番外編??+5:都合の良い4人
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あんなことがあった次の日、下校中に夢主は見知った白スーツの男性を見かけた。
「あ!」
「どうかしたか?」
「ごめんクリスくん、ちょっとここで待ってて」
「はあ?」
仲間を残し薄紫色のスカーフを頼りに建物の隙間へ入っていくと、ジュウベエは曲がり角の先で正面から待ち構えていた。
「1つ。言い忘れていたことがある」
追いかけてきたのは夢主の方だったが、彼も夢主に用があった。ジュウベエはとある組織について有力な情報を入手しており、それは平穏な生活を脅かされている夢主にとっては喉から手を出してでも掴みたいものだった。
「A.I.M.…ですか?」
「聞いたことくらいはあるだろう」
「ええと……ニュースで、ですかね?」
一応、世間では一般常識とされている名称だ。ウォッチメンヲタクからの期待外れな回答に大人は深くため息を吐いた。
「お前達からしたら、ヒドラとそう変わらない組織だ。ヒドラは知っているな?」
「は、はい…」
念を押す問われ方をされたため考えるよりも先に頷いてしまったが、こちらについては多少なりとも心得ているつもりだ。
かつてヒーローとアキラ達が直接対決した巨大な悪の組織、ヒドラ。レッドスカルの率いる軍団は約1年前に壊滅させたが、ヒドラ自体は世界中に点在しており、こうしている今もどこかで活動し続けている。
「そのヒドラみたいな人達が、ヴィランを私のところへ送ってきている犯人ってことですか?」
「A.I.M.の全員が関与している訳ではない。いくつもある支部の内の1つが、特定のディスクを扱えていた者……特にお前の身柄を狙っている」
「特定の…それってロールシャッハさんのディスクのことでしょうか?でも」
全く面識の無い団体様に、何故自分の情報が筒抜けになっているのか。人前でのディー・スマッシュは極力避けてきたし、日本の防犯カメラはトニー・スタークが管理していた筈だ。
「どうして私だけが扱えてたこと、知られているんだろう?」
「……あの黒い帽子のガキにも伝えておけ」
ジュウベエは夢主の呟きを聞かなかったことにして踵を返す。
「あの!」
悪党の男は次の言葉を聞いてようやく立ち止まった。
「あの後…昨日のあの後、調べてくれたんですか?わざわざ…」
禁句でも口にしてしまったのだろうか、親どころか組長の仇を視線だけで殺めてしまうような目で睨まれる。
「言い忘れていたと言ったのが聞こえなかったか?」
冷静沈着で愛想が無く声も低いため、尊敬するヒーローに少しだけ似ていると思っていたが、怒らせたときの雰囲気がまるで違う。髪の毛を引っ張られ地肌を痛めるだけでは済まなそうだ。
「すみませんっ!」
とにかく反省の意を示して、内ポケットから今にも取り出されそうになっている小刀をどうにか収めていただかなくてはならない。
「……ここから先は自分次第だ。粘るも殺されるも勝手にしろ」
それだけ言い残すと彼はジャケットの内側から空っぽの手を抜き、路地の奥へと進んでいく。
「ありがとうございました!」
大きな背中に向かって深々と頭を下げる。教えてくれた情報を持ち帰り仲間ひいてはアベンジャーズに相談すれば、これから先は何とかなるかもしれない。全て解決できるかもしれない。自分の足の爪先を見ながら、胸に湧いてくる余裕と希望を実感していた。
しかし、本来の用事を思い出した夢主は急に顔を上げる。
「あの!まだ、すみません!まだありました!これ、昨日の…」
またもや立ち止まってくれた親切な大人に、通学カバンの隅に追いやられていた薄い茶封筒を差し出した。
「ご飯は奢っていただきましたけど、窓を割ったのはロールシャッハさんですから。弁償の足しにしてください」
「……」
お小遣いだったそれを喜んでもらえるどころか、再度鬱陶しそうにため息を吐かれてしまう。男性の表情は一段と険しくなった。
「死ぬぞ。そんなことでは」
かつての蛇は、未だ無防備な蛙を冷たい瞳で睨み付ける。
「悪党の俺達が、ただの飲食店に弁償金を素直に払うと思うか?筋を通したいならあの店に直接支払え」
今度こそ可哀想で無知な子供を突き放した。しばらく歩いてから誰にも跡をつけられていないことを確信すると、彼は彼よりもずっとお気楽な仲間と合流する。
「おう居た居た。ジュウベエ、どーするよ」
壁に寄りかかっていたジョエルがポケットから出した手を大きく振る。サングラスだけでは超有名ミュージシャンの派手なオーラを隠し切れていないが、無いよりはマシだ。
「窓ガラス代やっぱ結構高いぜ?あの店ぜってー盛ってきてるって。踏み倒しちまうか?つーかさぁ」
「完済さえすれば店側は昨日のことを一切他言しない条件だ。警察にも、当事者にも。安い買い物だと思え」
