番外編??+6:都合の良い彼女 作成途中
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「なんで俺の姿が見えるんだぁ!?って顔してんな。ティムが改造したコレがあるから全部お見通しだとよ」
上半身裸にジャケットの男は自分のベネチアンマクスを得意気に指差した。セレブのオーラか威圧感、もしくは異物感か、現地民に一定の距離を置かれている。
「ねーあの人なんで独りで喋ってんのー?空き地になんかあるのー?」
「シッ、指差さないの!帰るわよ!」
子連れを除いた野次馬に囲まれても、ジョエルはお構いなしに続ける。
「勿論、俺のマスクだけじゃねえぜ」
「……」
ジュウベエはシールド装置の機能を一旦諦めた。
小じんまりとした建設予定地に、突如として姿を現した派手な仮面の男。路上パフォーマンスかイベントの類いかと勘違いされ、2人はまばらな拍手に包まれる。
「……ならば次の質問だ。何故こんな所に居る。正直に言え」
「まーまーそうカッカすんなって。感動の再会じゃねぇか」
「止まれ」
クリスと夢主はというと、ぎゅうぎゅうに連なってハンガー掛けされたカットソーの影から表通りを覗いていた。
「ここからジュウベエさんが見えてるってことは、スイッチ切っちゃったの?」
「あいつ、ロキの手下の1人だった…!」
「本当だ…なんだか、険悪な感じだね」
「片方がな」
とりあえず見つからないよう声量を抑え、様子を見続ける。
「あん時は俺等も必死でさ~、お前を差し出すなんてマジな訳ねーじゃん」
「そうよ。私達は仲間じゃない」
女性の声はジョエルの隣ではなく、2人の真後ろから発せられた。
「なっ!?」
「痛っ!」
気付いたときにはもう遅く、クリスと夢主は同時に手を捻り上げられる。ティムが夢主を、マニーノがクリスをそれぞれ背後から拘束し、膝を突かせた。
「さあ、例の支部へ向かうとしよう。ジュウベエ」
仲間全員との再会を果たした男は、眉間の皺をより一層深めた。
「……何のつもりだ」
「私達は貴方に協力すると言っているのですよ」
「こいつ等土産に持ってく代わりにさ、お前の安全を保証してもらおうって作戦だよ。もう子守りなんて回りくどいことしなくて済むんだぜ?」
他人の揉め事に興味を示すも自身がトラブルに巻き込まれてはいけないと、ギャラリーは店前から離れだした。店内の客もそそくさと出ていってしまう。
「随分と手際が良いな。協力者でも見つけたか?」
「己で成果物の管理も出来ないようでは、開発者の名折れだとは思わんか?」
ティムは空いている手で胸ポケットから小型モニターを取り出し見せつけた。
「それを最初からご用意いただければ、ジュウベエにもっと早く追い付けましたけれど……おっと、無駄ですよ」
暴れようとするクリスをマニーノは逃さない。夢主はというと、不利な体勢と力の差を幾度か経験しているので無理には動かないでいる。
「数時間後には晴れて実験体に逆戻りだな。第一号にナンバリングされるとは限らないが。どんな気分かね?」
「じ、実験……」
作戦成功を確信したティムは本人だけでなく周りの者へ言い聞かせるように話し始める。
「バイオコードを組み込まれロールシャッハをディー・スマッシュするのとは訳が違う。ファイト属性のディスクを扱えた人間の定義を、前知識の無い組織が一から検査するのだ。脳味噌から指の先まで、体の隅々を調べ尽くされるだろう。何せ検体の数が限られているからな」
「え…!?」
増長させる必要のない不安を煽っていく。客同士の異様なやり取りを見ていた店員は、カウンターに隠れて一般の警察へ通報し始めた。
「漠然とした例えだが、宇宙人の解体。最終的に行き着く実験はあれに近いだろう」
「うそ…!」
「何だと……ふざけんな!」
「私ではなく黒幕に訴えると良い」
これから自分に降り注ぐ災難を元科学者の言葉通りに想像し、すっかり血の気が引いてしまった。
「人間…私、人間です!人間が人間にそんなこと…!」
「だからこそA.I.M.は正当な組織ではないのだろう?」
敵の恐ろしさをようやく思い知った。と同時に冷静さを失い、夢主は無意味な抵抗に出る。無論、拘束は解けない。
「あ……や……私、私っ、ただ…!」
ただ、帰りたい。ただみんなに会いたい。この数日間はヴィラン組織から逃げるためだけの生活で息が詰まっていた。もう安全そうだしそろそろ帰っても良いだろう。
