ベルディン軌道

ラチェットとクランクは遂に敵の本拠地、スペースシップBBに到着した。厄介者でもあっさり停泊させてくれたが、シップが丁度収まるスペースと転送装置分の足場以外は水で満たされている、何とも変わった停泊所だ。

「ん?アレってどこかで…」

黒塗りのシップから降り立ったラチェットの目線の先、窓の外には、見覚えのある船が。

「戦艦、または貨物船のようッスね」
「貨物……あ!」

自分で放った言葉によりクランクも思い出し、ラチェットの叫びと同時に下顎を開いた。

以前BBステーションで発見したが、破壊せずに泣く泣く見過ごした食糧貨物船。偶然にもそれは、彼らが見つけた船と全く同じものである。

「もしかしたら、地球人があそこに…!」
「可能性は高いッス。見るッス、同じ船がいくつも周りに配置されているッスよ」

よく見ると、ラチェットが注目した船以外もほぼ同じ見てくれをしている。位置が手前すぎて全体が見えない船もあれば、遠すぎて小惑星と早とちりしていた船もある。

「これだけあれば地球人全員の収容も可能ッス。無事だと良いッスけど…」
「行ってみようぜ!」

早速ラチェットは今居るフロア端にある転送装置へパタパタと駆け出す。

「待つッスよ。CEOから聞いた話だと、その転送装置は犬ロボットや監視ロボットの居る船に繋がっているッス」

カレボⅢのガラクトロン本社を出る前、ラチェット&クランクのゲーム内容を一通り網羅したCEOから攻略法を教えてもらっていた。

「でも、行き先は地球人格納庫って表示されてるぜ」
「それでも、今貨物船に乗り込んだところでワタシ達に何が出来るッスか?前回と同じ事ッス」
「無事かどうか確認するくらい必要だろ?」
「これら一つ一つ見ていくつもりッスか!?」

そんな途方もないチェックが徒労に終わらないか気掛かりだが、こうしてここで言い合っていても時間の無駄だ。相棒の言い分に降参したクランクは渋々転送装置の方へ歩いてくる。

「なあ、このままオイラ達でみんな助けちゃわない?」
「助けるって、地球人を?」
「だって、そもそもおねーさんがオイラ達について来たのって、地球人を助け出すためだろ?オイラ達でやっちゃおうよ」
「ラチェット、思い出すッス。地球人は例のゲームに一切登場していなかったッス。つまり、情報不足ッス。確実な解決策が思いつくまでは、この件には手を出さないのが賢明ッス」

クランクが無計画なラチェットに反論しきったと同時に転送が完了し、二人は倉庫内で警備にあたっているロボット全員と目が合ってしまった。

「あー……お邪魔しましたぁ…」

ワープで引き返す直前まで、カルトゥで鳴り響いたものと同じ警報が聞こえていた。
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