第五部:都合の良い男
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ロールシャッハは己の記憶と感覚を頼りに、かつて逃げてきた道を逆走していた。敵に鉢合わせること無く船内の廊下を駆け抜けていく。当初の作戦通り、ヴィランは全員デッキで足止めを食らっているようだ。
懐かしの実験室の前に辿り着いたが、あの娘はもう少し奥の方に居る気がする。
確かに気配を近くで感じ取れるのだが、どの部屋に閉じ込められているのか、どの扉を開ければ会えるのか、具体的なことまでは分からなかった。
「…おい!…くそっ!」
だが、もう目と鼻の先に居る筈。虱潰しに辺りの扉を一つ一つ肩で打ち破っていく。
「……っ、どこだ!?」
ヒーローはあの子供を呼ぼうとしたが、知りもしない名前を声に出すことなんて勿論できない。顔はしっかり浮かぶのに、呼ぶ術(すべ)が無い。
自分を一度逃がしてくれた子供の名前すら把握していない事実を、ロールシャッハは今更思い知らされた。
「返事をしろ!!」
返事は返ってこないが、気配があるから生きている筈。生きているから、気配がある筈。
彼はいつに無く焦っていた。
作戦共有時に告げられた、船員の何者かによって既に彼女が“処分且つ処理”されている可能性。もしくは、されようとしている可能性。それを捨てきれないためだ。
認めたくはないが、ディスクを扱える悪党5人の内、4人しかデッキに居なかった。
もし、残りの1人が事態を把握し動いていたら。秘密裏に進めている研究の実験体を奪われるくらいならば、いっそ証拠を隠滅してしまおうと行動していたら。
最悪、手ぶらで帰ることになるかもしれない。
「くっ…!」
何故かだんだん力が抜けていく膝に鞭打ち、捜索を続ける。
「どこだ!?」
目的の人物を捜しながら、ロールシャッハは丁度嫌なことを思い出してしまっていた。
彼は、自分をモデルにしたコミックに全く目を通していない訳ではなかった。別に漫画家や大衆のロールシャッハに対するイメージなんかに興味は無いし、またそのイメージ通りに振る舞おうなどとは一切考えずに、ただ単純に、知るために読んだ。
彼の脳裏から離れないのは、自分の分身が意志を突き通したラストシーンでも、容疑をかけられ拘束される屈辱的なシーンでもなく、小さな女の子の命と身体を救えなかった、あのシーン。
「ロールシャッハさん!?」
久し振りに聞く声が嫌な予感を一気に吹き飛ばしてくれた。
「ロールシャッハさん、ですか…?」
やっと特定できたドアにも鍵がかけらているため、中に居る人物に下がっているよう指示してから肩で打ち破った。
「……」
「ほっ……ほんと、に…!」
幸い、彼女は拘束器具無し且つ五体満足で、今部屋の隅で立ち上がったところだった。
「ロールシャッハさぁん!!」
夢主は思わず抱きつこうと駆け寄るが、女にベタベタ触れられるのが嫌いであろう彼の性格を寸前で思い出し、足を止めた。
「あっ…と、助けに来てくれたんですね!」
抱きつきたい欲求を抑え、両腕を後ろに回す。やや腰を下げて構えていたヒーローも姿勢を正し、ポケットに手を入れる。
「礼は後だ。怪我をする心配が無くなってからにしろ」
「はい…!」
そうだ。彼の言う通り、もたもたしている場合ではない。
今度こそ、逃げ出さなければ。
懐かしの実験室の前に辿り着いたが、あの娘はもう少し奥の方に居る気がする。
確かに気配を近くで感じ取れるのだが、どの部屋に閉じ込められているのか、どの扉を開ければ会えるのか、具体的なことまでは分からなかった。
「…おい!…くそっ!」
だが、もう目と鼻の先に居る筈。虱潰しに辺りの扉を一つ一つ肩で打ち破っていく。
「……っ、どこだ!?」
ヒーローはあの子供を呼ぼうとしたが、知りもしない名前を声に出すことなんて勿論できない。顔はしっかり浮かぶのに、呼ぶ術(すべ)が無い。
自分を一度逃がしてくれた子供の名前すら把握していない事実を、ロールシャッハは今更思い知らされた。
「返事をしろ!!」
返事は返ってこないが、気配があるから生きている筈。生きているから、気配がある筈。
彼はいつに無く焦っていた。
作戦共有時に告げられた、船員の何者かによって既に彼女が“処分且つ処理”されている可能性。もしくは、されようとしている可能性。それを捨てきれないためだ。
認めたくはないが、ディスクを扱える悪党5人の内、4人しかデッキに居なかった。
もし、残りの1人が事態を把握し動いていたら。秘密裏に進めている研究の実験体を奪われるくらいならば、いっそ証拠を隠滅してしまおうと行動していたら。
最悪、手ぶらで帰ることになるかもしれない。
「くっ…!」
何故かだんだん力が抜けていく膝に鞭打ち、捜索を続ける。
「どこだ!?」
目的の人物を捜しながら、ロールシャッハは丁度嫌なことを思い出してしまっていた。
彼は、自分をモデルにしたコミックに全く目を通していない訳ではなかった。別に漫画家や大衆のロールシャッハに対するイメージなんかに興味は無いし、またそのイメージ通りに振る舞おうなどとは一切考えずに、ただ単純に、知るために読んだ。
彼の脳裏から離れないのは、自分の分身が意志を突き通したラストシーンでも、容疑をかけられ拘束される屈辱的なシーンでもなく、小さな女の子の命と身体を救えなかった、あのシーン。
「ロールシャッハさん!?」
久し振りに聞く声が嫌な予感を一気に吹き飛ばしてくれた。
「ロールシャッハさん、ですか…?」
やっと特定できたドアにも鍵がかけらているため、中に居る人物に下がっているよう指示してから肩で打ち破った。
「……」
「ほっ……ほんと、に…!」
幸い、彼女は拘束器具無し且つ五体満足で、今部屋の隅で立ち上がったところだった。
「ロールシャッハさぁん!!」
夢主は思わず抱きつこうと駆け寄るが、女にベタベタ触れられるのが嫌いであろう彼の性格を寸前で思い出し、足を止めた。
「あっ…と、助けに来てくれたんですね!」
抱きつきたい欲求を抑え、両腕を後ろに回す。やや腰を下げて構えていたヒーローも姿勢を正し、ポケットに手を入れる。
「礼は後だ。怪我をする心配が無くなってからにしろ」
「はい…!」
そうだ。彼の言う通り、もたもたしている場合ではない。
今度こそ、逃げ出さなければ。