アース

「おねーさん!まだ時間かかるの?」
「もうちょっと待ってよー」
「食糧なら、ワタシ達の乗って来た船に十分量積んであるッスよ」
「食糧だけの問題じゃあないんだよ」

この星を発つんだ。最低限の必需品をこの家だったものから掘り起こさなくては。替えの洋服と、生理用品と、化粧品は…要らないかな。手鏡と櫛くらいは持って行こう。あとは、

「おーねーえーさーんー!」

彼らは少し離れた、道路だったところから私を急かす。

「はいはい!」

あとは、お守りとか。それこそ要らないか?携帯は使えないだろうなあ。肌身離さず持っていたけれど、ここでおさらば。確か今もポケットに

「おねーさんってばー!」
「ラチェット、女の子には色々と身支度が必要なの!」
「そうじゃなくて、助けて!」

わお。見ないうちに彼がブラーグにモテモテだ。あいつら、まだ地球にいたのか。

「もう、こっちだって忙しいのに」

バクダンを5発程プレゼント。相も変わらず気色悪い断末魔。

「ありがと、おねーさん」

学校から家に来るまでの間に、大分バクダンの使いに慣れた。今の自分なら、クランクと同じくらい強いかもね。

「あれ、クランクは?」
「ねえさん、こっちに縫いぐるみが沢山埋まっているッスよ」

こちらに来ていたのか。逃げるのが上手いと言うのか何と言うのか。

「ワタシより大きな縫いぐるみが多いッスね」
「まあ…捨てるに捨てられなくて…」

まあ、そろそろこの星ごと捨てるのだが。

「フカフカッス。こっちのは、手触りが良いッス」

だが、先程まで蛙を潰していた手でベタベタ触られているのは気分が悪い。

「ねえさん、出発の前に着替えておいた方が良いッス。特に下半身、ベトベトッスよ」
「ベトベトの手をした方に言われるまでもないよ、はい」

ウエットティッシュの箱程しかない彼にその箱を渡す。

「ありがとうッス」

彼は箱の側に立て膝をつき、腕をいっぱいに伸ばしてティッシュを取り出す。

私も下だけ着替えるか。彼等から瓦礫の影になるポジションを探し、駄目になった服と靴を脱ぎ捨てる。

「あ、おねーさんここに居たのか。オイラの目の届かないところに行っちゃ駄目じゃないか」

は?

ちょっと、今、私、下半身パンツなんだけど。

「ん、なに固まっているッスか?早く着替えると良いッス」
「な…な、な」

なんてデリカシーの無い。

「おねーさん、顔赤いけれど…大丈夫?」

あんた達のせいだよガキ共!

地球で叫んだってもうどうにかなる訳でもないので、二人に見守られながらもそもそと着替えた。

約一時間後、三人はようやくこの星を発った。
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