第一部:都合の良い女
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夢主の虚勢を煽りと捉えた片方の男は頭に血が昇り始める。
「ハッ、大の大人を脅そうってか!?上等だ!」
「まあ待て、俺に任せろ」
冷静な方の腰にある刀で斬られるかと思ったが、それが使われる様子は無く鞘に入ったまま。
「貴様……良い度胸だ。だがなぁ!」
男は自分の胸ポケットに手を突っ込んだ。彼の武器は刀ではない。もっと簡単に人を殺せる、銃だ。
「うっ……あれ?」
そう直感し咄嗟に身を縮めたが、銃声はなかなか鳴らない。代わりに、手の平サイズの何かが取り出されていた。
「これは想像していなかっただろ?」
男の手にあるそれはごく最近見覚えのある、青い何かだ。
「え?同じ…」
「同じじゃねぇよ!バロン・ジモ!!ディー・スマッシュ!」
それをいきなり地面に叩きつけた。玩具に何てことを!と思ったのもつかの間、七色に光る無数のバーコードのようなものに包まれながら1人の男が現れる。
「なっ…!?」
しかも悪人面。日本の報道にもたまにその顔を見せるヴィランだ。夢主はあまり思い出せていないが、彼は有名なヒーローの宿敵。殺しにかけてはかなりの実力者である。
「驚いたか!?こいつと貴様、どちらが先に交番へ辿り着けるかな?」
「やっぱり貴方達、悪い人だったの!?」
「フン、善いか悪いかは力の強い者が決める」
手品か何かだと信じたいが、そう豪語する3人目はあの装置から出てきたように見えた。そして、明らかに相手側の態度が変わった。あのヴィランは確実に夢主を捕らえることが出来る自信があるのだろう。
このままではまずい。体が強ばる。手に力が入る。そして、自分の手にずっと持っている物に気が付く。
これは、あれと同じだ。
「バロン・ジモ、あの女が持っているディスクを奪え」
「…ふふ」
「あ?」
「そういうこと…そういうことね……だったら!」
自分は1人ではないことに気が付いた。心強い味方がここに居る!
「ロールシャッハさん!!ディー・スマッシュ!」
相手の真似をして装置を足元に叩きつけた。
「……」
「……」
「……」
「……」
静寂。
「な…なんで?なんで!?これじゃ駄目なの!?」
「行け」
待機していたヴィランが夢主を捕まえにかかる。ロールシャッハが入ったディスクを急いで拾い逃げ出すも、すぐに肩を掴まれてしまった。
「うわっ…!」
「さあ、ディスクを寄越せ」
「い、嫌!絶対嫌!!」
両手の中にしまい込み屈む。これが敵の手に渡れば、大好きなヒーローは一生このままかもしれない。自分のせいで、殺されてしまうかもしれない。
「構わん、バロン・ジモ。やれ。殺して奪い取れ」
「!?」
「ククク…死ね!」
「待て」
正義のヒーロー登場を期待したが、現れたのはまたしても奇妙なベネチアンマスクに黒っぽい服。残念ながら、彼は敵側の人間だ。
「それは殺すな」
「何故だ。見ていただろう、こいつはなかなか根性がある。生かしておくと厄介だ」
「それに生意気だしよ!」
ヴィランを召還した男とやかましい男が反対するが、長い鼻がついたマスクの男は自分のペースで話し始める。
「私としたことがうっかりしていてな。実験体が、1つ必要なのだよ」
悪漢共の会話から、どうやら命は助けてもらえるらしい。しかし、非常に不吉な単語が聞こえてくる。
「実験体?」
信じたくないが、これは現実だ。漫画などではない。
「最初はアカツキ博士でも使おうかと考えていたが、あの頭脳の持ち主にあの力を持たせるには極めて危険だ。一方で、根性があろうと無かろうとそれはただの子供。日本での失踪事件1つの方がずっと安全だ」
「まあ、どっちにしろこのまま野放しにはできないしな」
終わった。
「おい、バロン・ジモ」
手にあるディスクがまたカタカタ震えている。そうだ。自分は終わったが、まだ彼は終わっちゃいない。
「そいつを連れて行け」
この装置をなるべく、なるべく遠くに投げれば、誰かが拾ってくれる。ロールシャッハを助けてくれる。そんな希望を込めて振りかぶるも、その腕もあっさり捕らえられてしまう。
「くっ…!」
「おっと」
どうにもならなかった。
「貴様のこの腕はまだ状況を把握できていないようだな。ここで切り落としていっても構わないが?」
ヴィランに拘束され、大人3人に囲まれる。しがない一般人にはもう何もできないのだ。
一番最後に現れた男が夢主の手から青いディスクを奪い取り、その画面を眺める。
「こいつが、奴が言っていたロールシャッハか?」
「ああ。たしかそんな姿をしていた」
「なるほど。私がついでに進めていた研究の方は成功ということか」
「……」
この男は実験体と言っていたが、これから何をされるのか。自分はどうなってしまうのか。