そんな考えが甘かった。全部、甘かった。
「バカだ…私…!」
認識を改めたところで、もう手遅れだが。
まだ捕まる訳にはいかないのに。やり残したことがあるのに。
「果たして、五体満足のまま再び日本の地を踏めるかどうか…」
「いっ…いやっ……まだ、私…!」
涙がにじみ出る。追い詰められていく夢主の様子に、クリスともう1人が顔色を変えた。
「夢主!クソッ、放しやがれ!」
クリスを拘束している悪党は聞く耳を持たずほくそ笑む。
「フフ、言い過ぎですよティム」
「心外だな、せめてもの手向けだ。実際これくらいしかすることが無いのだ。我々のような、部外者には。さあ、十分理解しただろうジュウベエ、今こそ行動を起こす時だ」
悪党達は、まだ諦めていない子供と腰の抜けた子供を無理矢理立ち上がらせる。
「あらあら、前私達に捕まってた時はヘッチャラだったのに。それとも、あの時は強がってただけだったのかしら?」
「んなプルプル震えちゃってよぉ。仕方ねぇだろ?俺達が生きてくための生贄なんだよお前等は」
「この間は…」
鼻頭を真っ赤にした夢主は、面白がって顔を除き込んでくる男へ訴える。
「この間は……な、仲良くやろうって…」
「はぁ?」
「ファミレス、で…」
話が見えず、ジョエルはきょとん顔のまま。夢主はしゃくり上げそうになる喉を一生懸命堪え、極めて薄そうな望みに懸ける。
「夜、一緒に食事…奢っていただいたとき……お互いって…仲良く、って…言ってくれた、のは……」
ジョエルは片手で顔をパシッと覆い、無力な子供を笑い飛ばす。
「ダッハハハハ!あれのことか!悪ぃ悪ぃ、まさか真に受けちまうとは思ってもみなかったぜ。お前大事なこと忘れてねぇか?」
再び目と目を近付けて告げられる。
「俺等は、悪党だ」
「じゃあ、あの時も、騙してたんですか…!?」
「イイこと教えてやる。状況は日々変わってくんだよ。昨日の友は今日の敵。残念だったな!」
絶望の淵に立たされ、少女は何も発することができなくなってしまった。
「でもぜってー変わんねぇものもある。それはパワーだ。ジュウベエがよく言ってる、この世は力が全てってヤツさ。お前達は弱いから今こんなことになってる。だろ?ジュウベエ」
返事の代わりに、店頭に出来ていた人だかりのざわめきが波を打つように大きくなった。最早悲鳴に近い。バタバタと立ち去る足音もする。
異変を感じて振り向くと、長年の仲間はジョエルの真後ろで抜刀していた。
「そいつを放せ。そっちのガキもだ」
切っ先は大人達へ向けられている。
「は!?おっ、おいおい、冗談止せってジュウベエ!」
「私達に刃を向けるのですか!?」
「あんた、今自分が何やってんのか分かってんの!?」
「その言葉、一度保身に走っておいてよく言えたものだな」
ジュウベエが長ドスを真っ直ぐ構え直すと反論はいとも簡単に止んだ。
「仲間割れか?」
「裏切りだ」
隙だらけとなった拘束の手から逃れ、クリスは同じく解放された夢主の肩を支える。ジュウベエは4人をじりじりと退かせ、2人の前に出た。
「今もあの時も、こいつ等4人は俺を餌にしてA.I.M.から見逃してもらうつもりで」
「我々はあの時、大勢に銃を突きつけられた中で本当のことを答えただけだろう。ファイト属性のディスクを扱えたのは、世界でお前とそこの子供だけだと」
「奴等、確認だって言ってたじゃない!私達はそれに頷いただけ!一緒に居たから聞いてたでしょ!?」
「……そうだな」
「そっそうよ、驚かせないでちょうだい!」
降ろされかけた刀を見て、これといった凶器を持たないメンバーは肩の力を抜く。
「だが」
構え直されたと同時に、ロゼッタ達に再び緊張が走った。
「俺が逃げた後、奴等とどんなやり取りをした?どんな情報を与えた?」
刀の切っ先でティムの手元を指す。
「それは、1台きりか?」
クリスは、目の前の男性が何を疑っているのか気付いた。
「まさか…!」
「……お察しの通り、もうじきA.I.M.がここに押し寄せるわ」
「今後はこの追跡装置がそれの位置を常に指し示す。シールドは諦めろ、ジュウベエ」
「……」
彼は使い物にならなくなった方の装置を元の持ち主の足元へ放る。
「でも、その様子では……また逃げるのでしょう?」
「どうしちまったんだよジュウベエ?ガキ共に情でも湧いちまったのか?父性本能とか?」
