カルトゥ 1回目

自慢の戦闘ロボがジャイアントクランクによって容易く破壊されていく様を観終えた今、広い管制室はすっかり静まり返っていた。例の研究員の影はもう無い。

「カルトゥに仕掛けた罠、二つも失敗しちゃいましたねー。残念」

ついでに、ロボット巨大化マシーン付近に監視カメラを設置し忘れていた間抜けなブラーグもどこかへ連れて行かれてしまった。

今頃、ラチェットとクランクは次の惑星に関する情報を手に入れていることだろう。

「あの子達なら、もしかしたら残りも…」
「ククク…」
「笑ってる場合じゃないんじゃないですか?」

人質は他人事のように尋ねる。

小さな背はプルプルと震え始めた。が、それは悔しさや虚しさから来るものではなかった。

「クク…そりゃ笑うさ。切り込み部隊、しかも知能を兼ね備えた選り抜きのブラーグ・スリーをカレボⅢへ送り込んでやったのだからな」
「…どういうこと?」

ガラクトロン本社のある惑星カレボⅢにブラーグ・スリーが既に配置されていることくらい、両者は把握している。

拍子抜けだ。

ターゲットを確認するまでは同じ空間を漂い続けるだけだった、そんな兵が知恵をつければ確かに厄介な敵へ格上げだ。しかし、結局は物量戦。言ってしまえば原始的な作戦。カルトゥに仕掛けた罠とはえらい違いだ。

肩透かしを食らったと同時に、何もできない捕虜は安心して意見を述べる。

「少し頭が良くなったところで、ラチェットとクランクを止められるとでも?」
「相変わらず鈍いな貴様は。せっかくの知識も、有効活用する知恵が足りなければ宝の持ち腐れだ。こんなのが人類最後の希望とは…泣けてくるな」
「……」

嫌味は良いからさっさとネタばらしに移ってほしい。

「一方で…地図を読める程の知恵を持ち合わせたブラーグ隊は、ガラクトロン社最高経営責任者の居場所を突き止めるだろう」
「突き止めるって……まさか、CEOを…!?」
「そう。つまり、貴様のヒーローはホログラマーを手にすることができなくなるのだ」

カレボⅢにて初登場したブラーグ・スリー。一体一体が強力で数も多かったが、それに対抗してガラクトロン社によるバリア装置やロボットの配置がされていた。プレイヤーの知恵があってこそラチェットだけがその障害をくぐり抜け、CEOに会うことができたのた。

「文武両道、特別に教育した部隊だ。あの老いぼれの始末だけでなく、ホログラマーを奪い破壊するといった機転も利かせてくれるだろうな」

しかし、これでは賢いブラーグに先を越されてしまうかもしれない。

「クソ生意気なCEOめ、思い知るが良い。そしてラチェット、貴様は故郷の星が消え去るショーを指をくわえて見ていることしかできないのだ!ワハハハハ!」
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