オルタニス軌道

いくつもの小惑星が周囲に漂う宇宙基地をスペースシップBBが出発した直後、管制室に警報が鳴り響いた。

『ムーンベースG・セクター00において、未登録の小型機が管制塔の許可無しに着陸。先日クォーク・タスティックが紛失した船と同一のものと判明』
「何!?」
「まさか…」

それは、要塞惑星アンブリスから勝手に持ち出された赤い船ではないだろうか?

「映し出せ!」

中央のモニターに現れたのは、ジェット推進型宇宙船から降り立つ例の主人公達。

『よっと』
『…よっと』

もうこんな所まで。想像していたよりも惑星を回るペースが速い。考えていることは側に居るドレックも同じらしく、天敵の姿に少々たじろいでいる。

『ここには居るかな?』
『わからないッスけど、今まで通り地図に沿って効率良く探すッスよ。こうしている内にも』
『わかってるって、早く会いたいのはオイラも同じさ』

“居るかな?”

“探す”

“会いたい”

『待ってて、おねーさん。すぐ迎えに行くから』
「ラチェット…クランク…!」

二人は、私を信じてくれているんだ。見捨てる気など無いんだ。

「全員戦闘配置につけ!クォーク、プロモーションビデオは頭に叩き込んだな?奴を迎え撃て!……全く、ブラーグ・スリーは弾切れの小僧に何を手こずっているのだ。使えん奴らめ」

戦闘の準備で武装したブラーグ兵が忙しなく動き回る中、ドレックは嬉しそうに目を輝かせてモニターに集中する女の真後ろに立った。

「さて……こっちはこっちで大事な話をしよう。我々に協力するか、あの邪魔者と共に死ぬか。貴様にとって最後の選択になるやもしれん」
「悠長にお喋りしてる暇あるの?」
「勿論だ」
「あの子達がすぐそこまで追い付いてきてる。それでも自分は絶対負けないとでも?」

振り返ると、ピンチな筈のビッグバッドボスは意外と落ち着いた表情、むしろ余裕から薄ら笑いを浮かべている。

「負けないさ。確実に敗北を防ぐことができるのだ」
「私を脅したってもう無駄だからね!」

形勢逆転だ。もう彼らの邪魔になるようなことには荷担しない。こうなってしまえば、きっとあと一歩でこいつを倒すことが出来るから。

が、目の前の男はその縦に長すぎる額に手を当てため息を吐いた。

「俺様は貴様の故郷、地球を襲ったのだ。この意味がま~だ分かっとらんのか?とんだニブちんだな」
「意味…?」

彼が何を言いたいのか、いまいちピンと来ない。地球を襲った意味とは。
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