番外編??+5:都合の良い4人
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カラフルな仮面を外し素顔を見せた大人達は元気のない子供と共に、小さなファミリーレストランのボックス席に着いた。人通りから外れた店は客の入りが少なく、犯罪者集団だと誰も気付いていないのか見向きすらされない。
「俺ステーキ!」
通路側の席のジョエルが身を乗り出し、窓際に置かれたボタンをぺしぺし叩き付ける。呼び出し音が静かな店内に何度も響き渡った。
「決まったか?」
そんな仲間の迷惑には慣れた様子で身体を後ろに反らしながら、ジュウベエが正面の夢主に短く声をかける。
「……」
「何でも好きなものを頼んでください。この私がご馳走しますよ」
「財布を持っているのは俺だ」
マニーノは依然硬い表情を解かない女の子に柔らかく微笑むが、腕を組んだままの男性が口を挟んだため眉をひそめた。
「ロールシャッハトースト…」
「んなモンメニューに無ぇよ」
聞き慣れない単語によって、注文を受けに来た店員の顔がふと上げられた。ジョエルに続き、ジュウベエも我が子を叱り付けるように言い聞かせる。
「ここは日本の飲食店だ。ニューヨークじゃない」
「ニューヨークならあるんですか?」
「知るか。そういうことは本場の人間に聞け」
「フルーツパンケーキでお願いします」
隣に座っているマニーノが代わりの注文を済ませ、店員が他のテーブルに行ったところで1対3の奇妙な空間が戻ってくる。
「……で、さっきはどーしたんだ?」
「仲間割れでもしたか?」
「女性が夜道で一人歩きだなんて危険ですよ?」
先程から夢主は自分の膝に両手を置いて俯き、誰とも目を合わせようとしない。
彼等に対して前々から抱いていた不信感も理由の1つだが、極々個人的な悩みを赤の他人同然の者へ打ち明ける気にはなれなかった。
「…それ、人をさらって実験してた人達が言うんですか」
回答を待つ大人達へ眉間の皺を増して拒否の意を示す。
「んだよその言い方!せっかく親身になって聞いてやろうとしてんのに」
ジョエルはテーブルに拳を強く叩き付け、水の入った薄いグラス4つともが音を立てた。
「別に聞いていただかなくても結構です」
夢主も相手の気迫に負けじと、テーブルに両手を突いてその場で立ち上がる。
「そもそも、貴方達にお話しするようなことなんかありません」
「あん時から思ってたけどよ、ホンットいけ好かねえガキだな!辛気くせぇし!」
「やっぱりご飯も要りません、失礼します」
「おうおう、帰れ帰れ!んで夜道でコケろ!」
「まあ落ち着いて2人とも。ね、話してみれば少しは楽になるかもしれませんよ」
席から離れたいが通路側に座る若い男性は退こうとせず、テーブルに突いた手の上から彼の一回り大きな手の平を優しく重ねてきた。
「……」
嫌なら、ぶつなり逃げるなりしろよな
彼に手を重ねられたあの時からおかしくなった。問題のヒーローを意識するようになった。尊敬するヒーローに、顔向けできなくなった。帰ったらまた、尊敬する彼と、問題の彼と顔を合わさなくてはならない。
「もう……なんで…私なの……」
どんな顔をすれば正解なのか。どんな風に振る舞えば前に進めるのか。そもそも正解や前とは何なのか。
もう、どうしたら良いのかわからない。
「!?」
本人も知らずに溜め込んでいた涙を、女性の扱いに割と自信のあるマニーノは見事に決壊させてしまった。
「マニーノ!お前っ、とりあえず謝っとけ!」
「貴方が酷いことを言ったからでしょう!?」
「どう見たってお前が泣かせたんだろ!ベタベタベタベタしつけーから!」
「なっ!?私のせいだって言うんですか!?」
「お前以外に誰が居るってんだよ!?」
「3人とも、とにかく座れ」
ジュウベエの注意によって場は一気に静まった。騒がしかったテーブルには少ない視線が未だに集まっている。
「全く、相変わらず手癖が悪い」
「誤解を招くようなことは言わないでください!違いますからね!私はこの中で一番の紳士ですからね!」
「だったらその手を早く離してやれ」