「勘違いするな。俺がこの手で直接、奴等へ引き渡すまでだ。分かったら今後一切干渉するな」
彼は2人の子供を背に、転送装置のスイッチを入れた。
上半身裸にジャケットの男は自分のベネチアンマクスを得意気に指差した。セレブのオーラか威圧感、もしくは異物感か、現地民に一定の距離を置かれている。
「ねーあの人なんで独りで喋ってんのー?空き地になんかあるのー?」
「シッ、指差さないの!帰るわよ!」
子連れを除いた野次馬に囲まれても、ジョエルはお構いなしに続ける。
「勿論、俺のマスクだけじゃねえぜ」
「……」
ジュウベエはシールド装置の機能を一旦諦めた。
小じんまりとした建設予定地に、突如として姿を現した派手な仮面の男。路上パフォーマンスかイベントの類いかと勘違いされ、2人はまばらな拍手に包まれる。
「……ならば次の質問だ。何故こんな所に居る。正直に言え」
「まーまーそうカッカすんなって。感動の再会じゃねぇか」
「止まれ」
クリスと夢主はというと、ぎゅうぎゅうに連なってハンガー掛けされたカットソーの影から表通りを覗いていた。
「ここからジュウベエさんが見えてるってことは、スイッチ切っちゃったの?」
「あいつ、ロキの手下の1人だった…!」
「本当だ…なんだか、険悪な感じだね」
「片方がな」
とりあえず見つからないよう声量を抑え、様子を見続ける。
「あん時は俺等も必死でさ~、お前を差し出すなんてマジな訳ねーじゃん」
「そうよ。私達は仲間じゃない」
女性の声はジョエルの隣ではなく、2人の真後ろから発せられた。
「なっ!?」
「痛っ!」
気付いたときにはもう遅く、クリスと夢主は同時に手を捻り上げられる。ティムが夢主を、マニーノがクリスをそれぞれ背後から拘束し、膝を突かせた。
「さあ、例の支部へ向かうとしよう。ジュウベエ」
仲間全員との再会を果たした男は、眉間の皺をより一層深めた。
「……何のつもりだ」
「私達は貴方に協力すると言っているのですよ」
「こいつ等土産に持ってく代わりにさ、お前の安全を保証してもらおうって作戦だよ。もう子守りなんて回りくどいことしなくて済むんだぜ?」
他人の揉め事に興味を示すも自身がトラブルに巻き込まれてはいけないと、ギャラリーは店前から離れだした。店内の客もそそくさと出ていってしまう。
「随分と手際が良いな。協力者でも見つけたか?」
「己で成果物の管理も出来ないようでは、開発者の名折れだとは思わんか?」
ティムは空いている手で胸ポケットから小型モニターを取り出し見せつけた。
「それを最初からご用意いただければ、ジュウベエにもっと早く追い付けましたけれど……おっと、無駄ですよ」
暴れようとするクリスをマニーノは逃さない。夢主はというと、不利な体勢と力の差を幾度か経験しているので無理には動かないでいる。
「数時間後には晴れて実験体に逆戻りだな。第一号にナンバリングされるとは限らないが。どんな気分かね?」
「じ、実験……」
作戦成功を確信したティムは本人だけでなく周りの者へ言い聞かせるように話し始める。
「バイオコードを組み込まれロールシャッハをディー・スマッシュするのとは訳が違う。ファイト属性のディスクを扱えた人間の定義を、前知識の無い組織が一から検査するのだ。脳味噌から指の先まで、体の隅々を調べ尽くされるだろう。何せ検体の数が限られているからな」
「え…!?」
増長させる必要のない不安を煽っていく。客同士の異様なやり取りを見ていた店員は、カウンターに隠れて一般の警察へ通報し始めた。
「漠然とした例えだが、宇宙人の解体。最終的に行き着く実験はあれに近いだろう」
「うそ…!」
「何だと……ふざけんな!」
「私ではなく黒幕に訴えると良い」
これから自分に降り注ぐ災難を元科学者の言葉通りに想像し、すっかり血の気が引いてしまった。
「人間…私、人間です!人間が人間にそんなこと…!」
「だからこそA.I.M.は正当な組織ではないのだろう?」
敵の恐ろしさをようやく思い知った。と同時に冷静さを失い、夢主は無意味な抵抗に出る。無論、拘束は解けない。
「あ……や……私、私っ、ただ…!」
ただ、帰りたい。ただみんなに会いたい。この数日間はヴィラン組織から逃げるためだけの生活で息が詰まっていた。もう安全そうだしそろそろ帰っても良いだろう。
そんな考えが甘かった。全部、甘かった。
「バカだ…私…!」
認識を改めたところで、もう手遅れだが。
