ノバリス

ラチェットの処女作品は今、宇宙を猛スピードで突き進んでいる。

「おねーさん、時間掛かりすぎだから」
「ハハ…ごめん」
「次からは、もう少し急いで準備してほしいッス」
「…気をつけます」

星が綺麗だなあ。

「もたもたしていると、折角の手掛かりが逃げちゃうよ」
「…ごめんなさい」

隣に座る彼は手厳しい。

「ラチェット、もうそのくらいにしておくッス。ねえさんも反省したッス」

膝に座る彼は優しい。

「あのなクランク、オイラはこれでも怒っているの!」
「その割には…なんだか嬉しそうッスね」

ラチェットが?

「なんか言ったクランク?」
「なんでも無いッス」

いやいやすごく不機嫌だよ。でもこの子達、既に仲良いな。息がぴったりとまでは行かないが…良いコンビというか。相性が良いってやつか。

「お、そろそろノバリスに着くぞ」
「地球に似て、綺麗な星ッスね」

そうか、来るぞ、‘墜落’が。

ゲーム内容と同じ展開であるのならば、ラチェットの作ったこの作品はこの星に着くと同時に粉々になる。

いや、もし。ゲームのストーリーと違う、私が乗っているのだ。異物が追加されているのだ。新しい展開になるのかもしれない。

「ねえさん、さっきから何を読んでいるッスか?」
「ん?‘緊急脱出ガイド~万一ブレーキが効かなくなった時のために~’」

それでも不安なものは不安。今からでも遅くはない、読破してやる。

「…おねーさん、オイラがそ~んなに頼りないパイロットに見える?」

まずった、また彼のヘソを曲げてしまった。

「ラチェットの場合、パイロットではなくてメカニックだと思うッス」
「クランク…まだそれ引きずるのかよ、いい加減にしろよ」

私とラチェットでは、相性が悪いのだろうか。
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