番外編3:都合の良い説得
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「ロールシャッハさん!」
皆が集うリビングで彼女が大声を上げたことで、その場に居る全員の注目を集めた。普段おとなしく過ごしている夢主にしては珍しい。
「何だ」
実体化しているロールシャッハはソファから立ち上がらずに短く返答した。
「お風呂に入ってください!」
「断る」
「ロールシャッハさんの戦法を一つ奪ってしまうことは重々承知しております!」
「断る」
「でも、皆さんに迷惑を掛けてしまっているんです!」
「断る」
「お手持ちの香水だけじゃ、防ぎ切れていないんです!」
「何故俺が香水を持っ……断る」
「共同生活の中では、譲らなければならないことも、多少は、あると思います!いや、あります!」
「断る」
「まずは一回、いや、この一度きりでも良いんです!なんなら、シャワーを一瞬だけでも!お願いします!」
「断る」
お互いに一歩も譲ろうとはしない。
「ロールシャッハがさっきから同じ言葉ばっか言ってる…」
「元々貧困なボキャブラリーが更に乏しくなってるわね」
「奴なりに切羽詰まってるってことなんだろう」
アイアンマンは鼻で笑いながらそのやり取りを眺めていたが、何かを思い出したように急に声を荒らげた。
「てか、俺だって限界なんだぞ!さっさと風呂に入れロールシャッハ!これ以上俺の別荘の空気を汚されちゃたまったもんじゃない!」
悪臭を一つの武器として戦うヒーロー様が仲間入りしたお陰で、部屋を換気する頻度・時間・それに必要な電気使用量は確実に増えていた。彼の預かり知らないところでは、エドがあまりの臭さに吐きかけたこともあったりする。
「ま、ディスクの中でお寝んねしてくれるってんなら話は別だけどなぁ?」
「断ると何度も言っている。貴様の耳は塞がっているのか、不便なアーマーだな。造り直しを薦める」
「なんっ何だと…!?アキラ!俺をディー・スマッシュしろ!!」
「ハァ!?」
「ちょっとトニー!」
どうせただの口喧嘩に終わるだろうと放っておくつもりだったペッパーも、これはさすがに止めに入る。
「スタークさん、そんな軽弾みにディー・スマッシュしない方が…」
「ヒカルの言う通りだよ!もしこの後すぐ敵が襲ってきたら、アイアンマン抜きで戦わなくちゃいけなくなるんでしょ?マズいよ!」
最年少のエドも涙目で訴える。が、頭に血が昇りきった大の大人はそんな意見など耳に入れようとしない。今日の彼は沸点がかなり低いようだ。
「構わない!俺がディー・スマッシュしても、アベンジャーズが他に4人も残っているんだ、問題無い!」
「いいえ、3人よ」
何故かここでワスプが名乗りを上げた。
「ロールシャッハ、近頃の貴方の行動は目に余るわ。何も、お風呂に入らないことだけじゃない。さっき夢主が言ったように、ここで一緒に暮らすならお互いに譲歩することだって必要になってくるの」
ワスプの丁寧な説得にもロールシャッハは無視を決め込んだ。
「そう……それがどうしても分からないってんなら、実力行使よ!ジェシカ!」
「うえぇっ!?わ、私もディー・スマッシュするの!?」
「話が分かるじゃない。さすが私のパートナーね。アイアンマン、プランBよ」
「了解」
「フン、実力行使か」
スーパーヒーロー2人が臨戦態勢に入るにも関わらず、この頑固な男は今もなおソファに体を預けている。
「落ち着いてよワスプ、貴女らしくないわ!」
「早くしなさいジェシカ!貴女だって彼に不満が無い訳じゃないんでしょ!?」
「そ、そりゃあそうだけど~…」
そもそもこの説得は、夢主含め子供達主導の話し合いで決まったことである。
ジェシカも悪臭を所構わず放つロールシャッハに不満を抱いている。だからこそ会議をしたのだし、だからこそこんな事態を招いているのだ。ただ、このワスプ程にいきり立っている訳ではない。
