カルトゥ 2回目

ラチェットは今、一つ前の惑星で手に入れたホログラマーの円いボタンを押したばかりだ。

『何コレ、すっげー歩き辛い!ジャンプどころか足が全然上がんないよ』

辿々しい足つきで、ロボット製造工場入り口までの数メートルをやっとのことで歩ききる。前もって敵を倒しておいて本当に良かった。

『ロボットはこんなもんッスよ。跳躍に特化した設計でない限り、ジャンプするなんて以ての外ッス』

筋肉のおかげで多種多様な動きができる動物とは違い、ロボットは制作者によって備え付けられた機能以外の動作はまず許されない。

二人の会話は外には漏れず、変身したボディ内でのみ反響する。

『変えるのは見た目だけで良いのに。返って不便だよ』

ラチェットは愚痴をこぼしながら、肘の関節がほぼ機能していない腕を機械音を立てながらひらひらと振る。

「!?」

バリアを解いたのが運の尽き。仲間になりすました侵入者は正体を現し、オムレンチ片手に軽やかな足取りで距離を詰める。

不意を突かれた監視ロボットは大の字に倒れ、一瞬でいくつかのボルトに変わってしまった。

「うーん、やっぱ生身のが良いや。ちょっと不便じゃない?」
「身体的にもロボットを体験したいという顧客の要望に、ガラクトロンが誠心誠意をもって答えた結果ッス」
「次はもっと階段を登り易いロボットにしてくださいってリクエスト送っとくよ」

ラチェットはタイミングを見計らって段差を飛び越え、またホログラマーのスイッチを押した。
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