オルタニス軌道

ラチェットとクランクはケルバンでの用を済ませ、至急キャナルへ飛んで来た。

「ねえさんからのメッセージにあった“道具があれば位置が下がる”、これはネギリエイダーのことを示しているッス」
「これがあれば、ランチャーNo.8も激安で手に入れられるってことか。あの商人に効くかなぁ?……まあ、それも」

ラチェットはネギリエイダーを腰のベルトに付け直し、ゆったりと進むエアタクシーの上からダウンタウンを見下ろした。

「ここを切り抜けられればの話ッスね」

二人を待ち受けているのはアメーバの化け物でもその駆除隊でもなく、自在に空を飛び回るブラーグ隊だ。アスファルトに降り立つ前から全員がこちらを視認している。

「いや、切り抜けてみせるさ!」

道の端に停まったタクシーから覚悟して降りようとした瞬間。どこからか放たれた無数の追尾ミサイルによって、敵は一人残らず撃墜されてしまった。

「何が起こったッスか!?」

ラチェットに背負われているクランクは、爆音だけでは状況を把握できない。

「今のって……ランチャーNo.8だ…!」
「正解だ、ボウズ」

頭上から低くて渋い声がする。その影はビルの壁を伝って路地に降り、街灯が照らす大通りまでゆっくり歩いてくる。

「聞き覚えのある声ッスね」

現れたのは、ランチャーNo.8を担いだ闇商人だった。

「待ってたゼ」

顔を合わせるや否や、ラチェットがすっぽり収まってしまう程のミサイルバズーカが投げつけられた。

「助けてくれてありがとう。で、いくら?」
「そいつはタダでくれてやるゼ」
「マジで!?ラッキー!」

ラチェットは新武器を天に掲げてご満悦な様子。

「ネギリエイダーの効き過ぎじゃないッスか?」
「その値切り装置は関係無ェYO。さっさと仕舞いな」

得して最強武器を手に入れようとしていたことは、この男には最初からお見通しだったらしい。

「あー……でもさ、何で?コレめちゃくちゃ高いんじゃないの?」
「お前ら、この辺りの惑星を切り取って回ってるビッグドレックに楯突いてんだってなぁ?商売できる星が減らされちゃあ、俺だって困るんだ。だから今はナリ振り構っちゃいられネェYO」
「なるほど」
「利害の一致ッスね」

まるで、今ある状況を大まかに把握している口振りだ。それなりに情報通なのだろう。

「そういうことだ。じゃ、上手くやれよ」

最後だけはラップやふざけたノリも無しに、商人は暗闇へと姿を消していった。
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