番外編12:都合の良い女達

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ロールシャッハが臭いという話題から何がどうなったのか、急遽皆で温泉へ行くことになった。

せっかくの機会ということでスターク・ジェットではなく、列車でゆったり窓の外の景色を眺めながら温泉村へ向かっている。

ゆったりと言っても、もう景色を見飽きてしまった子供達はヒカルが用意したトランプでババ抜きを始めていた。

「そうだ、温泉入ってる間ディスクはどうしよう?」

ジェシカが通路の向こう側に居るアキラの手札から1枚引くのを見ながら、夢主は今更な疑問を投げかける。

「トニー、ディスクってお湯に浸けても大丈夫なの?」

この車両にはアキラ達以外に乗客が居ないので、アベンジャーズはホログラムとして姿を現していた。

「問題無い。ちょっとやそっとのことじゃ壊れない造りにしてあるさ」
「なら良かった!あ、よっしゃー!俺あ~がりっ」

ヒカルの手札から適当に1枚選んだアキラは早々にゲームをクリアした。

「いいや、入るときは外していこう。温泉の中には余計なものを持ち込んじゃ駄目だよ」

ヒカルの言う通り、近頃はタオルや水着の着用も衛生上の理由で禁止している温泉がほとんど。

「でも、ディスクを外すなんて心配だよ…」

そう言うエドの手札は順調に増えていき、既に扇のように広がっている。その小さな両手で支えるのがやっとだ。

「別に良いだろ。コレだけで温泉が汚れる訳じゃねぇんだし」

クリスは通路を挟んで隣に座る夢主の手からカードを引き、持っていた最後の1枚と共に山場に捨てた。

「そうよ。ちょっとくらい良いじゃない」
「みんな、その点は心配いらないわ」

戻ってきたペッパーは向き合う夢主とジェシカの間を通り、窓際の席に着いた。

「女将さんに話を付けておいたわ。きちんと殺菌消毒すれば、耐水性の腕時計くらいなら付けたままで良いですって」

彼女の報告を聞いて皆は胸をなで下ろした。

「ただ、何せ急に決まったことだから貸し切りにはできなかったの。他のお客さんに何か言われるかもしれないわね」
「あまり見せびらかさないようにすれば大丈夫ってこと?」
「ええ」
「わかったわ。って、夢主?」
「……」

夢主は自分の手札を片手にまとめ、もう片方の腕にあるディスクをじっと睨みつけている。

「ちょっと、早く引いてよ。夢主の番よ?」
「……」

ジェシカがカードを彼女の顔の前に持ってくるも、反応は無し。夢主の頭はもうトランプゲームどころではなかったからだ。

「どうしちゃったの?」
「……」

どういう訳か、ロールシャッハはディスクに封印されている間も外の様子を手に取るように把握することができる。それは子供達が温泉に入っている間も例外ではない。そして、ヒーローとパートナーの性別が違うのはこの組だけだ。

「……」

夢主は固く口を結び続けている。絶対に彼を女湯に連れ込んではいけない。

夢主ちゃん、ロールシャッハに話があるなら、ホログラムに出してあげた方が…」
「……」

いつもは勝手に小さな姿を現したりディスクを中から揺れ動かせたりするが、何かを察したのかロールシャッハはピクリともしない。

夢主は手札を膝に置き、ディスクをバイオバンドごと外して両手で持ちクリスに差し出した。

「クリスくんお願い、預かってて」
「何で俺なんだよ」
「何でって…」

通路を挟んで一番近い位置に座っているし、ファイト属性のディスクを扱える者同士どこか親近感を抱いていたため、最初に名が浮かんだからだ。

「大分信頼されてるなぁ~?」

ニヤついているアイアンマンが想像しているような深い意味は無い。

「もしトニーだったら、今頃もの凄い勢いでディスクが揺れてるでしょうねぇ」

その冷やかしに被せるようにペッパーが含みのある言い方で呟いた。彼女はサッシにひじを突き、じっと窓の外を眺めている。

「ハ、ハハ……何言ってんだ!俺はいつだって紳士だ!」

クリスはもう彼の言葉を気にする様子も無く、ロールシャッハのディスクをすんなり受け取った。
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