カルトゥ 2回目

例のゲームソフトを手にしたときは、まるで目の前に鏡を置かれた気分だった。周辺の星々の環境も、ブラーグ移住計画の詳細も、自分自身の行動パターンも、寸分狂わず的中しているのだ。

だが、全てが完璧に、という訳でもなかった。違う点を見つけた。それも二つだ。

一つは地球人共。ブラーグの舌を満足させる奴らはゲームシナリオに全く関与してこない。

もう一つは、俺様が計画を立てた、そもそもの動機。

惑星移住計画は無論金のためだが、最初こそ違った。どうしたら我々ブラーグ族が生き残れるか。ブラーグ全員を食べさせてやれるか。どうしたら快適な暮らしをさせられるか。ゴミの量を減らせるか。

全てはブラーグ、ブラーグのため。

まあ、今となってはどうでも良い。金さえあればブラーグを救うことも滅ぼすことも思いのまま、更にそれ以上のことだってできてしまうのだから。

第一俺様自身、もう金以外に興味はない。結局はゲーム通りだ。金のためなら何でもやる。

部下をこき使い、何故か売れているヒーローのスポンサーに付き、ライバル会社の邪魔をし、厄介なロンバックスと欠陥ロボットを潰す。そして便利なアイテムは独り占めするか、他者の手に渡らない内に消すか。

「これだけは、どちらにするか未だ迷っているのだ」
「はあ?何の話?って、うわっ!」

戦艦に数多く設置されている球形砲台の内の一つ、その内部に放り投げられた。元々配置についていたブラーグ兵士は一体何事かと目を丸くして上司と人質の方へ振り向く。

「痛ぁ~、意外と力強いんすね」
「ドレック様、この女は…?」
「よって、ここは運命に任せるとしよう」

ボスは部下の話に一切耳を貸さず、自分の言いたいことだけ言い残し扉を閉め鍵をかけた。

「ちょっと、何なの?私もコレ撃てってこと?」
「ドレック様の意図はよくわからんが、大人しくしていろ」

砲台の扉は全て、外からしか開閉できない仕組みにしている。戦いの最中、部下に勝手に逃げ出されては困るからな。

こんな悪役に感情移入させないためか、俺様の胸中など例のゲームには一切描写されていなかった。どうせ親が安心して我が子にプレイさせられるシナリオ、それで正解だ。

「だが…多少、種類の違う感動を俺様が付け加えてやろう」

例えば…主人公がミッション遂行のために全て破壊する砲台、その内の一つに偶然仲間が収容されていたとしよう。さて…どんな結末が待っているかな?
5/5ページ