ノバリス

「壊れちゃったね…」
「良いさ、無事に着いたんだから」

やはり壊れた。そしてやはりクランクはラチェットの背中にくっついた。しかし、くっついたのはまだ宇宙船が健在している頃であった。

「ク、クランク!?いきなり何だよ、操縦中だぞ!」
「念のためッスよ」

私が読んでいた冊子に‘ホバリングライド’の項目があったのだ。そのお陰か、ラチェットは華麗な着陸をしてみせた。

という訳にはいかなかった。ストーリー通り、彼は背中から着地。実は備え付けられていた、たった一つのパラシュートは私が使ってしまい、申し訳無い気分だ。

「まだタイミングが掴めないッスね~」
「まあ、最初だからな」

プロペラを使えるようになるのは次の惑星からだ。というのは黙っておく。ネタバレ厳禁でいこう。クォークは素敵なヒーローだよ。

つっ立っている私の背中には荷物、肩からはパラシュートが伸びている。

「おねーさん、パラシュート外すよ」

ラチェットが私の肩と頭に掴まり、慣れた手つきでロープを外してくれた。見た目の割に軽いなこの子。

「やっぱりあの船は危険だったッス」
「ふん!なんとでも言えば良いさ」

おい、もう彼の感情を逆撫でするようなことは言ってやるな。

「それにしても、ねえさんには予知能力でもあるッスか?」

おい、私が返答に困るようなことは言うな。

「まるで、墜落することをあらかじめ知っていた様だったッス」
「ま、まあ…女の勘ってやつだよ、うん」

ネタバレ厳禁ネタバレ厳禁。

「そうッスか…」

目を細めている。疑われているな。

「どうでもいいから二人とも、代わりの宇宙船を探しに行こうぜ…っと、その前に」

ガラクトロンショップを開く。

「はいらっしゃい!……おや、女の子のお客さんだ!いや~何年ぶりかねえ」

店員はよく喋るなあ。地球で会った彼と瓜二つだが、どうやら彼等は同一人物ではなさそうだ。

「あ!!新しいガラメカ入ってる!」
「そぉ~いつは良いよ?」
「でもボルトが足りないや…」

後で買えるさ。バーナーにブラスター、ビデオミサイル。実際に見てみたいな。

「まけてくれないよなー……おねーさん」
「何?」
「旦那にさあ、色仕掛けしてよ」
「……」

お前、何をにやにやしている。

「あっは~ん、とか、うふーん、とか」

なんでそんなにご機嫌なの。

「マジッスか」
「おほっイイねえ、おじさんに何を見せてくれるのかい?」

三人揃って本当に、デリカシーの無い。

言い出しっぺの足元に思い切り叩きつけるバクダン一発。周りの敵が何事か、と立ち止まりキョロキョロする。

「…ほ、ほんの冗談だって!」
「ジョークはううう受け流すものッスよ」
「ごめんね、しっかり受け止めちゃって」

もう一発手に取る。

「ヒイィ!」

今度は私が不機嫌のターン。

「ハ…ハハ…おじさん、イイ年して悪ノリしちゃって済まなかったよ。お嬢さんにはほら、弾薬おまけするからさ!機嫌直してくれないかい?」
「…わかりましたよ」
「旦那、助かったッス!」
「サンキュー旦那!」

やはりトカゲは大人だ。子供らとは違うな。
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