ロールシャッハをＤ・セキュアした直後、衰弱しきっていた夢主はまた気を失ってしまった。

目が覚めると見知らぬ小綺麗な天井。

「…！？」

何かしら特殊な部屋にぶち込まれてしまったかと飛び起きたが、ここは実験室や隔離病棟ではなく普通の寝室。電気椅子ではなく何の変哲もないベッド。

「落ち着いて、ここはアベンジャーズや私が住んでいる家よ」

枕元には怪しい科学者などは居なく、白いスーツを着た赤毛の女性が座っていた。

「喉、乾いたんじゃない？」

彼女はコップに入った水を差し出しながら尋ねてきた。ピッチャーが乗ったテーブルには食べやすい大きさに切られたリンゴに楊枝が刺さっている。

夢主は自分が人間扱いされていることに安心し、同時に感謝した。

「ありがとうございます」

正義のヒーローによって助け出される前の、実験材料だった頃とは大違いだ。特に象鼻仮面の男からは「実験体」「第一号」等と呼ばれ、受けた扱いもその目も実に冷然としていた。

受け取った水を飲み干し、夢主の手は自然と注射痕を覆う。

「食欲は？リンゴならあるけど、他に何か欲しいものがあったら言って？」
「……じゃあ、バンソウコウ、頂けませんか？」