オルタニス

同時刻。ラスボスは人質を管制室に連れ出し、楽しそうに今後の予定を発表し始める。

「フハハハハ、見よ!」

ドレックがスイッチを押すと、モニターに無数の文字や計算式等が一気に表示された。

「と言っても、文明にかなり後れをとっている地球人の貴様にこれは理解できないだろうがな。カルトゥのロボットコントロールシステムをちょいとばかり補完したのだ。すると…小さな欠陥ロボットクランクは巨大化不可能となり、ウルトラメックに太刀打ちできず無様に死ぬ」

文章や数式が解読できなくとも、映し出されたメガクランクの上で点滅している×マークから、彼の言わんとする内容は大体理解できていた。

「万一ウルトラメックの目をかいくぐれたとしても、そこをブラーグ・スリーの増援が確実に仕留める。ヘリブースターもジェットブースターも扱えんラチェットをな」
「え?それは……」

つい反論しかけたがためらった。奴が奴自身にとって不利になる勘違いを勝手にしてくれているのなら、こちらからわざわざ指摘することはないからだ。

「言ってみろ。お互いこの世界を予習した者同士だ。それに、貴様の考えていること等お見通しだ」
「……クランクが参戦できないのは、オルタニスだけでしょ」

カルトゥの空もどんよりとしてはいるものの、その雲は雷を一切帯びていない。よってクランクもラチェット同様、安全に探索に出掛けられる筈だ。

「何も参戦できないとは言っていない。貴様の言う通り、クランクはオルタニスを除き、この銀河のいかなる惑星においても問題無く行動できる。俺様がカルトゥ全域に仕掛けた妨害電波を受けたところで、チョップやキックくらいならできるだろう」
「ちょっと……何なの、妨害電波って…」
「記憶力の無いばかちんだな。効果は先程説明したばかりではないか」

話相手は完全についていけていないが、彼はお構いなしに喋り続ける。

「更にもう一つ。電波なんかよりも厳しい縛り要素を追加しておいた。と言うより…フハハハハ、最早詰み要素だな」

背後に並んで立っている白衣の科学者達も、手や下敷きボードで笑い声を抑えつつ一緒になって肩を揺らす。

「この作戦はデ・プラネタイザーの準備と同時進行だったからな、科学班はよくやってくれた」
「恐縮です、ドレック様」
「ククク、今度はゲームソフト通りには行くまい。奴らはカルトゥに足を踏み入れた時点でジ・エンドなのだ」

ムーンベースGやオルタニスでは特にこれといった戦略を練っていないように見えたが、その分カルトゥでしっかり罠を張られてしまった。

「ラチェット…クランク…」

あの二人だけではこの現状を変えることなどまず無理。勝機は完全に消えたかと思えた。
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