第六部:都合の悪い女
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「そこまで言うなら」
我々の説得がこの頑固な男に通じたのだと一同は勘違いした。
「夢主と言ったな。来い」
子供達は最初、ロールシャッハがどういうつもりでそんなことを言ったのか理解できなかった。
「え?」
「来いって…?」
ジェシカの肩に乗るワスプが身を乗り出さんばかりに咎める。
「まさか、この子をアメリカに連れて行く気!?」
「その通りだが」
「無理に決まっているでしょ。夢主には夢主の、日本での生活があるのよ!」
「パートナーなら、相手を思い遣り離れ離れにならないのだろう?」
「…!」
アベンジャーズの意図するところとは全く違うが、ロールシャッハは彼等から言われた言葉には従っている。そんな屁理屈にアイアンマンは軽く失笑した。
「全く、何を言い出すかと思えば、お前さんの大得意な冗談か。夢主、本気にすることは……夢主?」
夢主はアキラ達に向かって先程よりも深く長く頭を下げ、一言も喋らずに背を向けて歩き出す。
「おいおいっ、待て夢主、君も冗談が過ぎるぞ!まずは冷静に考えてだな…!」
戸惑う様子は一欠片も無く、歩みは止まらない。
「そんな…どうしてそこまで…」
「行っちゃうのかよ!?夢主!」
「一緒に戦うって言ったじゃない!」
ジェシカの呼び掛けにも夢主は無視を通す。が、突然、声も無くその場で屈み込んだ。
アーチーに片足を乗せていたロールシャッハは顔だけ振り向き、肩越しに夢主をチラ見した。
「ちょっと……いや、だいじょ、ぶ…大丈夫です」
そう言いつつも、立ち上がるどころかアスファルトに両手を付き腰を下ろしてしまった。
うずくまる夢主の元へ子供達が駆け寄る。その体は微かに震え、額には汗がにじみ出ていた。
「どうした夢主!?」
「む、無理しちゃダメだよ!」
「そうよ!さっきだってフラフラだったじゃない!」
「……」
子供達が必死になって声をかける一方で、トニー・スタークは顎に手を当て、全員に聞こえる声量で呟いた。
「もしかすると、夢主は無限にディー・スマッシュできないのかもしれない」
「こんな時に何だよトニー」
「夢主もリミテッド・バイオコードを持ってるってこと?」
アキラとペッパーだけでなく、全員が発明者の考えに耳を傾ける。
「いや、聞いた話からすると、それは無いだろう。だがタイムリミットが無い分、ディー・スマッシュしていられる時間は……彼女の何かに依存している可能性がある。例えば」
彼は口を動かしながら、2つ同時にアニマル属性のディスクをD・スマッシュし苦しんでいた女を思い出した。
「体力とか」
「体力…?」
アキラはまだピンと来ていないが、ジェシカやクリスは除々に血相を変えていく。
「待って……ロールシャッハがあいつ等の船から脱走して、私達に会いに来て、夢主を助け出すまで、ずっとディー・スマッシュしたままだったわよね?」
「だとすると、大分消耗してるんじゃねぇのか…!?」
「ってことはスタークさん。こうしている今も、夢主ちゃんの体にその負荷がかかっているってことですか?」
「落ち着け、エド」
自分のことでもないのに涙目でうろたえるエドをハルクが低い声でなだめる。
「なあトニー、それ本当なのかよ?夢主は大丈夫なのか!?」
「わからない。そもそも、俺の仮説が正しいかどうかもな。だが、このまま放っておくと危険なのは確かだ」
「じゃあ早く病院に…!」
「勿論連れて行くが、普通の病院で普通の処置をしたところで回復するとは限らない」
「マジかよ…」
アイアンマンは顔を上げ、遠くで棒立ちしている男を鋭く睨みつけ叫んだ。
「ロールシャッハ!!俺がお前のディスクを研究したいのは、決して興味本位や奴等みたいに悪用する為ではない!悪を倒す為、世界の平和の為、そして夢主の為でもあるんだ!」
