番外編9:都合の悪い俺ちゃん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「クソッ、兄弟揃って出ねぇとか…」
「ジェシカちゃんとエドくんも…」
今は学校の授業が終わり一区切りする時間帯なので誰かしら電話に気付いてくれてもおかしくない筈。が、電源を切っているのか音を鳴らさない設定にしたままなのか、アキラ達からの応答はまだ無い。
「もう一度かけてみるか…」
「…あれ?」
夢主は端末を持つ自分の手にほんの少しだけ血が付いていることに気付き、ハンカチで拭き取る。
怪我をしているのは自分ではない。それは先程繋いでいたクリスの手から出ていたものだった。
「大丈夫?」
「あ?」
「手が…」
クリスはデッドプールに投げ飛ばされた際、手の平を軽く擦りむいていたらしい。
垂れ始めている血をハンカチで拭おうとしたが触れる前に避けられてしまった。
「別に。こういうの慣れてるから」
「……そう…」
夢主はその言葉の意味がかなり気になるが、クリスのつっけんどんな態度から、この話題は深追いすべきでないと勝手に直感し口をつぐんだ。
「……」
「……」
クリスは別に夢主を黙らせたくて冷めた態度をとった訳ではない。彼女になるべく心配をかけたくなかっただけで。
「……」
「……」
「……俺、日本に来る前は毎日喧嘩ばかりしてたんだ」
「喧嘩?」
クリスは顔を背け、大通りの方を見ながら自分の話を始めた。
「目の前の現実から逃げ出すように街ブラツいて、かと言ってやりてぇ事も特に見つかんねぇし……そんな人生ナメた奴見かけたら、不良も突っかかりたくなるよな」
「……」
擦りむいた自分の手を見つめながら、彼は自嘲の意を込めて薄笑った。
「でも、俺はキャップと出会って、あいつとパートナーになって変わったんだ。自分自身の人生にちゃんと向き合うって、決めたんだ」
「……」
いつの間にか自分の心の内を言い切ってしまったクリスは、急に我に返ったようにこちらへ振り向いた。
「あっ、いや…お、お前が黙ってるからっ、俺が余計なことまで喋んなきゃいけなくなったじゃねぇか!」
「ごめん…」
彼にしては珍しく頬と耳を真っ赤に染めているが、色黒な肌と路地へ差し込む逆光のお陰で夢主にはバレていない。
「でも、大事な話聞かせてくれてありがとう」
「……フン」
クリスはまたそっぽを向いた。これも冷たい態度には変わりないが、夢主の表情は随分と柔らかくなった。
「ジェシカちゃんとエドくんも…」
今は学校の授業が終わり一区切りする時間帯なので誰かしら電話に気付いてくれてもおかしくない筈。が、電源を切っているのか音を鳴らさない設定にしたままなのか、アキラ達からの応答はまだ無い。
「もう一度かけてみるか…」
「…あれ?」
夢主は端末を持つ自分の手にほんの少しだけ血が付いていることに気付き、ハンカチで拭き取る。
怪我をしているのは自分ではない。それは先程繋いでいたクリスの手から出ていたものだった。
「大丈夫?」
「あ?」
「手が…」
クリスはデッドプールに投げ飛ばされた際、手の平を軽く擦りむいていたらしい。
垂れ始めている血をハンカチで拭おうとしたが触れる前に避けられてしまった。
「別に。こういうの慣れてるから」
「……そう…」
夢主はその言葉の意味がかなり気になるが、クリスのつっけんどんな態度から、この話題は深追いすべきでないと勝手に直感し口をつぐんだ。
「……」
「……」
クリスは別に夢主を黙らせたくて冷めた態度をとった訳ではない。彼女になるべく心配をかけたくなかっただけで。
「……」
「……」
「……俺、日本に来る前は毎日喧嘩ばかりしてたんだ」
「喧嘩?」
クリスは顔を背け、大通りの方を見ながら自分の話を始めた。
「目の前の現実から逃げ出すように街ブラツいて、かと言ってやりてぇ事も特に見つかんねぇし……そんな人生ナメた奴見かけたら、不良も突っかかりたくなるよな」
「……」
擦りむいた自分の手を見つめながら、彼は自嘲の意を込めて薄笑った。
「でも、俺はキャップと出会って、あいつとパートナーになって変わったんだ。自分自身の人生にちゃんと向き合うって、決めたんだ」
「……」
いつの間にか自分の心の内を言い切ってしまったクリスは、急に我に返ったようにこちらへ振り向いた。
「あっ、いや…お、お前が黙ってるからっ、俺が余計なことまで喋んなきゃいけなくなったじゃねぇか!」
「ごめん…」
彼にしては珍しく頬と耳を真っ赤に染めているが、色黒な肌と路地へ差し込む逆光のお陰で夢主にはバレていない。
「でも、大事な話聞かせてくれてありがとう」
「……フン」
クリスはまたそっぽを向いた。これも冷たい態度には変わりないが、夢主の表情は随分と柔らかくなった。