「そんな顔をするな。何せ、これから乗る船は非常に乗り心地が良いからな。期待していてくれたまえ」
「ハッ、大の大人を脅そうってか!?上等だ!」
「まあ待て、俺に任せろ」
冷静な方の腰にある刀で斬られるかと思ったが、それが使われる様子は無く鞘に入ったまま。
「貴様……良い度胸だ。だがなぁ!」
男は自分の胸ポケットに手を突っ込んだ。彼の武器は刀ではない。もっと簡単に人を殺せる、銃だ。
「うっ……あれ?」
そう直感し咄嗟に身を縮めたが、銃声はなかなか鳴らない。代わりに、手の平サイズの何かが取り出されていた。
「これは想像していなかっただろ?」
男の手にあるそれはごく最近見覚えのある、青い何かだ。
「え?同じ…」
「同じじゃねぇよ!バロン・ジモ!!ディー・スマッシュ!」
それをいきなり地面に叩きつけた。玩具に何てことを!と思ったのもつかの間、七色に光る無数のバーコードのようなものに包まれながら1人の男が現れる。
「なっ…!?」
しかも悪人面。日本の報道にもたまにその顔を見せるヴィランだ。夢主はあまり思い出せていないが、彼は有名なヒーローの宿敵。殺しにかけてはかなりの実力者である。
「驚いたか!?こいつと貴様、どちらが先に交番へ辿り着けるかな?」
「やっぱり貴方達、悪い人だったの!?」
「フン、善いか悪いかは力の強い者が決める」
手品か何かだと信じたいが、そう豪語する3人目はあの装置から出てきたように見えた。そして、明らかに相手側の態度が変わった。あのヴィランは確実に夢主を捕らえることが出来る自信があるのだろう。
このままではまずい。体が強ばる。手に力が入る。そして、自分の手にずっと持っている物に気が付く。
これは、あれと同じだ。
「バロン・ジモ、あの女が持っているディスクを奪え」
「…ふふ」
「あ?」
「そういうこと…そういうことね……だったら!」
自分は1人ではないことに気が付いた。心強い味方がここに居る!
「ロールシャッハさん!!ディー・スマッシュ!」
相手の真似をして装置を足元に叩きつけた。
「……」
「……」
「……」
「……」
静寂。
「な…なんで?なんで!?これじゃ駄目なの!?」
「行け」
待機していたヴィランが夢主を捕まえにかかる。ロールシャッハが入ったディスクを急いで拾い逃げ出すも、すぐに肩を掴まれてしまった。
「うわっ…!」
「さあ、ディスクを寄越せ」
「い、嫌!絶対嫌!!」
両手の中にしまい込み屈む。これが敵の手に渡れば、大好きなヒーローは一生このままかもしれない。自分のせいで、殺されてしまうかもしれない。
「構わん、バロン・ジモ。やれ。殺して奪い取れ」
「!?」
「ククク…死ね!」
「待て」
正義のヒーロー登場を期待したが、現れたのはまたしても奇妙なベネチアンマスクに黒っぽい服。残念ながら、彼は敵側の人間だ。
「それは殺すな」
「何故だ。見ていただろう、こいつはなかなか根性がある。生かしておくと厄介だ」
「それに生意気だしよ!」
ヴィランを召還した男とやかましい男が反対するが、長い鼻がついたマスクの男は自分のペースで話し始める。
「私としたことがうっかりしていてな。実験体が、1つ必要なのだよ」
悪漢共の会話から、どうやら命は助けてもらえるらしい。しかし、非常に不吉な単語が聞こえてくる。
「実験体?」
信じたくないが、これは現実だ。漫画などではない。
「最初はアカツキ博士でも使おうかと考えていたが、あの頭脳の持ち主にあの力を持たせるには極めて危険だ。一方で、根性があろうと無かろうとそれはただの子供。日本での失踪事件1つの方がずっと安全だ」
「まあ、どっちにしろこのまま野放しにはできないしな」
終わった。
「おい、バロン・ジモ」
手にあるディスクがまたカタカタ震えている。そうだ。自分は終わったが、まだ彼は終わっちゃいない。
「そいつを連れて行け」
この装置をなるべく、なるべく遠くに投げれば、誰かが拾ってくれる。ロールシャッハを助けてくれる。そんな希望を込めて振りかぶるも、その腕もあっさり捕らえられてしまう。
「くっ…!」
「おっと」
どうにもならなかった。
「貴様のこの腕はまだ状況を把握できていないようだな。ここで切り落としていっても構わないが?」
ヴィランに拘束され、大人3人に囲まれる。しがない一般人にはもう何もできないのだ。
一番最後に現れた男が夢主の手から青いディスクを奪い取り、その画面を眺める。
「こいつが、奴が言っていたロールシャッハか?」
「ああ。たしかそんな姿をしていた」
「なるほど。私がついでに進めていた研究の方は成功ということか」
「……」
この男は実験体と言っていたが、これから何をされるのか。自分はどうなってしまうのか。
「そんな顔をするな。何せ、これから乗る船は非常に乗り心地が良いからな。期待していてくれたまえ」