ロールシャッハは真っ直ぐ向き直し、小さな男の主張を黙って聞き続ける。
「夢主は今、悪のせいで苦しんでいる!せっかく救い出した彼女が死んでも良いのか!?」
「死ぬ!?え?死…?死ぬのは、嫌っ…!」
その彼女は割と元気そうな返しをしてみせるも、全身の力は徐々に抜け目は霞んでいく。
「このディスクを研究すれば、夢主を助ける方法がわかるかもしれない。ディー・セキュアさせれば、夢主が回復するかもしれない。それにはお前の協力が必要なんだ。ここに居てもらわなければ困るんだよ」
「……」
「お前の為でもあるんだぞロールシャッハ!研究次第では、お前含めディスクに封印されたヒーローを解放する方法が見つかるかもしれない!その可能性をも捨てて、人一人見殺しにする気か!?」
「……」
「……」
2人はお互いに目を逸らさず、しばしの間睨み合っていた。
「……」
「……」
夢主の荒い息遣いだけが辺りに響く。
「分かった」
小さな返事と共に、ロールシャッハの肩がほんの少しだけ下がる。
「ここに残り、貴様等アベンジャーズに協力しよう」
今度は屁理屈等ではない。やっと出させた了承の言葉に、最初に声を上げたのはアキラとアイアンマンだった。
「やったぁ!」
「わかってくれたのか…!」
「但し。ディスクから解放される、その時までだ」
「ロールシャッハ…!」
じっと聞いていたナイトオウルも嬉しくてたまらない様子。
そんな相棒の前をロールシャッハは素通りし、未だに苦しんでいるディスク所有者の目の前で立ち止まった。
「分かったから、こいつをさっさとどうにかしろ」
「ああ。夢主、ディー・セキュアだ」
アイアンマンが再度D・セキュアするよう夢主を促す。額に脂汗をにじませる彼女はやっとのことで顔を上げた。
「い…良い、んで」
「御託はディスクの中から聞く。早く指示に従え」
「……はい」
震える手で渋々ディスクを掲げ、ロールシャッハを封印する。
不思議と、その時見下ろしてきていた顔が怒っている模様には見えなかった。
我々の説得がこの頑固な男に通じたのだと一同は勘違いした。
「夢主と言ったな。来い」
子供達は最初、ロールシャッハがどういうつもりでそんなことを言ったのか理解できなかった。
「え?」
「来いって…?」
ジェシカの肩に乗るワスプが身を乗り出さんばかりに咎める。
「まさか、この子をアメリカに連れて行く気!?」
「その通りだが」
「無理に決まっているでしょ。夢主には夢主の、日本での生活があるのよ!」
「パートナーなら、相手を思い遣り離れ離れにならないのだろう?」
「…!」
アベンジャーズの意図するところとは全く違うが、ロールシャッハは彼等から言われた言葉には従っている。そんな屁理屈にアイアンマンは軽く失笑した。
「全く、何を言い出すかと思えば、お前さんの大得意な冗談か。夢主、本気にすることは……夢主?」
夢主はアキラ達に向かって先程よりも深く長く頭を下げ、一言も喋らずに背を向けて歩き出す。
「おいおいっ、待て夢主、君も冗談が過ぎるぞ!まずは冷静に考えてだな…!」
戸惑う様子は一欠片も無く、歩みは止まらない。
「そんな…どうしてそこまで…」
「行っちゃうのかよ!?夢主!」
「一緒に戦うって言ったじゃない!」
ジェシカの呼び掛けにも夢主は無視を通す。が、突然、声も無くその場で屈み込んだ。
アーチーに片足を乗せていたロールシャッハは顔だけ振り向き、肩越しに夢主をチラ見した。
「ちょっと……いや、だいじょ、ぶ…大丈夫です」
そう言いつつも、立ち上がるどころかアスファルトに両手を付き腰を下ろしてしまった。
うずくまる夢主の元へ子供達が駆け寄る。その体は微かに震え、額には汗がにじみ出ていた。
「どうした夢主!?」
「む、無理しちゃダメだよ!」
「そうよ!さっきだってフラフラだったじゃない!」
「……」