「もっと平和的にいきましょうよ!ていうかプランBって何?私達は聞いてないわよ!」
「そっそうだよ、乱暴は良くないよ…」
「それが無理だから実力行使なんだ!おい聞こえないのかアキラァ!!」
アイアンマンは更に声を張り上げた。
「そんなこと言ったって~!……兄さぁ~ん…」
「困ったね、こんな筈じゃあ…」
「どど、どうしよう…!」
アキラはヒカルに、エドはハルクに助けを求めるよう目を向けた。
「ハルク、お前の態度気に入らない。エド、ディー・スマッシュだ」
「ええっ?ハルクまで!?」
「フン、良いだろう」
ロールシャッハは遂に立ち上がり、真っ向から対抗してみせるように全員を見据えた。
「この際だからはっきりさせておくか。ヒーローだろうとガキだろうと、俺に文句がある奴は今すぐ表にで」
「ディー・セキュア」
問題の彼は、表情一つ変えない夢主の手に呆気なく吸い込まれた。
「……」
表に出ようと腰を上げかけたクリスは中途半端な姿勢のまま動けない。
手の中でカタタタタタとディスクが震え続けているが、彼女は構わず斜め45゚以上のお辞儀をする。
「ご迷惑、お掛け致しました」
「……」
「部屋で話してきます」
「…あ、ああ……頼んだ」
アイアンマンが声を絞り出すと夢主は再度軽く頭を下げ、静かにリビングを後にした。
「……」
アキラが声を上げるまで、誰も何も言葉を発することができなかった。
「怖ぇ~!」
「だな。ペッパーとはまた違う怖さだ」
「それどういう意味よ」
「アッアキラ、タイムモードだ!早く!」
「アキラ君?わかってるわよね?」
第二の修羅場を余所に、ワスプとジェシカは問題解決も同然な状況にすっかり気を良くしていた。
「パートナーさんに任せておけば安心ね!」
「ええ。やっとロールシャッハから石鹸の香りがする日が来るのね!」
「そうかなぁ。上手くいかないと思うんだけど…」
エドの予想通り。数分後彼等は、ベッドの上に丁寧に置かれたディスクに向かって地べたで土下座し続ける夢主の情けない姿を目撃してしまう。
皆が集うリビングで彼女が大声を上げたことで、その場に居る全員の注目を集めた。普段おとなしく過ごしている夢主にしては珍しい。
「何だ」
実体化しているロールシャッハはソファから立ち上がらずに短く返答した。
「お風呂に入ってください!」
「断る」
「ロールシャッハさんの戦法を一つ奪ってしまうことは重々承知しております!」
「断る」
「でも、皆さんに迷惑を掛けてしまっているんです!」
「断る」
「お手持ちの香水だけじゃ、防ぎ切れていないんです!」
「何故俺が香水を持っ……断る」
「共同生活の中では、譲らなければならないことも、多少は、あると思います!いや、あります!」
「断る」
「まずは一回、いや、この一度きりでも良いんです!なんなら、シャワーを一瞬だけでも!お願いします!」
「断る」
お互いに一歩も譲ろうとはしない。
「ロールシャッハがさっきから同じ言葉ばっか言ってる…」
「元々貧困なボキャブラリーが更に乏しくなってるわね」
「奴なりに切羽詰まってるってことなんだろう」
アイアンマンは鼻で笑いながらそのやり取りを眺めていたが、何かを思い出したように急に声を荒らげた。
「てか、俺だって限界なんだぞ!さっさと風呂に入れロールシャッハ!これ以上俺の別荘の空気を汚されちゃたまったもんじゃない!」
悪臭を一つの武器として戦うヒーロー様が仲間入りしたお陰で、部屋を換気する頻度・時間・それに必要な電気使用量は確実に増えていた。彼の預かり知らないところでは、エドがあまりの臭さに吐きかけたこともあったりする。
「ま、ディスクの中でお寝んねしてくれるってんなら話は別だけどなぁ?」
「断ると何度も言っている。貴様の耳は塞がっているのか、不便なアーマーだな。造り直しを薦める」
「なんっ何だと…!?アキラ!俺をディー・スマッシュしろ!!」
「ハァ!?」
