夢主が気付いている間もジョエルはメンバーから叱られ続けていた。

「貴男はムードというものが分かっていません！」
「ほんっとノリ軽いわよね」
「そこは別に良いじゃねーか！」
「ノリうんぬん以前に場所と相手の年齢を考えろ」
「ジュウベエの言う通りだ。運が悪ければ捕まってしまうぞ」

ジョエルは仲間からの忠告を鼻で笑い飛ばした。全員を敵に回しても全く響いていない様子。

「ええ？誰がこの俺を捕まえるってんだよ？もしかしてケーサツ？」

直後。すぐ横の窓が盛大に割れ、薄汚れたコートの男が派手に入店してきた。ガラスの破片と共に、シミだらけの縦縞ズボンが小綺麗だったテーブルへ無遠慮に降り立つ。

「俺だ」

ロールシャッハは夢主の隣に座っているジョエルの胸ぐらを掴み、天井から吊された簡素な照明近くまで持ち上げた。

「テ、テメッ！なんでここ、ぎゃっ！」

向かい席へ彼を投げつけることで男性３人の動きも一気に封じる。

そして食卓に土足で乗ったまま、ヒーローは夜遊び中の子供を見下ろす。

「本当に、世話の焼ける」

どす黒い模様の柄とその流動は、何故だか普段と違って見えた。どの形もいまいちパッとしないような、怖ず怖ず動いているような、そんな気がした。

「帰るぞ」

夢主の短い髪を鷲掴みにして、鬼は割れたガラス窓の外へと歩き出す。

「いっ、痛っ！待っ、痛いです！」

獲物も吹き抜けとなった枠をなんとかまたぎ、転びそうになりながら外の植え込みも乗り越えていった。

「何よあれ…あれが女性に対する扱い？相変わらずね！」
「あいつ、俺達より可哀想かもな…」