ホーベン

数時間後、またボスの居る管制室に連れてこられた。この大きな窓からは星空を一望できる。眺めだけなら実にロマンチックだ。

「はぁー…」

ラチェットとクランク、今頃どこに居るのだろうか。

「おい、お前!今俺様の話を聞いていなかっただろ?」
「はい。私ただの人質でしょ?貴方の計画を聞く必要性が全く見出せないんですけど」
「いや、聞け。なぜなら、今後お前さんにはこのビッグボスドレック様の計画に大きく貢献してもらうことになるからな。正確には、お前さんの知識がな」

後ろで両手を組んでいるビッグバッドボスは口の端を吊り上げた。

「……私が物知りなの、調査済みなのね」
「勿論。もし非協力的な態度をとるならば…」

宙に浮く大きなモニターに映し出されたのは、指名手配のビラにもあったラチェットとクランクの写真。

「まさか、ラチェット達を攻撃する気!?」
「それは無い。むしろ攻撃されているのはこっちだ。こいつらのお陰で優秀な戦闘員や作業員をたくさん失ったのだ」

確かに、悪い大人の事情に勝手に飛び込んで来てひっちゃかめっちゃかしているのはこちらだ。

「正直なところ、我々がいくら強化しても奴らに適わないのが現状。だが止めさせたい。そこで、奴らを揺さぶるのは直接ではなく間接。つまり……お前さん自身を脅すってことだ」

やっぱり手元にある私に手が及ぶか。

「私に…何しようってんの?」

あの子達の足枷になるなんて御免だ。彼らの危機はゲームに出ていた惑星の危機だけでなく、地球や人間の危機、果てはこの銀河の危機にも及びかねない。

「フフフ…さて、どうしたものかな?」

極めて不利な状況だが、あくまで強気な姿勢でいよう。絶対にこいつの言う通りになるものか。どんな痛みも苦しみも耐えてやる。

「アゴクチビル、ただ今研修ムービーの視聴を完了しました!お呼びでしょうか?」

背後の自動ドアが開き、忌々しい嘘つきヒーローが姿を現す。

「奴とちゅーでもするか?」
「御命令を何なりと、ドレック様」
「フハハハハ、よろしい」

立て膝なんて人生で初めて突いた。
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