第五部:都合の良い男
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「止まれ」
その低い声にロールシャッハは踵を返し、庇うように夢主の前に腕を出した。
2人は、半分蛇の姿をしたヴィランに捕まりかけたあの場所とほぼ同じ位置に立っている。今回は真横からではなく、背後から呼び止められた。
「貴様のことだから絶対に戻るとは思っていたが、お仲間…しかもあのアベンジャーズを引き連れて来るとは……どういう風の吹き回しだ?」
仮面集団の内、デッキに姿を見せなかった5人目が余裕の表情で尋ねてくる。その手には、シンプルな鞘に収まった細長い武器。
「さすがに独りきりは心細くなったか?」
「下がっていろ」
相手との距離はやや開いてはいるものの、ここは何の障害物も無い一直線の外通路。長ドスから子供を守るためには、十分に距離を取って誰かが壁になるしかない。ロールシャッハは質問を無視し、後ろで怯える子供をもう数歩遠ざけた。
「フン、まあ良い。おいガキ!こいつが何か…わかるだろ?」
突然のご指名に肩をビクつかせた夢主の目に映ったものは、数センチだけむき出しにされた刀身だった。
「お前のヒーロー様を死なせたくなければ、今すぐディー・セキュアしろ」
派手な赤いマスクの奥で冷ややかな目をした男が言い放った。暖かい太陽の光が彼の持つドスの刀身に反射する。
「わかっちゃいると思うが、これは脅しじゃねぇ、交渉だ。冷静に考えてみろ。今はお互いに不利な状況なんだぜ?」
「絶対にするな」
肝心のヒーロー様は最初から聞く耳を持たない態度を一貫させる。
「で、でも…あれって、刀…」
「何があっても、だ」
「……」
「良いな」
肯定させるような口調で釘を刺されてしまった。それもその筈、D・セキュアして夢主だけになってしまえば、刀など無くとも大人は子供をあっという間に捕まえてしまうだろう。
「決裂か。それも良いだろう。むしろ、それが良い」
好戦的な男は口の端を吊り上げつつ抜刀し、片手で持った愛刀の切っ先をロールシャッハへ向けた。
「来い。この間のようには行かねぇぞ」
「…そうだな」
潮風の音を待たずして、ヒーローは目の前の悪党に向かって真っ直ぐ突進していった。
「ハッ、馬鹿が!」
刀は容赦無く振り下ろされ、ロールシャッハの左肩に直撃する。コミックと同じくボタンが外れたままの肩当ては名目上の役割を果たさずに、その半分が呆気なく切り落とされた。背後からでも、刀身がロールシャッハの肌に食い込んでいることが見て取れる。
にも関わらず、突進が止まらない。
「何っ!?」
肉を切らす原始的な戦法が予想外だったのか、刃物に少しはひるむだろうと高を括っていたのか。ロールシャッハを懲りずにあなどっていたジュウベエは慌てて鞘を捨て、急いで両手で柄を持ち直し力を込める。
夢主の想像より遥かに浅い傷で済んだが、刀はロールシャッハの左肩をじわじわと赤黒く染めていく。が、その代わりに敵は武器を押さえられるわ馬乗りされるわで、動きを完全に封じられた。長い得物を振るうには対象との距離が近過ぎるのだ。
夢主はヒーローの勝ちを確信した。そして、悪党の死を直感した。容赦無い彼のことだ、殺すに決まっている。
「…嫌っ…!」
子供は小さく叫んだ。
その低い声にロールシャッハは踵を返し、庇うように夢主の前に腕を出した。
2人は、半分蛇の姿をしたヴィランに捕まりかけたあの場所とほぼ同じ位置に立っている。今回は真横からではなく、背後から呼び止められた。
「貴様のことだから絶対に戻るとは思っていたが、お仲間…しかもあのアベンジャーズを引き連れて来るとは……どういう風の吹き回しだ?」
仮面集団の内、デッキに姿を見せなかった5人目が余裕の表情で尋ねてくる。その手には、シンプルな鞘に収まった細長い武器。
「さすがに独りきりは心細くなったか?」
「下がっていろ」
相手との距離はやや開いてはいるものの、ここは何の障害物も無い一直線の外通路。長ドスから子供を守るためには、十分に距離を取って誰かが壁になるしかない。ロールシャッハは質問を無視し、後ろで怯える子供をもう数歩遠ざけた。
「フン、まあ良い。おいガキ!こいつが何か…わかるだろ?」
突然のご指名に肩をビクつかせた夢主の目に映ったものは、数センチだけむき出しにされた刀身だった。
「お前のヒーロー様を死なせたくなければ、今すぐディー・セキュアしろ」
派手な赤いマスクの奥で冷ややかな目をした男が言い放った。暖かい太陽の光が彼の持つドスの刀身に反射する。
「わかっちゃいると思うが、これは脅しじゃねぇ、交渉だ。冷静に考えてみろ。今はお互いに不利な状況なんだぜ?」
「絶対にするな」
肝心のヒーロー様は最初から聞く耳を持たない態度を一貫させる。
「で、でも…あれって、刀…」
「何があっても、だ」
「……」
「良いな」
肯定させるような口調で釘を刺されてしまった。それもその筈、D・セキュアして夢主だけになってしまえば、刀など無くとも大人は子供をあっという間に捕まえてしまうだろう。
「決裂か。それも良いだろう。むしろ、それが良い」
好戦的な男は口の端を吊り上げつつ抜刀し、片手で持った愛刀の切っ先をロールシャッハへ向けた。
「来い。この間のようには行かねぇぞ」
「…そうだな」
潮風の音を待たずして、ヒーローは目の前の悪党に向かって真っ直ぐ突進していった。
「ハッ、馬鹿が!」
刀は容赦無く振り下ろされ、ロールシャッハの左肩に直撃する。コミックと同じくボタンが外れたままの肩当ては名目上の役割を果たさずに、その半分が呆気なく切り落とされた。背後からでも、刀身がロールシャッハの肌に食い込んでいることが見て取れる。
にも関わらず、突進が止まらない。
「何っ!?」
肉を切らす原始的な戦法が予想外だったのか、刃物に少しはひるむだろうと高を括っていたのか。ロールシャッハを懲りずにあなどっていたジュウベエは慌てて鞘を捨て、急いで両手で柄を持ち直し力を込める。
夢主の想像より遥かに浅い傷で済んだが、刀はロールシャッハの左肩をじわじわと赤黒く染めていく。が、その代わりに敵は武器を押さえられるわ馬乗りされるわで、動きを完全に封じられた。長い得物を振るうには対象との距離が近過ぎるのだ。
夢主はヒーローの勝ちを確信した。そして、悪党の死を直感した。容赦無い彼のことだ、殺すに決まっている。
「…嫌っ…!」
子供は小さく叫んだ。