番外編??+5:都合の良い4人
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少々窮屈になったボックス席は、太陽が沈みきった今ではすっかり相談室と化していた。
「それもまた運命でしょう」
「いや、その男子は単に拾った捨て犬に情が湧いただけだ」
「え。ジュウベエ、お前子犬拾ったことあんの?」
「一般論だ」
ジョエルはその長い脚を通路へ投げ出し、人肌程度まで冷めたステーキを頬張りながら会話に参加する。
「でもサムくん、私に、す…好きって」
「子犬にも、好きなら好きだと言葉にするだろう」
「え。ジュウベエ、お前」
「一般論だ」
しかめっ面の男性は仲間の脳内で繰り広げられている想像を再度否定した。
「試しに付き合っちゃえば?イヤなら別れれば良いでしょ」
「そーだそーだ、堅ぇんだよお前は。ロックじゃねぇな」
「惚れてんのは相手の方なのよね?だったらキープって手もあるわよ」
「かっ、簡単に言わないでくださいそんなこと!」
ひとつ飛ばしで隣に座るロゼッタに言い返すが、彼女はメニュー表から一番高い料理を探すのに夢中で目を合わせてくれない。
「簡単にって、んなチンタラしてっからこうなっちまったんだろ」
「て言うか今もうその状況じゃない。何イイ子ぶってんのよ」
通路側の席の2人から厳しくも最もな意見に夢主はがっくしと俯いた。目の前にまだ残っている1段目だったパンケーキも同じくペシャンコだ。フルーツに囲まれているそれには、焼き立て時のふわふわな食感も甘い香りも感じられない。
「2人とも。彼女には彼女のペースってものがあるんです。さあ、まずは男性と目を合わせる練習から始めましょうか」
美男子はメディア向けの笑顔を見せつけてくるが、同年代の異性のことで悩んでいる夢主には効果が無かった。むしろ見ていなかった。
「そこからかよ」
「マニーノ、アンタが一番失礼なこと言ってるわよ」
「もう良いです!私の話はお終い!お終いです!」
「ええ?もう宜しいのですか?」
「んだよー」
「つまんないの」
積極的に茶々を入れてくれていた3人は大なり小なり残念そうに肩を落とす。
「聞いてくださりありがとうございました!で!それで!皆さん、もう悪さはしていないんですか?」
人と会話している間に声を張る程度の元気を取り戻せたが、肝心な解決の糸口は見つかりそうにない。夢主は自分が面白半分で標的とされているこの流れを無理矢理にでも変えにいった。
「まさか。ニュースキャスターに復帰していたらこんな店来てないわよ」
「ゼロという訳にはいきませんね。元の職には到底戻れませんし」
「なんせ指名手配犯だからな俺達!アッハッハッハッハ!」
「大声で言わないで!ああっ、セレブだったあの頃に戻りたい…!」
ロゼッタ・ライリーはテーブルに肘を突き、ネイルの先までしっかり手入れされている両手で顔を覆った。以前はニュースの女神と称えられ、言わば輝いている女性代表であった彼女。
「そんなに嘆くものじゃありませんよ」
「そうだぜ、ある意味昔より有名人だろ」
ニューヨークの誰もがその名と功績を知っていた。今となっては別の形で、認知度がここ日本でもじわじわと上がっている。5人セットで。
「自信を持ってください、今だってそこそこの生活を送っているではないですか。貴女にしては」
「何よその言い方っ!」
「たくましく美しいと言っているのです」
「お前達、イチャつくなら外でやれ。それが出来なければ声量を落とせ。全く以て騒がしい」
話について行くつもりすら無かったティムが店に迷惑を掛けている仲間をようやく注意した。
「イチャついてなんかいないわよ!」
「静かにしろと言っているのだ。仮にも我々はお尋ね者、目立つような行動は控えることだ」
「それよりティム。元科学者ってくらい頭良いなら、もーちょい気ぃ利かせろよな」
「?」
一際声の大きい男性はリーダー格と席を代わり、再び夢主の隣に腰を下ろした。
「だーっはっはっは!両手に花だなこりゃあ!こういうの久し振りだぜ!」
両隣に座る異性の肩へ腕を回し、ジョエルは大変ご機嫌な様子。
「気安く触らないで!」
