オルタニス軌道
趣旨の掴めない問いに恐る恐る回答する。
「人間は、あんた達ブラーグの…食糧になるんでしょ?あと、地球の一部も切り取りたいんじゃないの?」
「地球を襲う理由ではない、ばかちんが。襲ったその結果、“得られた成果物は何か”と言う意味だ」
襲った張本人は手を後ろに組み、ゆっくり歩きながらネタばらしを始めた。
「あの星には我々ブラーグ、いや、この銀河にとってかなり重要なアイテムが何故か存在し、しかも大量生産までされていた。貴様もこれに見覚えがあるだろう?絶対にな」
「!?」
そう言いながら彼が見せつけるように持ち上げた物は、黒を基調としたやや縦長のプラスチックパッケージ。
題名は“ラチェット&クランク”
「あ、あ……あんたっ…!」
声が上手く出せない。
「でなきゃ貴様みたいな小娘、こんな所にまで連行され且つ重宝される理由が無い」
「どこ、で…」
「だから地球で、と言っているだろうが」
硬直する地球人を余所に、ラスボスはスラスラと解説していく。
「不思議なことに俺様の姿形に止まらず、あらゆる人物、惑星、ここ最近の出来事、更には俺様の計画、その進み具合、邪魔者への対抗手段……このゲームの内容とほぼ一致する。ただ、一つだけ全く一致しないものがある。貴様を含めた地球人だ」
正面で立ちすくむ人質をブラーグ代表のドレックは短い指で指す。
「このゲームの通りことが進んでいたのなら、俺様は破滅していただろう。だがラッキーなことに、それを予習させてくれるアイテムを見つけた。そして、異質なキャラクターは既に全員捕獲し、冷蔵保存した。肝心のたった一人残された地球人も今や手中に収めた。もう我々に死角は無い」
「……」
既に知っていた。
私が知っていたのと同じように、奴も知っていたのだ。
立場は同列。いや、それ以下だ。私は奴に身柄を拘束され、仲間から引き離されている。
「…お願い」
「ん?」
「ラチェットを、殺さないで。クランクを、殺さないで。みんなを……お願いだから…」
連行されてから始めて見せるその弱気な態度に、ビックボスドレックは目尻を下げ、さも申し訳なさそうに吐き捨てた。
「我々だって本当はこんなことしたくないのだ。奴らが邪魔をしてくるなら消す。邪魔をしてこないなら消さない。ただそれだけのこと」
そしてパッケージの裏面も眺めながら、またゆっくりと辺りを歩き始める。
「このゲームによれば、ベルディンとかいう汚らしい星にはあのロンバックスの家があるそうだな。最期の舞台に実に相応しい……と、俺様の分身もそんなことを言っていたかな。フハハハ、思考回路まで同じとは」
奴の並べる御託も、ブラーグ達のバタバタと走り回る足音も、やけに遠くから聞こえるものに感じる。
「ここはゲームソフトに忠実にいくとしよう。ラチェットとクランクに、このデータと同じ様に勝つ。俺様は、絶対に、勝つのだ」
それはただの強がりな宣言にはとてもじゃないが聞こえなかった。今まで自分がしてきた様に、彼も成功するやり方を選ぶ。
「まあ…俺様がこれから仕掛ける罠を、奴らが死なずに掻い潜れればの話だがな。そのために必要だった情報の提供、誠に感謝する」
知識量は、つい最近ソフトを手に入れたラスボス本人よりも、長い期間プレイしてきたこちらが上。
それでも、こちらの勝機は無いに等しい。
「貴様は指をくわえて見ていろ。おい、誰かこいつを部屋まで連れてけ」
「人間は、あんた達ブラーグの…食糧になるんでしょ?あと、地球の一部も切り取りたいんじゃないの?」
「地球を襲う理由ではない、ばかちんが。襲ったその結果、“得られた成果物は何か”と言う意味だ」
襲った張本人は手を後ろに組み、ゆっくり歩きながらネタばらしを始めた。
「あの星には我々ブラーグ、いや、この銀河にとってかなり重要なアイテムが何故か存在し、しかも大量生産までされていた。貴様もこれに見覚えがあるだろう?絶対にな」
「!?」
そう言いながら彼が見せつけるように持ち上げた物は、黒を基調としたやや縦長のプラスチックパッケージ。
題名は“ラチェット&クランク”
「あ、あ……あんたっ…!」
声が上手く出せない。
「でなきゃ貴様みたいな小娘、こんな所にまで連行され且つ重宝される理由が無い」
「どこ、で…」
「だから地球で、と言っているだろうが」
硬直する地球人を余所に、ラスボスはスラスラと解説していく。
「不思議なことに俺様の姿形に止まらず、あらゆる人物、惑星、ここ最近の出来事、更には俺様の計画、その進み具合、邪魔者への対抗手段……このゲームの内容とほぼ一致する。ただ、一つだけ全く一致しないものがある。貴様を含めた地球人だ」
正面で立ちすくむ人質をブラーグ代表のドレックは短い指で指す。
「このゲームの通りことが進んでいたのなら、俺様は破滅していただろう。だがラッキーなことに、それを予習させてくれるアイテムを見つけた。そして、異質なキャラクターは既に全員捕獲し、冷蔵保存した。肝心のたった一人残された地球人も今や手中に収めた。もう我々に死角は無い」
「……」
既に知っていた。
私が知っていたのと同じように、奴も知っていたのだ。
立場は同列。いや、それ以下だ。私は奴に身柄を拘束され、仲間から引き離されている。
「…お願い」
「ん?」
「ラチェットを、殺さないで。クランクを、殺さないで。みんなを……お願いだから…」
連行されてから始めて見せるその弱気な態度に、ビックボスドレックは目尻を下げ、さも申し訳なさそうに吐き捨てた。
「我々だって本当はこんなことしたくないのだ。奴らが邪魔をしてくるなら消す。邪魔をしてこないなら消さない。ただそれだけのこと」
そしてパッケージの裏面も眺めながら、またゆっくりと辺りを歩き始める。
「このゲームによれば、ベルディンとかいう汚らしい星にはあのロンバックスの家があるそうだな。最期の舞台に実に相応しい……と、俺様の分身もそんなことを言っていたかな。フハハハ、思考回路まで同じとは」
奴の並べる御託も、ブラーグ達のバタバタと走り回る足音も、やけに遠くから聞こえるものに感じる。
「ここはゲームソフトに忠実にいくとしよう。ラチェットとクランクに、このデータと同じ様に勝つ。俺様は、絶対に、勝つのだ」
それはただの強がりな宣言にはとてもじゃないが聞こえなかった。今まで自分がしてきた様に、彼も成功するやり方を選ぶ。
「まあ…俺様がこれから仕掛ける罠を、奴らが死なずに掻い潜れればの話だがな。そのために必要だった情報の提供、誠に感謝する」
知識量は、つい最近ソフトを手に入れたラスボス本人よりも、長い期間プレイしてきたこちらが上。
それでも、こちらの勝機は無いに等しい。
「貴様は指をくわえて見ていろ。おい、誰かこいつを部屋まで連れてけ」