ポクタル

オーナーが外に連れ出された時には他の建物やガレージの中まで既にブラーグだらけだった。

ボブの工房からも数体出てきてブラーグ同士で何やら話し合っている。

「もうジェットブースターは取り付けたらしい」
「チッ、遅かったか」

唯一の客の周りには十人近くのブラーグ隊が円を作って銃を構えていた。

「お客さん!」

声でこちらに気付いた彼女はバツが悪そうな顔をした。

「あのおっさんは私の素性を知らない。かくまってもらってた訳じゃないし、一般市民のことは放っときなよ」
「だとしても俺達は貴様とあいつ、どちらにも用があるんだ」

たしか彼女はサックキャノンしか武器を所持していなかった。ブラーグを吸い込めないガラメカでは勝ち目が無い。否、どんな強力な武器があったとしても、この状況を彼女一人で切り抜けるなんて無理だ。戦闘がてんで駄目な太った経営者でもそれくらい分かる。

「おい、オーナーさんよ」

あの時の言葉が今でも響く。

“俺達は何度邪魔されても、この海の汚染を続ける。止めてほしけりゃ、飛び回っているあのガキにこう伝えるんだ”
“こいつらの言う通りにして。私のことは、大丈夫だから”

「……」

命令通り、彼女がブラーグ側へ自ら寝返ったかのような証言をした。

この海を守るためだ。この観光地を守るためだ。自分を守るためだ。

だが、それで良いのだろうか?言うことを聞いたままで良いのだろうか?このまま逃げてしまって良いのだろうか?

「……」

彼はキッチンの床に散らばったフルーツの片付けを放り、ドアを勢い良く開け走り出した。
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