子供達が必死になって声をかける一方で、トニー・スタークは顎に手を当て、全員に聞こえる声量で呟いた。
「もしかすると、夢主は無限にディー・スマッシュできないのかもしれない」
「こんな時に何だよトニー」
「夢主もリミテッド・バイオコードを持ってるってこと?」
アキラとペッパーだけでなく、全員が発明者の考えに耳を傾ける。
「いや、聞いた話からすると、それは無いだろう。だがタイムリミットが無い分、ディー・スマッシュしていられる時間は……彼女の何かに依存している可能性がある。例えば」
彼は口を動かしながら、2つ同時にアニマル属性のディスクをD・スマッシュし苦しんでいた女を思い出した。
「体力とか」
「体力…?」
アキラはまだピンと来ていないが、ジェシカやクリスは除々に血相を変えていく。
「待って……ロールシャッハがあいつ等の船から脱走して、私達に会いに来て、夢主を助け出すまで、ずっとディー・スマッシュしたままだったわよね?」
「だとすると、大分消耗してるんじゃねぇのか…!?」
「ってことはスタークさん。こうしている今も、夢主ちゃんの体にその負荷がかかっているってことですか?」
「落ち着け、エド」
自分のことでもないのに涙目でうろたえるエドをハルクが低い声でなだめる。
「なあトニー、それ本当なのかよ?夢主は大丈夫なのか!?」
「わからない。そもそも、俺の仮説が正しいかどうかもな。だが、このまま放っておくと危険なのは確かだ」
「じゃあ早く病院に…!」
「勿論連れて行くが、普通の病院で普通の処置をしたところで回復するとは限らない」
「マジかよ…」
アイアンマンは顔を上げ、遠くで棒立ちしている男を鋭く睨みつけ叫んだ。
「ロールシャッハ!!俺がお前のディスクを研究したいのは、決して興味本位や奴等みたいに悪用する為ではない!悪を倒す為、世界の平和の為、そして夢主の為でもあるんだ!」
ロールシャッハは真っ直ぐ向き直し、小さな男の主張を黙って聞き続ける。
「夢主は今、悪のせいで苦しんでいる!せっかく救い出した彼女が死んでも良いのか!?」
「死ぬ!?え?死…?死ぬのは、嫌っ…!」
その彼女は割と元気そうな返しをしてみせるも、全身の力は徐々に抜け目は霞んでいく。
「このディスクを研究すれば、夢主を助ける方法がわかるかもしれない。ディー・セキュアさせれば、夢主が回復するかもしれない。それにはお前の協力が必要なんだ。ここに居てもらわなければ困るんだよ」
「……」
「お前の為でもあるんだぞロールシャッハ!研究次第では、お前含めディスクに封印されたヒーローを解放する方法が見つかるかもしれない!その可能性をも捨てて、人一人見殺しにする気か!?」
「……」
「……」
2人はお互いに目を逸らさず、しばしの間睨み合っていた。
「……」
「……」
夢主の荒い息遣いだけが辺りに響く。
「分かった」
小さな返事と共に、ロールシャッハの肩がほんの少しだけ下がる。
「ここに残り、貴様等アベンジャーズに協力しよう」
今度は屁理屈等ではない。やっと出させた了承の言葉に、最初に声を上げたのはアキラとアイアンマンだった。
「やったぁ!」
「わかってくれたのか…!」
「但し。ディスクから解放される、その時までだ」
「ロールシャッハ…!」
じっと聞いていたナイトオウルも嬉しくてたまらない様子。
そんな相棒の前をロールシャッハは素通りし、未だに苦しんでいるディスク所有者の目の前で立ち止まった。
「分かったから、こいつをさっさとどうにかしろ」
「ああ。夢主、ディー・セキュアだ」
アイアンマンが再度D・セキュアするよう夢主を促す。額に脂汗をにじませる彼女はやっとのことで顔を上げた。
「い…良い、んで」
「御託はディスクの中から聞く。早く指示に従え」
「……はい」
震える手で渋々ディスクを掲げ、ロールシャッハを封印する。
不思議と、その時見下ろしてきていた顔が怒っている模様には見えなかった。