ロゼッタは目を三角にして男の手の甲を力の限りつねった。虫の居所が悪い彼女にとっては、ほんの些細な戯れも多大なストレスとなって加算されてしまう。
「って~、相変わらずじゃじゃ馬だなお前」
「もう嫌っ…ロキ様助けて!!」
「だから静かにしろと言っている!」
一方で夢主はというと、自分が招いたと言っても過言でないこの環境が面倒臭くなってきてしまい、最早為すがままの人形と化している。
「こっちはこーんなに素直になったのに。な~?」
別に素直になったつもりは無いが、お褒めの言葉と共に短髪頭をガシガシと撫でられる。子供は不服そうに晩御飯を口へ運び続けた。
相手の反応が非常に薄くつまらないため、呆れたようにため息を吐いた向かいの男性へもジョエルは絡みの範囲を広げる。
「なあジュウベエ、お前どっちがタイプ?」
「!?」
全く脈絡のない問いに夢主は盛大に咽せてしまった。しばらくお喋りから外れていた窓際の彼は眉をぴくりと動かすだけ。
「何しょーも無いこと聞いてんのよ」
「下らない」
ジュウベエは極めて短く答えた。もう片方の女性もさして興味無さそうに質問を一蹴する。
「そう、全く以て下らない。女性は皆それぞれ異なる魅力を秘めているのですよ。種類の違うものを比べることなんて到底不可能です」
「お前には聞いてねえよ」
冷たいあしらいにマニーノが食い下がっている間、足元が隠れているテーブル下で娘はちょっとした異変を感じていた。靴のつま先にコツ、と何かが触れてきたのだ。
「…?」
感触があったのは壁寄りの靴だったので、悠々と語っている色男ではなく、腕を組み黙って俯いている男性の仕業だろう。蹴られた意味がいまいち分からず彼の様子をうかがっていると、何か文句でもあるかとでも言いたそうな顔で睨まれてしまった。
「んー、俺はどっちかっつーと元気のある方が楽しいかな~」
元気のある方の女性は、また肩へ手を回される前に立ち上がり離席する。
「なんだ?便所か?」
「化粧室よ!!」
紅一点の彼女はここに来てから怒鳴ってばかりだ。毎日こんな感じではきっと疲れてしまうだろうなと悪党の精神状態を心配しながら、夢主は最後のパンケーキを引き続き消費していく。
「それもまた運命でしょう」
「いや、その男子は単に拾った捨て犬に情が湧いただけだ」
「え。ジュウベエ、お前子犬拾ったことあんの?」
「一般論だ」
ジョエルはその長い脚を通路へ投げ出し、人肌程度まで冷めたステーキを頬張りながら会話に参加する。
「でもサムくん、私に、す…好きって」
「子犬にも、好きなら好きだと言葉にするだろう」
「え。ジュウベエ、お前」
「一般論だ」
しかめっ面の男性は仲間の脳内で繰り広げられている想像を再度否定した。
「試しに付き合っちゃえば?イヤなら別れれば良いでしょ」
「そーだそーだ、堅ぇんだよお前は。ロックじゃねぇな」
「惚れてんのは相手の方なのよね?だったらキープって手もあるわよ」
「かっ、簡単に言わないでくださいそんなこと!」
ひとつ飛ばしで隣に座るロゼッタに言い返すが、彼女はメニュー表から一番高い料理を探すのに夢中で目を合わせてくれない。
「簡単にって、んなチンタラしてっからこうなっちまったんだろ」
「て言うか今もうその状況じゃない。何イイ子ぶってんのよ」
通路側の席の2人から厳しくも最もな意見に夢主はがっくしと俯いた。目の前にまだ残っている1段目だったパンケーキも同じくペシャンコだ。フルーツに囲まれているそれには、焼き立て時のふわふわな食感も甘い香りも感じられない。
「2人とも。彼女には彼女のペースってものがあるんです。さあ、まずは男性と目を合わせる練習から始めましょうか」
美男子はメディア向けの笑顔を見せつけてくるが、同年代の異性のことで悩んでいる夢主には効果が無かった。むしろ見ていなかった。
「そこからかよ」
「マニーノ、アンタが一番失礼なこと言ってるわよ」
「もう良いです!私の話はお終い!お終いです!」
「ええ?もう宜しいのですか?」
「んだよー」
「つまんないの」
積極的に茶々を入れてくれていた3人は大なり小なり残念そうに肩を落とす。