結局、彼のせいで夢主の封筒は誰にも受け取ってもらえなかった。
「あ!」
「どうかしたか?」
「ごめんクリスくん、ちょっとここで待ってて」
「はあ?」
仲間を残し薄紫色のスカーフを頼りに建物の隙間へ入っていくと、ジュウベエは曲がり角の先で正面から待ち構えていた。
「1つ。言い忘れていたことがある」
追いかけてきたのは夢主の方だったが、彼も夢主に用があった。ジュウベエはとある組織について有力な情報を入手しており、それは平穏な生活を脅かされている夢主にとっては喉から手を出してでも掴みたいものだった。
「A.I.M.…ですか?」
「聞いたことくらいはあるだろう」
「ええと……ニュースで、ですかね?」
一応、世間では一般常識とされている名称だ。ウォッチメンヲタクからの期待外れな回答に大人は深くため息を吐いた。
「お前達からしたら、ヒドラとそう変わらない組織だ。ヒドラは知っているな?」
「は、はい…」
念を押す問われ方をされたため考えるよりも先に頷いてしまったが、こちらについては多少なりとも心得ているつもりだ。
かつてヒーローとアキラ達が直接対決した巨大な悪の組織、ヒドラ。レッドスカルの率いる軍団は約1年前に壊滅させたが、ヒドラ自体は世界中に点在しており、こうしている今もどこかで活動し続けている。
「そのヒドラみたいな人達が、ヴィランを私のところへ送ってきている犯人ってことですか?」
「A.I.M.の全員が関与している訳ではない。いくつもある支部の内の1つが、特定のディスクを扱えていた者……特にお前の身柄を狙っている」
「特定の…それってロールシャッハさんのディスクのことでしょうか?でも」
全く面識の無い団体様に、何故自分の情報が筒抜けになっているのか。人前でのディー・スマッシュは極力避けてきたし、日本の防犯カメラはトニー・スタークが管理していた筈だ。
「どうして私だけが扱えてたこと、知られているんだろう?」
「……あの黒い帽子のガキにも伝えておけ」
ジュウベエは夢主の呟きを聞かなかったことにして踵を返す。
「あの!」
悪党の男は次の言葉を聞いてようやく立ち止まった。
「あの後…昨日のあの後、調べてくれたんですか?わざわざ…」
禁句でも口にしてしまったのだろうか、親どころか組長の仇を視線だけで殺めてしまうような目で睨まれる。
「言い忘れていたと言ったのが聞こえなかったか?」
冷静沈着で愛想が無く声も低いため、尊敬するヒーローに少しだけ似ていると思っていたが、怒らせたときの雰囲気がまるで違う。髪の毛を引っ張られ地肌を痛めるだけでは済まなそうだ。
「すみませんっ!」
とにかく反省の意を示して、内ポケットから今にも取り出されそうになっている小刀をどうにか収めていただかなくてはならない。
「……ここから先は自分次第だ。粘るも殺されるも勝手にしろ」
それだけ言い残すと彼はジャケットの内側から空っぽの手を抜き、路地の奥へと進んでいく。
「ありがとうございました!」
大きな背中に向かって深々と頭を下げる。教えてくれた情報を持ち帰り仲間ひいてはアベンジャーズに相談すれば、これから先は何とかなるかもしれない。全て解決できるかもしれない。自分の足の爪先を見ながら、胸に湧いてくる余裕と希望を実感していた。
しかし、本来の用事を思い出した夢主は急に顔を上げる。
「あの!まだ、すみません!まだありました!これ、昨日の…」
またもや立ち止まってくれた親切な大人に、通学カバンの隅に追いやられていた薄い茶封筒を差し出した。
「ご飯は奢っていただきましたけど、窓を割ったのはロールシャッハさんですから。弁償の足しにしてください」
「……」
お小遣いだったそれを喜んでもらえるどころか、再度鬱陶しそうにため息を吐かれてしまう。男性の表情は一段と険しくなった。
「死ぬぞ。そんなことでは」
かつての蛇は、未だ無防備な蛙を冷たい瞳で睨み付ける。
「悪党の俺達が、ただの飲食店に弁償金を素直に払うと思うか?筋を通したいならあの店に直接支払え」
今度こそ可哀想で無知な子供を突き放した。しばらく歩いてから誰にも跡をつけられていないことを確信すると、彼は彼よりもずっとお気楽な仲間と合流する。
「おう居た居た。ジュウベエ、どーするよ」
壁に寄りかかっていたジョエルがポケットから出した手を大きく振る。サングラスだけでは超有名ミュージシャンの派手なオーラを隠し切れていないが、無いよりはマシだ。
「窓ガラス代やっぱ結構高いぜ?あの店ぜってー盛ってきてるって。踏み倒しちまうか?つーかさぁ」
「完済さえすれば店側は昨日のことを一切他言しない条件だ。警察にも、当事者にも。安い買い物だと思え」
結局、彼のせいで夢主の封筒は誰にも受け取ってもらえなかった。