オルタニス軌道

しばらくの間、狭い独房で一人うずくまっていた。

今までは、自分こそがラチェット&クランクの世界に‘干渉’してきていたとばかり考えていた。否、それはそれで間違いではないのだが、その‘干渉’ができる人物は何も一人に限ったことではない。そこに気付いていなかった。

「奴も知ってたなんて…」

一番有力な‘干渉’ができるのは、ビッグボスドレック。私の今後は、ラチェットとクランクの命は、地球の未来は、今正に彼の手の中にある。

「どうしよう…」

秘策なんか無い。あったところで、自分と主人公は別行動中なのだ。仮に彼らと連絡が取れたとしても、敵に先回りされるのが関の山。

「ラチェット…クランク……どうしよう、どうしよう…!」

彼らは早く逃げなければ確実に始末されてしまう。しかし逃げたら逃げたで、今度は自分や地球、ラチェットの故郷の星ベルディンが終わる。無論、被害はその二つの星だけに留まらないだろう。

「どうしよう……早くっ…早く来て!でも…来たら絶対負けちゃう!来ちゃ駄目…でも……」

頭を抱え掻き毟るも、何も良い案が浮かばない。何も思いつかない。

何もできない。

「どう…どうすれば、良いの…?」

冷え込んだ拳に力が上手く入らなくなってきた。暑くないのに汗が噴き出す。

そんな状態でも、ただ一つ考えられることがある。ただ一つ、はっきりと言えること。強く願えること。

「助けてっ…!」


同時刻。

そんな悲痛の叫びが届く筈の無い、静まり返った宇宙基地。緑の塔が崩れるその前で立ち止まっていたラチェットは顔を上げ、ボルトの海には目もくれずに階段を昇り始める。

「……行こう」
「……ウィッス」
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