番外編7:都合の良い壁
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ドリンクバーのマシンの側に積み重ねられた小さなトレーを借りて、ヒカルは飲み物が入ったコップ6つを乗せた。
「あ、どうだった?」
小走りで戻ってきた夢主は首を横に振る。
「ロールシャッハさん、ロビーには居ませんでした。この階にも…」
「そっか…」
2人は仕方なく元居た部屋の階に戻る。
レジ前のロビー以外だとしたら、他に思い当たる場所は廊下やトイレ。彼のことだから、空き部屋を勝手に使っているかもしれない。もしくは、建物の外。
「先に帰っちゃったんでしょうか…?」
「店の人に聞いたら、この時間に一人で帰った人は居ないそうだよ。コップだけ返して出て行った人もね。だから、この建物の中で時間を潰してるとは思うんだけど…あ」
「あ!」
部屋を出た時は進行方向しか見ていなかったので気が付かなかった。階段を昇りきった2人の視線の先には黄土色の腕。その姿のほとんどは突き当たりの曲がり角で隠れているが、毎日お目にかかるトレンチコートのものに間違いない。意外と近くに居た。
壁の一部には休憩用のカウンターが造り付けられていて、見たところ彼はそこにコップを置き肘を突いている。
「行っておいで」
夢主の耳元でヒカルが小声で囁いた。
「お盆があるし、あとは僕一人で戻れるから」
そう言って夢主の分の飲み物だけを手渡した。
「ありがとうございます、ヒカルさん」
「ごゆっくり」
彼が個室の戸を開けている間だけ、中からエドのたどたどしい歌声が廊下に漏れ出した。
「あ、どうだった?」
小走りで戻ってきた夢主は首を横に振る。
「ロールシャッハさん、ロビーには居ませんでした。この階にも…」
「そっか…」
2人は仕方なく元居た部屋の階に戻る。
レジ前のロビー以外だとしたら、他に思い当たる場所は廊下やトイレ。彼のことだから、空き部屋を勝手に使っているかもしれない。もしくは、建物の外。
「先に帰っちゃったんでしょうか…?」
「店の人に聞いたら、この時間に一人で帰った人は居ないそうだよ。コップだけ返して出て行った人もね。だから、この建物の中で時間を潰してるとは思うんだけど…あ」
「あ!」
部屋を出た時は進行方向しか見ていなかったので気が付かなかった。階段を昇りきった2人の視線の先には黄土色の腕。その姿のほとんどは突き当たりの曲がり角で隠れているが、毎日お目にかかるトレンチコートのものに間違いない。意外と近くに居た。
壁の一部には休憩用のカウンターが造り付けられていて、見たところ彼はそこにコップを置き肘を突いている。
「行っておいで」
夢主の耳元でヒカルが小声で囁いた。
「お盆があるし、あとは僕一人で戻れるから」
そう言って夢主の分の飲み物だけを手渡した。
「ありがとうございます、ヒカルさん」
「ごゆっくり」
彼が個室の戸を開けている間だけ、中からエドのたどたどしい歌声が廊下に漏れ出した。