「聞いてくださりありがとうございました!で!それで!皆さん、もう悪さはしていないんですか?」
人と会話している間に声を張る程度の元気を取り戻せたが、肝心な解決の糸口は見つかりそうにない。夢主は自分が面白半分で標的とされているこの流れを無理矢理にでも変えにいった。
「まさか。ニュースキャスターに復帰していたらこんな店来てないわよ」
「ゼロという訳にはいきませんね。元の職には到底戻れませんし」
「なんせ指名手配犯だからな俺達!アッハッハッハッハ!」
「大声で言わないで!ああっ、セレブだったあの頃に戻りたい…!」
ロゼッタ・ライリーはテーブルに肘を突き、ネイルの先までしっかり手入れされている両手で顔を覆った。以前はニュースの女神と称えられ、言わば輝いている女性代表であった彼女。
「そんなに嘆くものじゃありませんよ」
「そうだぜ、ある意味昔より有名人だろ」
ニューヨークの誰もがその名と功績を知っていた。今となっては別の形で、認知度がここ日本でもじわじわと上がっている。5人セットで。
「自信を持ってください、今だってそこそこの生活を送っているではないですか。貴女にしては」
「何よその言い方っ!」
「たくましく美しいと言っているのです」
「お前達、イチャつくなら外でやれ。それが出来なければ声量を落とせ。全く以て騒がしい」
話について行くつもりすら無かったティムが店に迷惑を掛けている仲間をようやく注意した。
「イチャついてなんかいないわよ!」
「静かにしろと言っているのだ。仮にも我々はお尋ね者、目立つような行動は控えることだ」
「それよりティム。元科学者ってくらい頭良いなら、もーちょい気ぃ利かせろよな」
「?」
一際声の大きい男性はリーダー格と席を代わり、再び夢主の隣に腰を下ろした。
「だーっはっはっは!両手に花だなこりゃあ!こういうの久し振りだぜ!」
両隣に座る異性の肩へ腕を回し、ジョエルは大変ご機嫌な様子。
「気安く触らないで!」
ロゼッタは目を三角にして男の手の甲を力の限りつねった。虫の居所が悪い彼女にとっては、ほんの些細な戯れも多大なストレスとなって加算されてしまう。
「って~、相変わらずじゃじゃ馬だなお前」
「もう嫌っ…ロキ様助けて!!」
「だから静かにしろと言っている!」
一方で夢主はというと、自分が招いたと言っても過言でないこの環境が面倒臭くなってきてしまい、最早為すがままの人形と化している。
「こっちはこーんなに素直になったのに。な~?」
別に素直になったつもりは無いが、お褒めの言葉と共に短髪頭をガシガシと撫でられる。子供は不服そうに晩御飯を口へ運び続けた。
相手の反応が非常に薄くつまらないため、呆れたようにため息を吐いた向かいの男性へもジョエルは絡みの範囲を広げる。
「なあジュウベエ、お前どっちがタイプ?」
「!?」
全く脈絡のない問いに夢主は盛大に咽せてしまった。しばらくお喋りから外れていた窓際の彼は眉をぴくりと動かすだけ。
「何しょーも無いこと聞いてんのよ」
「下らない」
ジュウベエは極めて短く答えた。もう片方の女性もさして興味無さそうに質問を一蹴する。
「そう、全く以て下らない。女性は皆それぞれ異なる魅力を秘めているのですよ。種類の違うものを比べることなんて到底不可能です」
「お前には聞いてねえよ」
冷たいあしらいにマニーノが食い下がっている間、足元が隠れているテーブル下で娘はちょっとした異変を感じていた。靴のつま先にコツ、と何かが触れてきたのだ。
「…?」
感触があったのは壁寄りの靴だったので、悠々と語っている色男ではなく、腕を組み黙って俯いている男性の仕業だろう。蹴られた意味がいまいち分からず彼の様子をうかがっていると、何か文句でもあるかとでも言いたそうな顔で睨まれてしまった。
「んー、俺はどっちかっつーと元気のある方が楽しいかな~」
元気のある方の女性は、また肩へ手を回される前に立ち上がり離席する。
「なんだ?便所か?」
「化粧室よ!!」
紅一点の彼女はここに来てから怒鳴ってばかりだ。毎日こんな感じではきっと疲れてしまうだろうなと悪党の精神状態を心配しながら、夢主は最後のパンケーキを引き続き消費していく。