まだ捕まる訳にはいかないのに。やり残したことがあるのに。
「果たして、五体満足のまま再び日本の地を踏めるかどうか…」
「いっ…いやっ……まだ、私…!」
涙がにじみ出る。追い詰められていく夢主の様子に、クリスともう1人が顔色を変えた。
「夢主!クソッ、放しやがれ!」
クリスを拘束している悪党は聞く耳を持たずほくそ笑む。
「フフ、言い過ぎですよティム」
「心外だな、せめてもの手向けだ。実際これくらいしかすることが無いのだ。我々のような、部外者には。さあ、十分理解しただろうジュウベエ、今こそ行動を起こす時だ」
悪党達は、まだ諦めていない子供と腰の抜けた子供を無理矢理立ち上がらせる。
「あらあら、前私達に捕まってた時はヘッチャラだったのに。それとも、あの時は強がってただけだったのかしら?」
「んなプルプル震えちゃってよぉ。仕方ねぇだろ?俺達が生きてくための生贄なんだよお前等は」
「この間は…」
鼻頭を真っ赤にした夢主は、面白がって顔を除き込んでくる男へ訴える。
「この間は……な、仲良くやろうって…」
「はぁ?」
「ファミレス、で…」
話が見えず、ジョエルはきょとん顔のまま。夢主はしゃくり上げそうになる喉を一生懸命堪え、極めて薄そうな望みに懸ける。
「夜、一緒に食事…奢っていただいたとき……お互いって…仲良く、って…言ってくれた、のは……」
ジョエルは片手で顔をパシッと覆い、無力な子供を笑い飛ばす。
「ダッハハハハ!あれのことか!悪ぃ悪ぃ、まさか真に受けちまうとは思ってもみなかったぜ。お前大事なこと忘れてねぇか?」
再び目と目を近付けて告げられる。
「俺等は、悪党だ」
「じゃあ、あの時も、騙してたんですか…!?」
「イイこと教えてやる。状況は日々変わってくんだよ。昨日の友は今日の敵。残念だったな!」
絶望の淵に立たされ、少女は何も発することができなくなってしまった。
「でもぜってー変わんねぇものもある。それはパワーだ。ジュウベエがよく言ってる、この世は力が全てってヤツさ。お前達は弱いから今こんなことになってる。だろ?ジュウベエ」
返事の代わりに、店頭に出来ていた人だかりのざわめきが波を打つように大きくなった。最早悲鳴に近い。バタバタと立ち去る足音もする。
異変を感じて振り向くと、長年の仲間はジョエルの真後ろで抜刀していた。
「そいつを放せ。そっちのガキもだ」
切っ先は大人達へ向けられている。
「は!?おっ、おいおい、冗談止せってジュウベエ!」
「私達に刃を向けるのですか!?」
「あんた、今自分が何やってんのか分かってんの!?」
「その言葉、一度保身に走っておいてよく言えたものだな」
ジュウベエが長ドスを真っ直ぐ構え直すと反論はいとも簡単に止んだ。
「仲間割れか?」
「裏切りだ」
隙だらけとなった拘束の手から逃れ、クリスは同じく解放された夢主の肩を支える。ジュウベエは4人をじりじりと退かせ、2人の前に出た。
「今もあの時も、こいつ等4人は俺を餌にしてA.I.M.から見逃してもらうつもりで」
「我々はあの時、大勢に銃を突きつけられた中で本当のことを答えただけだろう。ファイト属性のディスクを扱えたのは、世界でお前とそこの子供だけだと」
「奴等、確認だって言ってたじゃない!私達はそれに頷いただけ!一緒に居たから聞いてたでしょ!?」
「……そうだな」
「そっそうよ、驚かせないでちょうだい!」
降ろされかけた刀を見て、これといった凶器を持たないメンバーは肩の力を抜く。
「だが」
構え直されたと同時に、ロゼッタ達に再び緊張が走った。
「俺が逃げた後、奴等とどんなやり取りをした?どんな情報を与えた?」
刀の切っ先でティムの手元を指す。
「それは、1台きりか?」
クリスは、目の前の男性が何を疑っているのか気付いた。
「まさか…!」
「……お察しの通り、もうじきA.I.M.がここに押し寄せるわ」
「今後はこの追跡装置がそれの位置を常に指し示す。シールドは諦めろ、ジュウベエ」
「……」
彼は使い物にならなくなった方の装置を元の持ち主の足元へ放る。
「でも、その様子では……また逃げるのでしょう?」
「どうしちまったんだよジュウベエ?ガキ共に情でも湧いちまったのか?父性本能とか?」
「勘違いするな。俺がこの手で直接、奴等へ引き渡すまでだ。分かったら今後一切干渉するな」
彼は2人の子供を背に、転送装置のスイッチを入れた。