「ちょっとトニー!」
どうせただの口喧嘩に終わるだろうと放っておくつもりだったペッパーも、これはさすがに止めに入る。
「スタークさん、そんな軽弾みにディー・スマッシュしない方が…」
「ヒカルの言う通りだよ!もしこの後すぐ敵が襲ってきたら、アイアンマン抜きで戦わなくちゃいけなくなるんでしょ?マズいよ!」
最年少のエドも涙目で訴える。が、頭に血が昇りきった大の大人はそんな意見など耳に入れようとしない。今日の彼は沸点がかなり低いようだ。
「構わない!俺がディー・スマッシュしても、アベンジャーズが他に4人も残っているんだ、問題無い!」
「いいえ、3人よ」
何故かここでワスプが名乗りを上げた。
「ロールシャッハ、近頃の貴方の行動は目に余るわ。何も、お風呂に入らないことだけじゃない。さっき夢主が言ったように、ここで一緒に暮らすならお互いに譲歩することだって必要になってくるの」
ワスプの丁寧な説得にもロールシャッハは無視を決め込んだ。
「そう……それがどうしても分からないってんなら、実力行使よ!ジェシカ!」
「うえぇっ!?わ、私もディー・スマッシュするの!?」
「話が分かるじゃない。さすが私のパートナーね。アイアンマン、プランBよ」
「了解」
「フン、実力行使か」
スーパーヒーロー2人が臨戦態勢に入るにも関わらず、この頑固な男は今もなおソファに体を預けている。
「落ち着いてよワスプ、貴女らしくないわ!」
「早くしなさいジェシカ!貴女だって彼に不満が無い訳じゃないんでしょ!?」
「そ、そりゃあそうだけど~…」
そもそもこの説得は、夢主含め子供達主導の話し合いで決まったことである。
ジェシカも悪臭を所構わず放つロールシャッハに不満を抱いている。だからこそ会議をしたのだし、だからこそこんな事態を招いているのだ。ただ、このワスプ程にいきり立っている訳ではない。
「もっと平和的にいきましょうよ!ていうかプランBって何?私達は聞いてないわよ!」
「そっそうだよ、乱暴は良くないよ…」
「それが無理だから実力行使なんだ!おい聞こえないのかアキラァ!!」
アイアンマンは更に声を張り上げた。
「そんなこと言ったって~!……兄さぁ~ん…」
「困ったね、こんな筈じゃあ…」
「どど、どうしよう…!」
アキラはヒカルに、エドはハルクに助けを求めるよう目を向けた。
「ハルク、お前の態度気に入らない。エド、ディー・スマッシュだ」
「ええっ?ハルクまで!?」
「フン、良いだろう」
ロールシャッハは遂に立ち上がり、真っ向から対抗してみせるように全員を見据えた。
「この際だからはっきりさせておくか。ヒーローだろうとガキだろうと、俺に文句がある奴は今すぐ表にで」
「ディー・セキュア」
問題の彼は、表情一つ変えない夢主の手に呆気なく吸い込まれた。
「……」
表に出ようと腰を上げかけたクリスは中途半端な姿勢のまま動けない。
手の中でカタタタタタとディスクが震え続けているが、彼女は構わず斜め45゚以上のお辞儀をする。
「ご迷惑、お掛け致しました」
「……」
「部屋で話してきます」
「…あ、ああ……頼んだ」
アイアンマンが声を絞り出すと夢主は再度軽く頭を下げ、静かにリビングを後にした。
「……」
アキラが声を上げるまで、誰も何も言葉を発することができなかった。
「怖ぇ~!」
「だな。ペッパーとはまた違う怖さだ」
「それどういう意味よ」
「アッアキラ、タイムモードだ!早く!」
「アキラ君?わかってるわよね?」
第二の修羅場を余所に、ワスプとジェシカは問題解決も同然な状況にすっかり気を良くしていた。
「パートナーさんに任せておけば安心ね!」
「ええ。やっとロールシャッハから石鹸の香りがする日が来るのね!」
「そうかなぁ。上手くいかないと思うんだけど…」
エドの予想通り。数分後彼等は、ベッドの上に丁寧に置かれたディスクに向かって地べたで土下座し続ける夢主の情けない姿を目撃してしまう。