紳士の割に、男性の手は年頃娘のそれにちゃっかり添え続けられていた。ようやく解放されると、テーブルをぽたぽた濡らしていた夢主はやっと自分の顔を両手で覆うことができた。
「だぁーっ!もう、仕方ねぇな!俺と席代われマニーノ!テメェに相談役は向いてねえよ!」
「俺ステーキ!」
通路側の席のジョエルが身を乗り出し、窓際に置かれたボタンをぺしぺし叩き付ける。呼び出し音が静かな店内に何度も響き渡った。
「決まったか?」
そんな仲間の迷惑には慣れた様子で身体を後ろに反らしながら、ジュウベエが正面の夢主に短く声をかける。
「……」
「何でも好きなものを頼んでください。この私がご馳走しますよ」
「財布を持っているのは俺だ」
マニーノは依然硬い表情を解かない女の子に柔らかく微笑むが、腕を組んだままの男性が口を挟んだため眉をひそめた。
「ロールシャッハトースト…」
「んなモンメニューに無ぇよ」
聞き慣れない単語によって、注文を受けに来た店員の顔がふと上げられた。ジョエルに続き、ジュウベエも我が子を叱り付けるように言い聞かせる。
「ここは日本の飲食店だ。ニューヨークじゃない」
「ニューヨークならあるんですか?」
「知るか。そういうことは本場の人間に聞け」
「フルーツパンケーキでお願いします」
隣に座っているマニーノが代わりの注文を済ませ、店員が他のテーブルに行ったところで1対3の奇妙な空間が戻ってくる。
「……で、さっきはどーしたんだ?」
「仲間割れでもしたか?」
「女性が夜道で一人歩きだなんて危険ですよ?」
先程から夢主は自分の膝に両手を置いて俯き、誰とも目を合わせようとしない。
彼等に対して前々から抱いていた不信感も理由の1つだが、極々個人的な悩みを赤の他人同然の者へ打ち明ける気にはなれなかった。
「…それ、人をさらって実験してた人達が言うんですか」
回答を待つ大人達へ眉間の皺を増して拒否の意を示す。
「んだよその言い方!せっかく親身になって聞いてやろうとしてんのに」
ジョエルはテーブルに拳を強く叩き付け、水の入った薄いグラス4つともが音を立てた。
「別に聞いていただかなくても結構です」
夢主も相手の気迫に負けじと、テーブルに両手を突いてその場で立ち上がる。
「そもそも、貴方達にお話しするようなことなんかありません」
「あん時から思ってたけどよ、ホンットいけ好かねえガキだな!辛気くせぇし!」
「やっぱりご飯も要りません、失礼します」
「おうおう、帰れ帰れ!んで夜道でコケろ!」
「まあ落ち着いて2人とも。ね、話してみれば少しは楽になるかもしれませんよ」
席から離れたいが通路側に座る若い男性は退こうとせず、テーブルに突いた手の上から彼の一回り大きな手の平を優しく重ねてきた。
「……」
嫌なら、ぶつなり逃げるなりしろよな
彼に手を重ねられたあの時からおかしくなった。問題のヒーローを意識するようになった。尊敬するヒーローに、顔向けできなくなった。帰ったらまた、尊敬する彼と、問題の彼と顔を合わさなくてはならない。
「もう……なんで…私なの……」
どんな顔をすれば正解なのか。どんな風に振る舞えば前に進めるのか。そもそも正解や前とは何なのか。
もう、どうしたら良いのかわからない。
「!?」
本人も知らずに溜め込んでいた涙を、女性の扱いに割と自信のあるマニーノは見事に決壊させてしまった。
「マニーノ!お前っ、とりあえず謝っとけ!」
「貴方が酷いことを言ったからでしょう!?」
「どう見たってお前が泣かせたんだろ!ベタベタベタベタしつけーから!」
「なっ!?私のせいだって言うんですか!?」
「お前以外に誰が居るってんだよ!?」
「3人とも、とにかく座れ」
ジュウベエの注意によって場は一気に静まった。騒がしかったテーブルには少ない視線が未だに集まっている。
「全く、相変わらず手癖が悪い」
「誤解を招くようなことは言わないでください!違いますからね!私はこの中で一番の紳士ですからね!」
「だったらその手を早く離してやれ」
紳士の割に、男性の手は年頃娘のそれにちゃっかり添え続けられていた。ようやく解放されると、テーブルをぽたぽた濡らしていた夢主はやっと自分の顔を両手で覆うことができた。
「だぁーっ!もう、仕方ねぇな!俺と席代われマニーノ!テメェに相談役は向いてねえよ!」