょっと待った、これヤバいんじゃないの?一つだけこじ開けられたって記録があるぜ!」

モニターに映っているコンテナ管理表の内、赤く染まった一行には“無断・何者かにより破損”との表示が。

「それはラチェットがBBステーションで無理に開けたときの分ッス」
「ああ、そっか。なら、この一個下の“無断・正常に開かれた”ってのはおねーさんが開けたやつか」

これら以外にコンテナが開かれたという記録は一切無し。

「どうすればみんなを助けられるかな?何とかできないの?」

クランクは小さな手をパタパタと忙しなく動かし、しばしコンピューターと格闘を続ける。

「ダメッス。記録の閲覧以外、操作はロックされているッス。しかし、ここや他の貨物船、そしてコンテナの冷却システムを制御しているメインコンピューターがどこかにある筈ッスよ。恐らく…」

地図の中心、一際大きい船の管制室への道はまだ続いている。

二人は背後で青白い光を放つ転送装置へ目を向けた。
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