２人は散らかった貨物や瓦礫の間からデッキ中央の様子を覗く。

意外にも、そこで勇敢に戦っていたのはウォッチメンのナイトオウル。ではなく、かの有名なアベンジャーズ。そのメンバーの内の２人だった。

夢主の隣でしゃがむロールシャッハは、自分のコートの襟を掴み小声で二言三言呼びかける。すると、ヴィランの頭上を飛び回っているアイアンマンがやや楽しそうに応答した。

「お、ナイスタイミングだ！俺も丁度来たところでさ。今どこ、おおっと！リパルサー！」

彼はモードックの攻撃を寸前で避け、手の平からビームを放った。

「よっしゃあ！あとはロールシャッハ達をここまで連れて来るだけだ！」

通信が繋がっているジェット機内でアキラが喜びの声を上げる。

「ワスプスティング！そうしたいのは山々なんだけど…！」

依然、空飛ぶ遠距離攻撃型ヒーロー２人から敵陣への牽制は一方的だ。だが劣勢ではないものの、今来たばかりの２人に目を向ける余裕までは無いらしい。ヒーロー側はさっさと目的を果たしたいところだが、今攻撃の手を止めるとヴィランや悪党の動きを封じきれなくなってしまう。特に、悪党４人には技を直撃させないよう注意を払い続ける必要も彼等にはある。

「悪いロールシャッハ。すぐ片付けるから、もう少しだけ待っていてくれ！…ん？…いや大丈夫だ心配するな！ソーはまだ待機だ、任せとけって！アキラ！いつでも隠しコマンドを入力できるよう準備しておけ！」
「そこから動かないでって言ってるでしょ！？ワスプスティング！」

正義のヒーローはかなり忙しそうだ。

ロールシャッハは先程受けた傷が響いてきているのか、わずかだが助けに現れた時より動きが鈍い。

「合図するまで、じっとしていろ」
「はい…！」

幸い、誰にも感付かれていない。ここは下手に動かず、休憩しながらチャンスを待つこととなった。