オルタニス軌道

ケルバンに戻ってきていた二人はロボ工房への道中、新たに手に入れたインフォボットの映像を観ていた。

『あー、指名手配中のラチェットにクランク。元気?私。久しぶり』

そこには寝返ったと聞いた地球人の女が映っていて、かつての仲間に向けて軽く手を振っている。今まで観てきたビッグバッドボスの映像と同じく、背景は窓の大きい管制室だ。

『これを観てるってことは、プラネットバスターをオジャンにしたってことだよね。ご苦労様』

ラチェットは前の星ホーベンで、惑星一つを丸ごと破壊する爆弾プラネットバスターを回転砲台で撃ち落とした。その砲台の影からインフォボット達が顔を出し、今観ている映像は2台目のものだ。

『えっと、あんた達に伝えることがあってさ、ちょっと!物騒な物向けないでよ!…失礼、別に脅されているわけじゃないの、ここでの暮らしは案外快適だし』

『既に痛感しているとは思うけど、ガラクトロンの新武器と弾薬売ってもらえなくなってたじゃん?あれさ、やっぱりビッグドレック様の圧力でそうなってたんだって。ご愁傷様。オムレンチだけで世界を変えられるのかおねーさんと~っても心配』

『そう言えばさっきも言ったけど、ここスペースシップBBでは快適に過ごせてるの。虫一匹入って来れない完璧な管理体制ってやつ。あと、公には犯罪グループの人質だった地球人の女を保護したってことになってるみたいね。実際、結構なおもてなし受けてるから私のことは心配しないで』

『あっそーだ!虫で思い出したんだけどさ、前にお世話になったお姉さん居るじゃん?あの人の近所、まだハチの巣が一個高~いところにあるみたいよ。あ、道具があれば位置が下がるかも。どっちにしろ、取りに行ってあげれば?』
『貴様!そりゃあ何かの合い言葉か?』
『ただの世間話ですよ。奴を煽るのが目的だがぁ、殺伐としたビデオルェターになったら撮ルィ直しだかルァな…!っつったのはドレック様じゃないですか』
『巻き舌まで真似せんで良い!』
『んじゃあラチェットにクランク、スペースシップBBでは最高のおもてなしが待ってるから、どうぞ死ぬ覚悟で!』

映像はカメラ目線で手を振る彼女の笑顔で終わった。

「ムカつく。クランク、その動画消去しといて」
「それは早計過ぎるッス」

彼の隣を歩くクランクはインフォボットを自分の胴体へ大事に仕舞い込んだ。

「ナビデータはもう取れただろ?」
「それが……このインフォボットはロックがかけられているため、ナビデータは入手不可能ッス。じゃなくて!ねえさんのメッセージッス。助けを求めているッス!」
「はぁ?快適っつってたじゃん。忘れたのかクランク?おねーさんはオイラ達を裏切ったんだよ」
「良いからもう一度よく観て聞くッスよ!」

“虫一匹入って来れない”ということは、“虫一匹逃げ出せない”ということ。

「銃を向けられていたッス。結構なおもてなしだなんて……一体どんな拷問を受けているのか…」
「考えすぎだって。最後なんか、何あの話!ハチの巣?知るかよ」

知るかよそんなの。

知るかよあんな人。

「でも…ラチェット」
「消しとけって言ったろ!」

だけど思い出してしまう。このポケットに入れたままの携帯の持ち主。
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