２人は今、英語でスタークと描かれた黄色いジェット機に向かって飛んでいる。

「アイアンマンさんっあの、ありがとうございます！」

話しかけられた超有名ヒーローはお互い喋り易いように飛行速度を少し緩めてからフェイスカバーを開け、その端正な顔を見せた。

「ん。どういたしまして！っと、お嬢さん、一つ聞いても良いか？」
「……はい」

夢主は体を強ばらせた。

何故君がディスクを扱えるのか。実験体と聞いたが、どんなことをされたのか。奴等の仲間なのか。アベンジャーズに対し敵意はあるのか。

そんな堅い質問が来るだろうと身構えていた。

「君のお名前は？」
「は？……名前…？」

意外な問いに気が抜けてしまい、思わず敬語を忘れる。

「ここだけの話、ロールシャッハの持ってきた情報があまりにも少なくてなー、実は君の特定にかなり手こずっているんだ」

先程まで大ピンチを迎えていた筈のヒーローは呑気に愚痴をこぼした。

「夢主、です…」
「初めまして夢主。私の名前は…って、言うまでも無いか！」

トニー・スタークは緊張している子供に向かって、年甲斐もなくニカッと笑ってみせた。

「もう心配いらない。日本へ帰ろう、夢主」
「…はい！」

優しく話しかけてくれるヒーローに夢主は元気に答えた。

「おっ、間もなく到着のお時間です。お客様」

前方のスタークジェットのハッチが開き、鎧を着たヒーローが２人を出迎えた。